●四人目の淑女(1948年) 監督:渋谷実
主な出演:森雅之 小暮実千代 濵田百合子 月丘夢路 三浦充子 笠智衆 殿山泰司 坪内美子 望月美恵子

音楽学校時代の同期生、佳王子(濱田)、時代(三浦)、好江(月丘)、孝子(小暮)の4人の淑女に送られ出征する吉田和夫(森)。
どうせ死ぬに決まっていると悲観する和夫だが、6年後、生きて再び故郷の地に戻ることができた。焦土と化した東京で、和夫はかつての女友達らの消息を尋ねて歩く。

佳王子(濱田)
最初に訪れた佳王子は、和夫が結婚を約束した女だった。しかし、没落貴族となったいま、借金のカタで家屋敷を取られるところを、新興ブルジョアの古川隆吉(笠)との結婚に救いを求めようとしていた。まさに背に腹は代えられぬ身のため、「愛情だけでは暮らせない」と和夫との約束を反故にする。

時代(三浦)
次に訪ねた時代は、キャバレーの歌手に落ちぶれ、おまけに光ちゃんというヒモ男から食いモノにされている。

好江(月丘)
3番目の好江は、いまや流行歌手のトップスターに輝く存在。好江のステージを訪ねた和夫だが、復員兵の見すぼらしいナリのせいでタカリと思われ、興行関係者から体よく追い返されてしまう。
しかし、このとき好江は、過労から急逝結核を発病し、明日をも知れぬ命だった。

孝子(小暮)
最後に訪ねた孝子は、ナイトクラブを経営する夜の女帝。和夫に「世の中は全てカネ」と言い、和夫に大金を渡すとともに、正装にドレスアップさせて佳王子と古川の婚約披露パーティーへと乗り込んでいく。

和夫の見違える姿に唖然とする佳王子。「5000万円の資本で貿易会社を始めた」とウソを言う和夫。
姉(坪内)の忠告に対し、「同じお金があるのなら和夫さんのほうが良いわ〜」と古川から乗り換えようとする佳王子。なんと変わり身の早いこと!
先日の対応から手のひら返しの佳王子に対し、「いまの僕は一文無しのニセモノさ」と自ら正体を明かした和夫は佳王子のもとを去っていく。キツネとタヌキの馬鹿し合いだ。

方や、佳王子のゲス根性を知った古川は婚約の解消をほのめかす。古川はもともと、佳王子の高貴な生き方に魅力を感じていたわけで、カネの奴隷となった惨めな佳王子への熱はすっかり冷めてしまった。
次に和夫は、時代のヒモ男に大金を渡し手を切れさせようとする。快諾したヒモ男は別の愛人・ユミ(望月)と手を取り関西に旅立とうとするが、それを阻止せんとする時代と揉み合いとなり、ヒモ男は階段から落ちて死んでしまう。時代の幸せのために使ったカネが、結果的に不幸を招いてしまったわけだ。
さらに和夫は、入院中の好江のもとに向かうが、時すでに遅く臨終に。それを知らない和夫に対し、孝子が病床の好江に変装し「あなたが必ず帰ると信じて待っていた」と語る。「温かい心で僕を迎えてくれたのは君だけだ」と和夫は感涙する。「正しく生きることが何よりの幸せ。お金が全てではない。お金で人の幸せはつくれない」と諭す好江(変装した孝子)。

顔に包帯を巻いて好江に変装した孝子。
こんなことを病院が許してくれるのだろうか?
作品のタイトルから「四番目の淑女」が物語のキーパーソンと思われるが、それは誰を指すのだろう。
まず、時系列で言えば四番目は孝子である。さらに、好江の死を知らせまいと変装してまで和夫の心に寄り添ったのも孝子だから、四番目の淑女はやはり孝子なのだろう。しかし、劇場では門前払いを喰らい、事実上四番目に会ったのは孝子が変装した好江なのだから、和夫の中では好江こそが四番目と考えられる。
病院からの帰り和夫は、「好江さんのところで見たものを汚されたくない。あの人のそばにいたい」と孝子に別れを告げるシーンがある。もしかしたら、和夫は好江の死に気づいており、自ら死を選ぶことをうかがわせる結末だ。
(そう考えるとやはり四番目はやはり好江となる)
ところが、これで物語は終わらない。話は佳王子と古川の婚約披露パーティーに戻る。
結婚はともかく何が何でもカネだけは欲しい佳王子は、古川に食い下がり、手元にあった拳銃を古川に向け撃ち殺してしまうのだ。
最後の最後まで、カネが不幸を招くことを証明するかのような終わり方である。

拳銃を向けられビビる古川(笠)
4人の女性それぞれのエピソードが複雑に絡むストーリーだが、実際は分かりやすい顛末であり、深い余韻を残す作品である。
脚本を書いたのが後に名匠となる新藤兼人氏なので納得。
ただ、孝子(小暮)が好江(月丘)に化ける設定はどうかと思うが・・・「幸せに生きることの真実の声」は、4人の女性のうち誰かが言わなくてはいけないから孝子が最適なのだろう。