【映画】「ヒメアノ~ル」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

 

ヒメアノ~ル

鑑賞日: 2016年5月28日

映画館: T・ジョイ出雲

 

 

好き度: ★★★★☆ 4.5/5.0点

 

 

 

「俺もお前も人生終わってんだよ」

 

 

 

大好きな吉田恵輔監督の新作ということで初日に観ました。吉田監督の作品はほんと大好きで、「さんかく」はもちろんのこと、ここ近作の「ばしゃ馬さんとビッグマウス」「麦子さんと」「銀の匙」はすべて年間ベスト級の作品。特に「銀の匙」は個人的にめちゃくちゃ重なるところが多くて泣きに泣いたと言いますか(笑) その年のベストテンに入れたほど、青春映画の中でもトップ級に好きな作品なのです。(「銀の匙」を観た当時の感想はこちら

 

 

文句なしの傑作!

 

厳しくも優しい、まっとうな青春映画でした( ;∀;)

 

とにかく、イタイ!ツライ!

 

最高の「赤いスイートピー」

 

 

で、そんな吉田監督の新作「ヒメアノ~ル」、素晴らしかったですよ!!僕が思う吉田監督作品はどんなコメディでも日常のなかに存在する残酷性が見え隠れする瞬間がどの映画にも入ってるのが魅力的だと思うんですよね。残酷性の出方は違えど。たぶん最も残酷だったのは「ばしゃ馬さんとビッグマウス」だと思います。

 

そのまさに日常の中の残酷性が最もストレートにバイオレンスという形で露わになったのがこの「ヒメアノ~ル」なのではないでしょうかね。だから描いてきたことは今までと変わってないんですよ。残酷性の出方がちがうだけで。そういう意味では納得の監督起用だったんじゃないかなぁと思います。

 

 

あらすじを映画.comさんから拝借するとこんな感じ。

平凡な毎日に焦りを感じながら、ビルの清掃のパートタイマーとして働いている岡田は、同僚の安藤から思いを寄せるカフェの店員ユカとの恋のキューピッド役を頼まれる。ユカが働くカフェで、高校時代に過酷ないじめに遭っていた同級生の森田正一と再会する岡田だったが、ユカから彼女が森田にストーキングをされている事実を知らされる。

 

 

この映画、構成はまさに予告にあった通り。いかにもほのぼのラブコメのように始まり(しかし確実に不穏な香りは匂わせつつ)、ちょうど中盤でトーンが一気に変わりバイオレンスが牙をむくという作り。そのちょうど切れ目でタイトルが出て、ここまでのほのぼのラブコメとはさよならだよ、と観客を一気に引き込むという。前半のラブコメパートは長い長いアバンタイトルだった、というのは新鮮で素晴らしかったです。

 

 

前半はとにかくヒロインを演じた佐津川愛美さんがまず良かったですね。何と言いますか、ナチュラルにエロイ感じというか。一言で言うとズルい感じが素晴らしかった! 確信犯だろ?と思いつつもこういう女の子だーいすきって感じのザ・モテる女子っぷりがとっても良かったのです。しかも予告からはまったく想像してなかったパンパン級のベッドシーンもあり、ギリギリ見せないながらも限界まで脱いでる頑張りっぷりも含めて、ここはビックリポイントでした。

 

気まず演出は十八番の吉田監督なだけあって、ニヤニヤさせてくれる恋愛描写だらけで笑いました。楽しかった!濱田岳が佐津川愛美とセックスしたあとに、絶対に誰も得をしない質問こと「今まで何人の男とセックスしたの?」と聞くくだりとかw ま、こんなキャッキャウフフな恋愛描写の裏では大変なバイオレンスが起こってるんですがね…。

 

 

この映画の最大の勝因のひとつは森田剛でしょう!ホントにジャニーズ?と思うほどのサイコパス演技とバイオレンスで彼が画面にいるだけで一気に画面のトーンも変わりノワール感がどんどん増していきましたね。すげぇナチュラルなたたずまいでナチュラルに人を殺していくさまは森田剛さんには悪いですけど、ぴったりでw その森田剛に使われている、『名優』こと駒木根さんとその彼女である山田真歩のSRサイタマノラッパーコンビの演技もぴったりで素晴らしかったです。

 

 

中盤のセックスとバイオレンスのカットバックはこの映画の名シーンかなぁと思います。セックスとバイオレンスであり、生と死であり、光と闇のカットバック、セックスシーンもバイオレンスシーンもどっちもちゃんと真摯に描いているのが好印象でした。君らが愛し合ってるベッドの隣では、誰かが誰かを殺してる、そんな当たり前の現実と向かい合ったという意味でしっかり真摯なバイオレンス映画になっていたんじゃないかなと思いました。

 

そして最後にはまさか涙させられる話になるとは、そこが一番ビックリでしたよ。 ある時点で時間が止まっちゃった人の悲しみと残酷さをまざまざと見せられたというか、三宅隆太監督が良くおっしゃってる『生きていても心霊映画』な一本だったんじゃないでしょうかね~。とても楽しませていただきました!