難波の澪標(5) 暮らしの古典82話 | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。

今週の「暮らしの古典」は82話≪難波の澪標(5)≫です。

前回、「後世、大阪市の市章となる難波の澪標「みをつくし」が有する

雅語・歌語としての性格が仄かに見えてきました」で結びました。

 

2020年10月、≪大阪市章「澪標」のメッセージ≫シリーズは

第1回2020-10-20 19:38:53を皮切りに

牧英正「大阪市章「澪標」の制定」を

軸に書き進み第8回に及んで小中学校、高校、大学の校歌の歌詞に及び、

今回、出展を付して「みおつくし」「澪標」記事の文脈を抜萃しました。

以下、歌詞の冒頭の漢数字は番数。

 

ア)大阪市立御幸森小学校(大阪市生野区)

www.city.osaka.lg.jp/ikuno/.../ryoukounokouka.pdf

閲覧日:2020/10/22

一  生駒の山の 峰高く/仰ぐ 希望の 朝の空(中略)

二  浪速の水辺 風きよく/うたう みどりの 芦の笛(中略)

三  世紀の潮 あたらしく/洗う 英知の みおつくし

   磨け よい子よ あきらかに/学びの海の 知恵のたま

   われらの母校 御幸森/ひかりすずしい 小学校

イ)大阪府立旭高等学校(大阪市旭区)

https://www.osaka-c.ed.jp/asahi/annai/annai.html

閲覧日:2020/10/22

一 ゆたかにひたす 大地の息吹き/思いあふれて 流れる淀よ

   ゆく水の いのちあらたに/みおつくし 愛とまことの

   光かがやく ああ 旭(以下、二、三番省略)

ウ)大阪市立市岡商業高等学校(大阪市港区)

https://ichisho.jimdofree.com/

 閲覧日:2020/10/22

一 東亜に誇れる築港の/舟の出入りぞ賑わしき(中略)

二 難波入江のみおつくし/心つくしてやまざらめ

  社会文化のさきがけは/文化のさきがけは

  げに我が商業ぞ

エ)大阪府立市岡高等学校(大阪市港区)

http://tichiokakai.html.xdomain.jp/htm/kouka01.htm

閲覧日:2020/10/24 *( )内の読みは省略します。

一 東大湖の水受けて 溶々西に二十餘里

   流れて止まぬ澱江の 浪路の末の澪標

   努力の潮我が領と いそしむ健兒千五百

オ)大阪市立梅南中学校(大阪市西成区)

http://swa.city-osaka.ed.jp/swas/index.php?id=j762756&frame=frm51a8455a10dbb

閲覧日:2020年10月22日

一  明日の世界の担い手と/今日も白亜の学舎に(中略)

二  誠の意 いだきつつ/情豊かにはぐくみて(中略)

三 行くて険しき道とても/昇る朝日のさわやかに

   示す津守のみおつくし/若人集いたゆみなく

   ああ進みゆくわが母校/はばたけ梅南中学校

カ)大阪経済大学(大阪市東淀川区)

https://www.osaka-ue.ac.jp/profile/song/

閲覧日:2020/10/20

一 大淀の 水は春ゆく (中略)

二 大樟(くす)の 蔭は裕々(ひろびろ) (中略)

三 そびえ立つ 白堊の殿堂 (中略)

四 澪標(みおつくし)世界の商都の 入船出船

   水先みちびく 経済実践 前途(みち)はるか

   冰(こお)る潮路も 乗切る気力だ

   自主で揺(ゆる)がぬ 自治立つ学園/大阪 大阪経済大学

 

以上が「澪標みおつくし」を謳う校歌歌詞抜萃です。

次に*牧英正「大阪市章「澪標」の制定」の「三 澪標案の登場」にある

市章制定「理由書1894年」の記述を挙げます。

校歌に謳われる「みおつくし」と対照するためです。

*牧英正「大阪市章「澪標」の制定」:『大阪市公文書館研究紀要』第4号、1992年所載          以下、牧英正1992年」と表記します。

◆澪標ハ古来特ニ我大阪湾頭ニ立テ、航路ノ深浅ヲ示教シ
 以テ船舶ヲ安全ナラシメ、終ニ我市ノ繁栄ヲ援テ、
 今日ニ及セルモノ其因アルヤ大ナリ、

 

この記事の「航路ノ深浅ヲ示教シ」に注目します。

「示教」とは、「示し教えること」であって、

「理由書1894年」の「澪標」にあっての「示教」は、

「航路の深浅」を指し示し安全を図ることであります。

次に今日の大阪市HPにおける*「市章」の記事を挙げます。

(改行および、それによる行頭の番号は田野)

*市章:大阪市HP「市名 市章 市歌 市の花 市政」

2023年4月13日 ページ番号:10271

写真図 天保山船着場の「みおつくし」模型

◆①みおつくし(澪標)というのは、古歌にもよまれているように、

②昔、 難波江の浅瀬に立てられていた水路の標識です。

③摂津名所図会にはクイの上部に板をX型に打ちつけたものだけが見られますが、

 ④天保年間の絵図には今の市章と同じ形をしたものが描かれています。

 ⑤大阪の繁栄は昔から水運と出船入船に負うところが多く、

⑥人々に親しまれ、 港にもゆかりの深いみおつくしが、

⑦明治27年4月、大阪市の市章となりました。

 

「理由書1894年」の澪標「航路ノ深浅ヲ示教」に対応するのは、

②の「…浅瀬に立てられていた水路の標識」です。

「示教」が「標識」に置き換えられています。

市章「澪標(みおつくし)」を「理由書1894年」の「示教」に遡りますと、

きっと「教え」のメッセージが読み取られることでしょう。

次回は、6校の校歌にある「みおつくし」の深読みを試みることにします。

 

究会代表

大阪区民カレッジ講師

大阪あそ歩公認ガイド 田野 登