●金環蝕(1934年) 監督:清水宏
主な出演:藤井貢 金光嗣郎 川崎弘子 桑野通子 坪内美子 山口勇 藤野秀夫 近衛敏明 突貫小僧 野村秋生 小倉繁 奈良真養 河村黎吉 吉川満子 葛城文子 御影公子 高杉早苗 三宅邦子
東京の大学を卒業した神田(金光)が郷里の村に帰って来た。祝いの席に並んだ幼なじみの大崎(藤井)は、神田から村のマドンナの絹枝(川崎)と結婚したい旨を相談される。
絹枝は大崎と従兄妹の関係ではあるものの、以前から大崎に想いを寄せていた。そのため絹枝は、神田からの申し出をきっぱりと断り、大崎への恋心を伝えるが、「神田を裏切ることはできない」と絹枝をたしなめる。
神田は、直接プロポーズするため絹枝に会うが、大崎を想う絹枝の気持ちを察し、「僕があなた方の邪魔をしてはいけない」と詫びる。慌てて大崎のもとを訪ねる絹枝。しかし大崎は、東京へと旅立った後だった。
田舎で職にあぶれていた大崎は、同郷の代議士・岩城(藤野)を頼って東京に出た。しかし、ことごとく居留守を使われ、岩城の自宅を訪ねたところ、岩崎家の運転手・松村(山口)が乗る車に接触し足に大ケガを負ってしまう。
手術を受け入院した大崎だが、岩崎家の女中であり運転手の妹でもある嘉代(坪内)に惚れられ、「私が一生あなたの松葉杖になります」と献身的な介護を受ける。
そんな嘉代への対抗心もしくは独占欲の強さからか、岩崎の令嬢・鞆音(桑野)さえも、「私ならあの人の義足になるわ」と言われるほど大崎は熱烈に惚れられる。
そして鞆音の強い要望もあり、大崎は鞆音の弟・茂(野村)の家庭教師として岩城家に迎えられる。
この出来事から数日経ったある日、鞆音のもとに神田が訪ねて来た。絹枝に求婚した親友の神田である。突然の神田の登場に驚く大崎。実は神田は大学時代に鞆音の家庭教師だったことがあり、上京ついでに岩城家に立ち寄ったことで、偶然にも大崎と再会することとなったわけだ。
神田と絹枝は当然結婚したものと思っていた大崎だったが、聞けば「君の上京後、絹枝さんも家出をした」と言う。大崎と絹枝が結ばれるのが一番と考える神田は、絹枝から身を引き、鞆音に結婚を申し込むつもりで岩城家を訪ねて来た。
しかし鞆音の気持ちは大崎から離れない。
そんな折、新内閣の成立で代議士の座を失った岩城は、都心の家屋敷を手放し湘南の小宅に引き籠ることを決める。退職金代わりに岩城から自動車を譲り受ける大崎。一方の神田は鞆音との結婚の決意もあり、滋の家庭教師として岩城家にとどまることとなる。
鞆音は神田との結婚話が持ち上がるなか、元々好きだった大崎に結婚を申し込むが、大崎は神田との友情を貫かんと岩城家を出ていく。
岩城にもらった車で円タクを始めた大崎は、運転手の松村とその妹・嘉代を加えた3人での新しい生活が始まる。大崎を心から慕う嘉代としては、願ったり叶ったりの展開である。
この後、大きな運命の悪戯が待ち受けている。
嘉代はカフェーの女給として働くこととなるのだが、親身になってくれる仲間の女給が、何と!大崎を追って上京した絹枝だったのだ。「人探しのために東京に出てきた」という絹枝だが、もちろん嘉代は、大崎と絹枝との因縁を知る由もない。そうとは知らずに、絹枝を自宅に招く嘉代。ここで大崎と再会した絹枝は息をのむ。
「あなたが探している人とは、もしやここに居る大崎さんでは?」と問い質すが、嘉代の大崎への恋慕を知る絹枝は、「この人ではない。私が探しているのは神田さん」と嘘を言う。
自暴自棄となった絹枝は、酒に溺れるばかりか、カフェーの太客・斎田(奈良)の要求に応じ彼の妾になることを考える。
絹枝をこのまま放っておくわけにはいかないと思った嘉代は、神田と鞆音の婚礼の席へと乗り込み、「この結婚をやめ、絹枝さんのところに帰って欲しい」と懇願する。しかし嘉代の要求は、全くの思い違いであり、神田は正しい事情を説明する。「絹枝さんは今も大崎を愛している」と。2人の仲を裂いたのは自分なのだから、鞆音との結婚こそが最善の道だということを。
真実を知り自分が身を引くと絹枝に話す嘉代だが、絹枝は絹枝で自身の存在が邪魔だと悟り、パトロン志願の斎田に連れられ熱海のホテルに向かう。ところが、ここでなぜか?偶然なのか?大崎の円タクが絹枝と斎田を乗せる。
熱海のホテルに到着し、大崎は2人がいる部屋へと乗り込んでいく。絹枝を連れ帰ろうとするが、不審者扱いされ警察沙汰の事態に・・・ そのとき、またまたなぜか?たまたま同じ熱海のホテルに用事があったのか?神田と鞆音の一団がホテルにやってきた。大崎のピンチを救わんとする神田。「この人は僕の親友だ。僕に委してくれ給へ」と言う。
この騒動でほとほと懲りたパトロン志願の斎田は、絹枝を置いて退散する。
この後、神田と鞆音は海外へと旅立っていく。
ラストで汽車に乗って東京を去るシーンは、大崎と絹枝の2人の姿だと思われる。
(しかし、映像が暗くて大崎と一緒にいる女が絹枝なのか嘉代なのかはっきとせずモヤモヤ感が残る)
絹枝、嘉代、鞆音の3人の女性に慕われながら、誰1人としてその愛に応えていない大崎。愛と友情の板挟みがここまで大きくなると収集がつかなくなる。
桑野通子さんの映画デビュー作品。かつて森永製菓の社員(スイートガール)だった彼女を積極的にアピールするシーンがある。鞆音が大崎のお見舞いに持って来た「森永ミルクチョコレート」のズームアップは実に愉快。
出演者の面々から松竹のオールスターキャストで製作されたことがわかる。ただし、鞆音の友人役として名を連ねる御影公子さん、高杉早苗さん、三宅邦子さんの3人の存在が判然としないのは残念。おそらく結婚式か熱海のホテルのシーンだろう。
無声映画だが、カフェーのシーンで松平晃さんの『急げ幌馬車』の曲が流れる。1934年(昭和9年)当時の流行歌であり、時代の情景を音で感じることができる。























































































