今回は記憶の仕組みについての第3回目です。
今回お話しするのは長期記憶のうち、意識的に思い出す記憶についてです。
この意識的に思い出す記憶のことは陳述的記憶と言います。
この陳述的記憶はさらに2つに分けられます。
ひとつは出来事記憶(またはエピソード記憶)といい、もう一つは意味記憶と言います。
出来事記憶というのは、文字通り自分が実際に体験したことに関する記憶のことです。
この出来事記憶はさらに言葉で説明できる言語的記憶と言葉で説明できない非言語的記憶に分けられます。
例えば、「昨日、友達の山田さんに会った」ということは言葉で説明できるので言語的記憶になります。
また、「昨日、友達の山田さんにあった喫茶店で流れていた曲」とか「昔、山田さんと旅行したときに見た海の風景」と言ったものは音や映像という言葉では正確に言い表せない内容なので非言語的記憶となります。
この出来事記憶の特徴は感情や体験を伴っていると言うことです。
また、意識的に思い出すことが容易な記憶であると言うことです。
これまでも感情を伴った記憶は強く記憶に残りやすいという話をしてきましたが、それはこの出来事記憶だからです。
これに対して、もう一つの意味記憶は学習することによって記憶した記憶です。これも言語的記憶と非言語的記憶に分けられます。
例えば、「関ヶ原の合戦は1600年に石田三成と徳川家康との間で行われた」というような文章を記憶するのは言語的な意味記憶のひとつといえます。
また、「地図記号」や「テストのためにベートーベンの交響曲の冒頭部分を覚える」といったようなことは非言語的な意味記憶だといえます。
この意味記憶の特徴は出来事記憶とちょうど逆になります。
つまり、意味記憶は感情や体験を伴わない記憶です。
また、意識的に思い出すことが難しく、何かのきっかけが必要になることが多くなります。
言い換えれば、普段勉強していることに関する記憶のほとんどがこの意味記憶に当たるものになります。
そのため、勉強した内容というのはなかなか覚えられないのだといえます。
なかなか学校の勉強が覚えられないと言っているお子さんには「安心しなさい。お前がなかなか覚えられないのは脳のしくみからして、当然のことなんだよ。別に頭が悪い訳じゃないんだよ」と言ってあげてください。
ただ、これで安心して、できないままでもしょうがないと思われても困りますよね(笑)
そこでもう一つ教えてほしいことが「この意味記憶は出来事記憶に変えることができるんだよ」と言うことです。
では、どうしたらよいのでしょうか?
これまでブログを読んできてくださった方にはピンとくるかもしれません。
はい、そうです。イメージすることです。
脳というのは非常にいい加減というかよくできているというか、実際に体験したことと想像したことの区別がつかないのだそうです。
ですから、文章などで覚えたことはできるだけ、映像や音などのイメージを想像すると、実際に体験したのと同じように出来事記憶へと変化するのです。
これまで記憶するときにはイメージしたり、感情を伴うことで記憶を強化できると書いてきましたが、これは意味記憶を出来事記憶に変換する作業だといえます。
また、人に教えるということは、しっかりと理解しなければならないので、そのことが記憶を強化すると言うことを話したことがあります。
このことの効果のほかに、「人に教える」という実際の体験をすることで単に自分で勉強すること以上に、出来事記憶として記憶することでより強く記憶するという効果も得られます。
3回にわたって少々理屈っぽい話をしてきました。
けれども、いわゆる記憶術と言われるものは別に特別な才能が必要だったり、全くのインチキだったりというものではないということもおわかりいただけたのではないかと思います。
是非、自分にあった記憶を強化する方法を利用して、勉強の効率化を図ってください(^^)