「阪神電車唱歌」梅田・佃間の歌詞の考察(2) | 晴耕雨読 -田野 登-

晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。

前回、 もう一つの「宣伝歌謡」である
「阪神名所地理歌」作曲の経緯を取り上げると
予告しました。

今回も、
『輸送奉仕の五十年』1955年、阪神電気鉄道(株)所載の
松浦充実「海水浴場のはじまりは打出」の
「付 宣伝歌謡二篇」からの引用です。

 

「阪神電車 四季の眺め」の続きです。
◆「四季の眺め」の次に
 大和田建樹先生の有名な「汽笛一声新橋を・・・・」の
 鉄道唱歌を思い出し、
 あのような調子で阪神電車の停留場の名を読み入れた歌を
 乗客に記憶してもらったら、乗車するにも便利であろう。

「阪神名所地理歌」は、
当時から有名だった「鉄道唱歌」を意識して
「阪神電車唱歌」以前に作曲された唱歌です。

 

引用を続けます。
◆また乗務員にしても
 発着に好感を覚えるであろうとねらいをつけて、
 早速左記の「阪神名所地理唱歌」を
 大毎文芸部長の菊地幽芳氏と合作して、
 大阪府師範学校の目加田教諭に作曲してもらい、
 早速「四季の眺め」と合わせて印刷し
 「阪神名所地理歌」と題し一部3銭で売出した。

同記念誌の挿絵には「阪神名所地理唱歌」の表紙を載せ、
「菊地幽芳/香川蓬洲/松浦天風」「合作」と
書き込まれています。
「阪神名所地理唱歌」の人気や如何?

 

引用を続けます。
◆ところが一般の反響は
 「四季の眺め」の文句は簡単で何となく面白味があるので
 人気に投じ、
 芸者なども客席で謡ったが、
 地理唱歌は期待が外れた。
 しかし出入橋停留場の構内売店で3000部を売り尽くした。

この項の小見出しは
「期待はずれの地理唱歌」でした。

今回のシリーズ《「阪神電車唱歌」梅田・佃間の歌詞の考察》では、
その成功・失敗、人気はともかく、
「阪神電車唱歌」を軸に、
端唄「四季の眺め」、「地理唱歌」を絡めて
阪神電車側の沿線宣伝から読み取られる
梅田(現・北区)・佃(現・西淀川区)間の明治末期を
紹介してみようと思います。
「悲惨な大大阪」以前の西大阪を
探りたいのです。
長い前置きにまりました。
次回は歌詞を俎上に載せます。

究会代表
『大阪春秋』編集委員
大阪あそ歩公認ガイド 田野 登