小飛出完成・個展とグループ展お礼その他諸々 | 面打 能面師 新井達矢の制作日記

面打 能面師 新井達矢の制作日記

日本の面に向かう日々

更新が滞ってしまいましたが、急に寒くなってきた為か気持ちが変わりました。



新作の小飛出です。
修復にお預かりした古面の写しの許可を頂き、少なめの型紙を取りました。
それなりの彫刻でしたが、鼻と口の表現が優しかったので、鼻の穴とその周辺の彫刻を大きくし、口は深く幅も少し広くしています。
好みの表情に変化させましたので、正確な写しではありません。


目は箔鍍金の金具。

銅板に漆などで金箔を貼り付けた方が赤味のある金色になりますが、やはり金属的な強さが抑えられる傾向があります。

古面の金具を見ると、むしろ赤味のある金色のものは少なく、墨などで金色の輝きを抑えることで赤味が薄れたものが多い印象です。

漆や煤液など、茶色の飴色系の色で古色を付ければ赤味のある金色となり、それはそれで美しいですが、古面のそれとは異る気がして最近は多様していません。



肌の色は胡粉に弁柄と朱土、黄口朱少々。

薄い肉色から真っ赤に近いものまで色々ですが、これは少々赤めかもしれません。

神経を使うのは何と言っても毛描き。

良い筆を使い、手の動きを理解し、毛が描き終わる先端まで方向を確り意識すると良いようです。

しかし昔の人には敵いませんね…


素朴系の裏?

水溶き砥の粉による目止め、生漆の拭き漆にマコモをまぶしました。

某先生に納めるので、いつかお舞台で拝見できる日を楽しみにしています。 






東京都あきる野市にある「クラフトサロン縁」さんでの個展が無事終了しました。



動きのある会場を生かして高低差を付けた展示をしました。

普段と異なり背景の額は使わず、壁の質感を活かして直接かけて見ました。

通常の能面展を見慣れた方からは賛否両論ありましたが、なかなか雰囲気良く構成できたのではと思います。



オーナーの三上さんが素敵に植物を配してくださると面も引き立ちます。




二十歳前後の頃に彫った無著像。

今更お見せするものではないですが、オーナーさんのご要望でお待ちしました。

久しぶりに他人目に触れて嬉しそう…




会期中の日曜日には近所にお住まいの観世流シテ方の中所宜夫先生が、能のお話と拙作をかけて少し舞って下さいました。


壁掛けとは違い、役者さんの顔に当てただけでも表情に生気が帯びる瞬間はすごいものです。



何度か出ているアマビエ様。



この小さな面は舞楽面。
どちらも朝鮮半島に由来するといわれる高麗楽に用います。
妻が彩色しました。


生徒さんから頂いたお花!

オーナーさんのご好意で妻の展示コーナーも設けました。

久しぶりに地元紙に載せて頂きました。



ご遠方からもお出かけ下さり感謝申し上げます。

来年も同じ時期に同会場で個展を開催予定で、能のイベントも少し大きくできたら良いなとオーナーさんは仰いました。





こちら14回目となる東京巣鴨のとげぬき地蔵高岩寺さんで開催させて頂いている合同展「工燈」




上段は我が羽村市を代表する漆芸家の並木恒延先生と義息子の木工芸家の五十嵐誠さん。

並木先生は芸術院賞を受賞された本物芸術家です。


岩崎久人先生とは能面の能楽における在り方、面の制作工程はもちろん、古面への関心、造形の趣味など考え方?は相当異なりますが、毎回お出で頂き楽しくお話ししております。

弟子の鈴木君も最近益々腕を上げて来られました。

9年前に2人展をしたKさんはお元気かな…







最後ちょっとしたにニュースです。

前回も書いたので繰り返しになりますが、

地元羽村市の宗禅寺さんで開催させて頂いている能面教室の生徒、柴田久和さんが金沢能楽美術館で開催の現代能面美術展という公募展に於いて「金剛流若宗家賞」を受賞されました。



こちらの公募展はある派閥?に属する作者の面ばかりが受賞するという偏りが少ないように思いますが如何でしょうか。

写しとはいえ、能面は美観を愛でるものなので趣味趣向が反映されるのは仕方ないですが、古面を数多く見て得られる広い視野と視点を生かした冷静な審査をして頂けるのは嬉しいです。