自殺
かれとは大学生になってから知り合った。フ
ランス語とロシア語のクラスから、ひとを集
めて、同人誌を作った。かれも詩を書いてい
たが、それにもまして編集能力が長けていた。
かれがフランスで野宿しながら恋人のことを
思ったというのは、伝説にもなった。かれは
フランスからモロッコまで旅をした。帰国し
てから、ジョイントにおれを誘った。マリフ
ァナなんてモロッコでは自動販売機で売って
るよと、かれはマリファナをまわした。かれ
はこんなものと吐き捨てるように言った。
かれの部屋にはいつも大勢の友達が集まって
いると、恋人から訊いた。その訃報を受けと
ったのも、その恋人からだった。かれが投身
自殺したと訊いたのだ。おれはその時の状況
について彼女から、詳しく訊いた。顔はきれ
いだったと彼女は話した。
かれは弟が同じ大学に入学したのを期に、な
にか占いに凝りはじめたらしい。ある日、バ
イトに行ってくると言って、外出してから、
戻ってくることはなかった。自殺で有名なデ
パートの屋上から、飛び降りる決心をしたか
れが、空中を落ちてゆく。そのイメージがお
れのこころのなかで繰り返して見えた。