舞楽面 蘭陵王 | 面打 能面師 新井達矢の制作日記

面打 能面師 新井達矢の制作日記

日本の面に向かう日々

一昨年訪れた富山県井波を思い出す程に雪が降り続く東京羽村市です。




最近は彫りのヌルさが目立ち、塗に入るのを躊躇していた陵王面に手を入れ続けておりました。
本面と比較した際の記憶と写真を頼りに、要所々を決めていきます。

能狂言面にはこうした細工的要素は少ないので新鮮ではありますが、固定された姿勢で彫ることが多くなり体が固まりそうになりました。

そんな折胸に痛みが走り、背中に細かな水泡が現れ、そこには電気が走るような痛みが出ました。
病院嫌いなので滅多なことでは行かないのですが、まともに仕事ができないので嫌々受診、診断は帯状疱疹。薬を飲んで良くなりましたが、ストレスや疲れが原因だそうです。

貴重な機会を賜り好きなことをさせて頂いているわけですが・・・

ようやく彫りあがったので、漆箔仕上げに備えて彫りを崩さぬよう最低限度にサンドペーパーを掛けました。
少し暖かくなったら漆塗りに入ります。




画像の竜の目は刳り抜かれて眼球がありません。
目に「玉眼」というレンズ状に成形された水晶やガラスを内部から仕込み裏から瞳を描くもので、現実感のある目の輝きを表わそうとするものです。
鎌倉時代以降の仏像に多く取り入れられた手法のようですが今回は手本面に倣いそれを施します。

一番下の画像は竜の首を分解したもので、割り放して目を刳りぬき動く舌の仕掛けも作ります。
手前の二つ並んだ豆のようなものは玉眼の木型で、これを専門家にお渡しして同じ形に水晶を加工して頂いているところです。




これは玉眼の木型を目に仮嵌めしたところ。
初めてのことなので諸先輩方のご助言を頂きながら進めていますが、肝心なところは自ら経験しないと何もわからないようです。

本体?の目と歯には銀板を鍛金して被せ、竜の牙は銀棒を曲げ、削り出して作ります。
内容盛りだくさんで王朝文化は至れり尽くせりですね。