2024.7.4 をぢさん(1943年) |

をぢさん(1943年) 監督:渋谷実

主な出演:河村黎吉 飯田蝶子 桑野通子 大塚正義 坂本武 山路義人 河野敏子


「をぢさん」とは主人公の徳二郎(河村)のことだろう。たしかに、どこに出しても恥ずかしくない正真正銘のおじさんだ。勤め先の工場で現場を取り仕切る監督姿が、戦時下に求められた銃後の人間像を映し出す。その気質は町内でも同様だから当時の隣組の重要性をアピールした戦意高揚映画。

この頃の松竹映画には、冒頭に「1億の 誠で包め 兵の家」という字幕が出てくる。「心で感謝 身で援護」とか「撃ちて 止まむ」というのもあった。

戦時下でなくても、数十年前までは何にでもしゃしゃり出てくるおじさんが町内に1人くらいはいたような・・・。

 

この映画の面白いところは松竹・大船映画の常連、河村黎吉さんと飯田蝶子さんが夫婦役を演じているところ。2人のやり取りが実に愉快なのはもちろん、夫婦喧嘩のシーンでは、ハエトリ紙にぶら下げた上原謙と高峰三枝子の写真を見てお互いに機嫌を直すという漫才のような洒落を見せてくれる。こんなのを見せられた日には戦争の憂さも忘れる。

徳二郎が名古屋出張のお土産で買った饅頭を未亡人とし子(桑野)の息子(大塚)に与えたところ、それが元で重体に・・・。輸血や何だかんだ、自分の命に代えてでもの覚悟を見せるおじさん連。

母親が桑野通子さんのような美人だったら、そりゃあ、おじさんたちも頑張るわな。