昨年の今ごろは、「丸」という漢字を見ては微妙な気分になっていました。ことしは大きな変化なくおさまってひどく安心しています。
というわかる人しかわからない個人的心情はどうでもよくて、表題の言葉です。読みは全て「マル」で、日本語としていろいろな表記の仕方がありますが、用字用例辞典ではそれを全て用いる希有な言葉となります。
とはいえ、基本は漢字の「丸」です。用字用例辞典に項目として「丸のみ」「丸抱え」「丸ごと」「丸潰れ」「丸裸」「丸め込む」などが載っていますが、そのほかの三つは例外表記であると考えてよいです。
まず、「丸」の項目で表記の例外として記載されているのは、「まるきり」「まるで」の平仮名表記二つです。また、「丸」の項目にはないですが、「まるきり」の項目に一緒に記載されている「まるっきり」も同じく平仮名表記になります。個人的には「まるで」は平仮名表記で間違ったことはないんですが、「まるきり」「まるっきり」はついつい漢字表記してしまう、危険な言葉です。
そして次に、「マル」です。これは用字用例辞典では「丸」の次にありますが、「特殊なものにだけ用いる」という記載があり、例として「マル特」「マル暴」「マル秘」「マル優」「マル・バツ」が挙げられています。
ちなみに、特に用字用例辞典に載ってはいないですが、昔映画で有名になった国税局査察部は、国会議事録を見ると「マル査」と表記されています。映画とは違いますのでちょっと注意が必要ですね。
さて、ここまででも結構間違いやすいところが含まれているのですが、さらに最後に「○」です。これはどのように使うのかといいますと、「丸」の項から半ページぐらい離れたところに答えがあります。項目としては「○○」で、読みは「マルマル」、例には「○○事件」「○○さん」とあります。
つまり、名前を伏せたり不特定にしたりする場合に、かわりに「マルマル」とした場合の表記は「○○」なのです。用字用例辞典で項目が離れているためうっかり見落としてしまい、以前記事にした「何々」と同様漢字にしてしまいそうですが、(私は何年かそうしていました)「○○」です。
日本語としても漢字としても非常に簡単なのに、用字用例辞典上は結構ひっかかりどころがある。「マル」はかなり危険な言葉であると言えましょう。