「銀の匙 Silver Spoon」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

そーす太郎の映画感想文

しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。





銀の匙 Silver Spoon
4月13日(日) 9:30~ TOHOシネマズ六本木




好き度: ★★★★☆ /5点


厳しく、苦い、でも優しい吉田恵輔のまっとうな青春映画



原作は未見ですが、吉田恵輔監督作ということで気になってはいたんですが、後回し後回ししてたら1ヶ月以上経ってしまいまして、もうDVDでいっか~とも思ったんですが、4月はあんま観る映画がなかったので行ってきました。

個人的に、かなりグッとくる映画でしたヽ(;▽;)ノ

「青春映画」としてすばらしかったです。ファンタジーな青春映画になっておらず、吉田印ともいうべきか厳しい「現実」を突きつけてくる苦さもあり、でもしっかりと未来が開かれている、まっとうな青春映画でした。「ばしゃ馬さんとビッグマウス」の系譜にあるような気がします。

酪農系の全寮制の高校が舞台で、実家が牧場だったり酪農系の仕事をしている生徒が集まります。専門の高校のため目的意識を持って入学してくる生徒が多い中、主人公の八軒は目的意識もモチベーションも、というより興味すらないまま有名中学校から入学してきた少年。

僕の話になりますが、僕の実家は酪農系の仕事ではないですが、食品製造関係の自営業をやっていて今その実家でやってる分野を勉強するため、その専門分野をやっている大学に通っているわけです。その状況がかなりこの映画と似てて、みんな実家の自営業のその分野を勉強するために大学に来てる人がたくさん周りにいる状況。そして、正直その分野の今後のことを冷静に考えると正直未来は明るくない状況なんですよね。かなり不安定な業界で田舎の自営業なわけで正直将来的にこの分野で食っていくことにすげぇ不安があって。この映画に出てくる駒場くんというキャラクターがほんと他人事じゃないんですよ。

駒場くん。ほんとすばらしい人間!


そんな不安定な業界ということに加えて僕の実家の経営も正直そんないいわけでもなくて。でも僕が実家を継がないとだれも継ぐ人がいなくなるし、親の期待も伝わってくる中(そのために大学行ったわけだし)、ふつうに就活してどっかの会社員になったほうが安定して楽なんじゃねぇかなとか、そんな責任背負いきれない!とか、正直逃げたいとか、絶賛迷ってる時期なわけです。正直、やんなきゃいけないのはわかってるし、もうやるしかないんですよ、そんなことはわかってるんだけど、ものすごく不安とか心配しかないんです。という、そんな状況のなか観たこの映画に出てくる駒場くんの実家の状況、そして何もないところから新しい何かを掴む主人公八軒がほんとに刺さったんですよ(;▽;)   この映画を観て、不安定な業界かもしれないけど、こういう特殊な業界で働けること、そういうチャンスが転がっていること、オンリーワンな職業じゃないか!ということに誇りを持つっていうのもやっぱりすばらしいことなんだ!と、ほんと思いましたよ。


駒場くんの厳しい現実はやはり現実だし、ほんとにキツイ。でも、そこにも吉田監督は愛情持って描いているし、ちゃんと未来が開かれているというのがとても良かった。ふつうの安い青春映画だったら、あそこで文化祭に合流→「いけ~!」なんて叫んで→ゴール!みたいなことやりそうじゃないですか。その文化祭との対比はなんともいえない気持ちになりました。始まりと終わりを一気に見たというか、でもその終りは始まりでもあって…この幅を持った青春の描きかたは吉田監督ならではなのでは。すばらしかったです。

吉田監督的な外しギャグや、ビミョーな空気感からくるユーモアみたいなものがものすごく作品とマッチしててよかったし、背景にいる人々が背景になっていない感じは吉田監督的でとてもよかったです。まぁあとはなんといってもキャラクターがみんなよかったです。脇までしっかりキャラが立ってた!

僕の大好きな広瀬アリスちゃんはほんとにすばらしかったですヽ(´▽`)/「太った?」ってみんなに言われててむしろそこがいい感じ!(なんか変態っぽくなってしまった) 健康的でとてもよかったです。さすが広瀬アリス!!  八軒!おれも胸元にドキッとしたよ!




クラスのみんなもよかったなぁ。しっかりキャラが立ってました。




小さいおうちでおなじみ、黒木華さんのツンデレキャラもすごくかわいかったです。


先生陣も素晴らしかった!
最近クソ映画ばかり出ていた中村獅童、今回はとってもよかったよ!




上島かよ~とは思いましたが、ぜんぜんノイズになってませんでしたし、吹石一恵は確信犯的に胸を強調した衣装が最高でした。




哀川翔、竹内力、石橋蓮司という超攻撃力のつよそうな脇キャラも笑っちゃったけどすげぇよかったなぁ。いそうだよね。

広瀬アリスちゃんに抱きつかれる哀川翔がとっても羨ましかったり…




あとは、経済動物として動物を扱う事、食べ物をいただくということの描き方もすごくよかったです。豚の商品化までの工程をしっかりガッツリ見せる感じは素晴らしいと思いましたし、この分野を扱うことのハードルはちゃんと超えてきたと思いました。

というか、この映画111分なんですよね。この111分にほんといろんな要素が詰め込まれていたし、原作は読んでいないのでわかんないけど、1年間を追った青春映画としてテーマの絞込みがすごくうまくいってると思いましたよ!

原作ものだし、アイドル映画なわけで、そのなかでもしっかり自分の色を出してきた吉田監督。そして自分の現状にものすごくマッチしたこともあり、個人的にはものすごく大事な映画になりました。いつかまた絶対見直したくなる映画になりました。大人が提示する青春映画としてとてもまっとうな姿勢とメッセージだと思いました。


主題歌ってあんま好きじゃないけど、ゆずとってもよかった!





おわり



広瀬アリスやっぱ超かわいいなぁうん。




-----------------------------


スタッフ


監督

    吉田恵輔 

企画・プロデュース

    平野隆

エグゼクティブプロデューサー

    田代秀樹

プロデューサー

    幾野明子

    武田吉孝

    星野秀樹

ラインプロデューサー

    新野安行

キャスティングディレクター

    杉野剛

原作

    荒川弘

脚本

    吉田恵輔

    高田亮

撮影

    志田貴之

照明

    中村裕樹

録音

    小川武

美術

    三ツ松けいこ

編集

    李英美

音楽

    羽毛田丈史

主題歌

    ゆず

スクリプター

    増子さおり

助監督

    佃謙介

制作担当

    早川徹


キャスト


    中島健人 八軒勇吾

    広瀬アリス 御影アキ

    市川知宏 駒場一郎

    黒木華 南九条あやめ

    上島竜 兵校長

    吹石一恵 富士先生

    西田尚美 駒場の母

    吹越満 八軒の父親

    哀川翔 アキの叔父

    竹内力 アキの父

    石橋蓮司 アキの祖父

    中村獅童 中島先生


作品データ

製作年 2014年

製作国 日本

配給 東宝

上映時間 111分

映倫区分 G