今年一年を顧みて | 面打 能面師 新井達矢の制作日記

面打 能面師 新井達矢の制作日記

日本の面に向かう日々

その昔は鑿や彫刻刀をねだったキリストさんの誕生日も終わって年の瀬、
今までにないほど劇的な日々が続いた平成25年でした。
3月は菩提寺での2人展と那須高原のグループ展。
6月には自宅建て替えに伴う片付けと取り壊し。

作品は工房と共に作るもの。
お酒などの醸造業ではありませんが、建物に何かが付いて、或いは憑いていて、憑けてきて?その力を頂きながら作ってきたように感じておりました。
その空間を失うことは耐えがたい出来事で、気持ちの整理がなかなか付きませんでしたが、
今は少し落ち着き新しい場所で仕事を再開しました。
この空間を育てられるよう今後も制作を続けたいと考えています。

ある時は某所にて企画展を依頼されながら経費を踏み倒されるという信じられない経験もしましたが、良い出会いもあったので泣く泣く忘れる努力をしております。

同じころにはテレビの撮影も入って頂き、プレハブ仮工房でヒョットコ制作の全工程を記録するという初めての出来事、とにかく忙しかったです。
11月には恒例となったとげぬき地蔵さんでのグループ展「工燈ノ集イ」。新たに名前を考えた為か?ポスター効果か?例年より多くのお客様にご来場いただくことが出来ました。

それから程なくして東京国立博物館での講演、実演という栄誉に与りました。
非才浅学でな若造にお付き合い頂いた皆様に感謝申し上げます。





相変わらずの作品紹介ですが、こちらはご覧の通り神楽面(お囃子面と呼ぶべきかも)のお馴染み、岡目と火男です。
どちらも羽生光長作の写しですが、コンビで揃うことが少ないので写真に撮ってみました。
能面とは違って庶民的なこれも良い景色ではないでしょうか。



江戸趣味が続きますが、神楽面から持続させた勢いと感性を生かし、続けて制作。
個人的にはかなり変わった内容のご依頼品。
近隣某町内の山車人形の頭を仮面形にして作ってくれないかというものです。
これは応神天皇なので他の二体の面もこれから制作予定。
山車人形のような生々しい彫刻は顔だけにすると独特の不気味さを漂わせますが、その雰囲気を残すか、程よく抑えるか工夫のし甲斐があります。
また人形特有の研ぎあげられ斑の無い肌は予想以上に手間が掛かり、同じ胡粉彩色でも能面狂言面とは異なる近現代的な工芸感覚が必要だと感じ、難儀しました。




5月からは菩提寺である宗禅寺さんでの木彫教室を始めさせて頂いております。、こちらは私より若い30才の生徒さん孝治君。

拙作を手本に丁寧に彫り進んでいます。
大工さんなので刃物に慣れいているのは有利ですが、何よりも根気があるところが良いですね。

完成を急ぐあまり彫りの途中からサンドペーパーを掛けたり、請け負っているわけでもないのに一度に複数のモノに手をつけたりして集中力を欠く制作をしていては絶対に伸びませんね、とにかく一点集中、片手間に出来るほど面打は簡単なものではないはずです。
檜一本首一つといわれたほど貴重な木曽檜を彫っているのですから敬意を払って緊張感が欲しいもの、
気楽にやりたいならば外材を使うべきでしょう。

純粋な楽しみとされているのは分かるのですが、やるからには少しでも良い作品を制作して頂きたいと思います。



その日の夕方からお寺さんでの「当夜」に教室の皆さんと初めて参加させて頂きました。
座禅会の皆さんが作られたお饂飩や般若湯を頂きながらの楽しいひと時。

建長寺へ長くお勤めの和尚様や、羽村のエビ様との呼び声もある若和尚様とも久しぶりにお話ができました。




続いて向かったのは私が3歳からお世話になっている川崎囃子保存会の練習と忘年会。
一人を除いて、昨年10月から稽古を始めた小5小6中1の子供たち。
私は現在中一の男子二人に笛を教えており、毎週1回か2回の稽古。
中学生らしい気の抜けた感じは否めませんが覚えが早く、ある程度は出来るようになりました。
この日の忘年会で彼らの演奏を聞いた大師匠は、
直すところは色々あるけど今これだけ出来れば良いだろうとのことで安心しました。
成長と共に音が変化していくのが楽しみ、遊びすぎないで頑張れよ。。






こちらは宣伝です。
来年1月19日に地元のホールでお囃子の発表会をします。
副題は「未来の名人たち」ということで子供のみで組んで出場しようと意気込んでおりましたが・・・・
メンバーの二人が市のスキー教室で出席できないとのこと!
我らが囃子連としては珍しく豊作の年、小中学生だけで組める貴重な機会だけに誠に残念至極。

代わりに31歳の私が笛を吹くことになりました。
でも他は子供たちです、ご安心くださいませ。




最後に新しい工房の画像。
まだまだ片付かず使いやすい空間にはなっておりません、これは時間が掛かります。。


中学生のように長く纏まらない文章は相変わらずです。



「平成25年は能の年、能聖 世阿弥生誕650年じぇじぇ!」



(このフレーズはどなたかの投稿で読みました。朝ドラには、はまりました~。)



皆様良い年をお迎えください。