ダイビングの船でのことです。
それは潜ったポイントから移動し始めた時でした。
遠征だったので40分ほどかかる見込みでした。
ちょっとした孤島のようなところから港のある島の近くへ向かったのでした。
出発するとすぐに鳥がついてきました。
まるで見送るかのように飛んでいます。
船についてくるのか先導するのかという雰囲気でした。
すぐにいなくなるかと思いきやこの時間はずっと続きました。
結局のところ戻る島の近くまで一緒にやってきました。
これは生まれて初めての体験でした。
周りを飛んでいるのでずっと観察することができたのです。
時には手の届きそうなくらい近くに寄ってきました。
なのでなんだか共鳴するような気すらしました。
それはなかなか興味深いものでした。
とにかく実感したのは飛ぶのが速いということです。
船もそれなりのスピードだったはずですがそれ以上なのは確かでした。
なぜならこの鳥は時折海に飛び込みます。
魚を取るのです。
そうなると少し止まってその場で食べている様子です。
このタイミングでそれなりに船の後方に去っていきます。
しかしまた追いついてくるのです。
しかもあまり時間がかかりません。
少なくとも時速60kmくらいは出るのではないかと推測します。
どことなくこれはちょっとした驚きでした。
また当然ながら上手に飛びます。
とはいえ異常なほどという印象でした。
不思議なのが向かい風でも羽根を広げたままでスピードコントロールができるのです。
その姿は優雅ですらありました。
きっと腕の角度の微細な調整で行なっているのだと考えられます。
ただそれは視認しにくいほどの微妙さです。
生身の体でここまで見せつけられると人間の不自由さを感じざるを得ません。
これによって鳥の世界の広さを推し量ることができたのでした。
同時に不思議とも考えられる渡り鳥の生活も当たり前のことと感じられました。
1000km飛ぶなんてことは何てことないのかもしれません。
そのくらい身軽であり世界観が違うのです。
そして彼らがヒトの知らない自然の豊かさや美しさを知っているのは明らかだと思いました。
人類が作り上げてきた便利さを鳥はすでに持っているのでしょうか。
何か見習うべきところもあるのかもしれません。
脳裏に焼き付けられた今回の経験に感謝しつつその意味を模索してみることにします。
谷 孝祐
2018.4.19 16:30