ポエム 困難 | 法橋太郎のブログ

法橋太郎のブログ

ポエム 第九回歴程新鋭賞受賞

2021年アラブ語圏にてゴールデンプラネット賞受賞

困難

       ──M・エックハルトに捧ぐ

 

おれはその山を一段一段登ってゆく。その谷

を一段一段降りてゆく。険しい山も谷も身心

みずからのものとするとき、身心の奥底。奥

底なき奥底。それがおれの身心の奥底になる。

神仏の奥底をわが奥底とするための身心の撥

無。

 

本来この身心もおれの所有ではない。みずか

らのものは何もない。神仏にことごとく見放

されたと思うとき、むしろその神仏の力を払

ったところ、空にこそ、神仏の力は満ち溢れ

るのだ。

 

困難のない人間はどこにもいない。山や谷は

何処にでもある。都市の真中にもある。どん

な時でも、われわれは思考の窮極、神仏の力

のなかにある。神仏の力は、どこにでもある。

神仏の力より逃れるのは不可能なのだ。

 

われわれは、困難を超えるごとにその力を増

してゆく。原石が磨かれて、真の宝石の光を

うるためには、何度となく困難に打ちひしが

れなければならない。

 

それまでは、実際、生きるということを知ら

ないのと同じことなのだ。無知な脳髄でこの

世が測れるだろうか。困難に輝いてはじめて

その人間の真価が明白となる。困難の底深く

生きるとき、われわれは神仏の空に内より満

たされているのだ。