如水
そこで待ち構えているものが何であろうと、
わがこころはやや幅ひろい葉の一点に陽のか
がやきを宿し、葉脈にそって流れ、ひととき
は人などの行為によって澱んでいたとしても、
すぐに澄みわたる。澄みわたって地に落ち、
地の水となり、水脈に繫がりあつめられ、お
まえのそのみちびき合わせた両の掌のなかに
憩うことができる。
その掌の器がどんな形をしていたとしても、
その器のなかにたやすく収まり、揺られれば
その揺れに伴って揺れ、またその器から撥ね
跳んで、あるいは零れて、もとの地面に落ち
こぼれて、その地面のなかに浸みこみ戻って
ゆくこともできる。
おまえを取り巻く環境が、ガラス瓶の破片を
めぐらせた壁であったとしても、わがこころ
は地表から蒸発しておまえの肺臓をうるおし、
雨のごとく降りそそぎ、そのガラスの破片を
光らせて、あらたなる歓びを、おまえのその
眼に見出させよう。
わがこころは生命の躍動と静けさをともに持
ちあわせて、いつでもおまえの周りにある。
いやそればかりでなく、わがこころの水はお
まえがもとより持ちあわせていた、おまえの
水とさえひとつになって揺れることができる。
流れてゆき、円になって渦巻くようにその中
心をめざしては、水底ふかくに誘われて、ま
た荒れた地の周縁へと運びもどされ、その角
張った荒地に接して、その表面から深部にい
たるまでを、緩慢な、ときに鋭いあざやかな
動きで磨くのだ。
そうしておまえとおれはおもだった夢の区別
をなくし、さまようこともなくして互いにみ
ちびかれて、それぞれの場ではたらくひとり
の思いの事柄を洗いながしてゆく。ひとりひ
とりの夢と夢の間際からあきらかに目覚めて、
その明瞭な無によって整えられた標準とされ
るこころの水をみずからに受けとるのだ。