本年もありがとうございました。 | 面打 能面師 新井達矢の制作日記

面打 能面師 新井達矢の制作日記

日本の面に向かう日々


今年手がけた小面はこれで4面目。


井関河内打の孫写し(写しの写し)ですが…

孫ですから、そうそう似るものではありません。


この型で打つのは2面目です。

こうして撮影したものを見ると客観性が生まれて直に見ただけでは気づかなかった甘い箇所を幾つも見つけるとこができます。

目頭、鼻の下の面、下唇の甘さに伴う開口の様さなど…小面沼は深すぎるのです。

仕上がったつもりでしたが直せずにはいられません。


彩色の様子が特殊な?撮影をされることになったので、ちょっと急ぎました。




今月下旬には宮崎県延岡市の内藤記念館が所蔵の有名な能面コレクションの科研調査に同行させて頂きました。





お世話になっている見市泰男先生が大修理をされたのですが、資料を拝見しながらそのお仕事を辿るような時間でもありました。

多数の天下一若狭守印面が有名ですが、宗能花押がある洞白の一連の作、無名で古作の小面、是閑の泥眼、天下一備後(洞白)の若女と呼ばれている珍しい艶麗な女面など名品も多いですね。

4泊して71面(1面未見)…至福の時間でした。



余談ですが、ホテルでも仕事をしようと拙作の手本面や刃物など持ち込みました。ところが部屋の照明が殊の外暗く繊細な仕事はできません…これは最大の誤算でした。


小面柄の焼酎があるのですね!



出会いの地として有名な笠沙山。

南京錠がいっぱいありました。

念を感じて少し怖くもあり…


展望台の上からは延岡市内が一望できました。

天気に恵まれて視界も良好。

海も近いので魚が美味しいのも納得です。


移動のみの最終日はA先生と念願の高千穂へ。

タクシー運転手さんの語る名調子の古事記を伺いながらうつらうつら…

先ずは天岩戸神社様から。

天岩戸もバッチリ拝み、この目に焼き付けました。

次は高千穂峡。

天気晴朗この上なく、まさに吸い込まれるような蒼い水と岸壁が作る絶景は神々の住まう聖地と納得。


高千穂神社。


神楽殿。

観光用だそうですが、いつか生で拝見したい。


超強力なお土産。

この世のものとは思えぬ美しさに思わず動画を撮影しました。

アイフォンをおとしたらひとたまりもありません‼️

大急ぎでしたが堪能しました。

日本人なら行くべきでしょう。。



伺ったの11月ですが、大注目の展示会

「能面面々」

急遽駆けつけて下さった大先輩の大月光勲先生と木彫刻師の宮本裕太くん。


超絶技巧の大先輩はじめ様々な特徴を持った面。



能面は本面という厳然たる典型があります。

古面を見慣れた方にとってそれぞれの違いは歴然。

写しが全てとは思いませんが、古の名作が放つ魅力に抗うことはできません。


競作というか無言の緊張感に満ちていましたね…

こわいですが、新面の展示会としては理想的かもしれません。



増女  見市泰男先生打


小面 北沢一念先生打



山姥 大月光勲先生打


大悪尉 後藤祐自先生打



大月光勲先生の制作工程や道具材料は秘伝の品もある充実ぶり。

現在活躍中の方々の出品でしたが、特別に?故宇高通成先生の孫次郎も。






義父の還暦のお祝い。

美味しいものをたっぷり頂きました。



令和3年は自ら変化を選び、導かれる一年だったような気がします。 



皆様もどうぞ良い年をお迎えください。