恐怖の本入部となった高校の吹奏楽部でしたがさらに驚きがありました。
昔はそれが当たり前だったといえばそれまででしょう。
とはいえ男子校の恐ろしさを感じたのでした。
パートによっては殴ることも通常だったのです。
文字通りの暴力です。
部内の一部ではありますが特別なことではないようでした。
少なくともそれが咎められることはありませんでした。
そしてその筆頭はクラリネットでした。
そこには一番怖い先輩がいました。
体も大きく筋肉もありそうな感じです。
間違いなく中学では運動部だったことでしょう。
そういう経歴のメンバーも多数いたのですがその中でも特に強そうな人でした。
吹奏楽部でクラリネットといえば人数が必要なパートです。
なのでここに所属になるといきなり夏のコンクールに出ることになります。
それは初心者であっても同じです。
というよりほとんどが楽器が初めてという人たちです。
そんなわけで大変なことは確かでしょう。
それでも通常であれば光栄なことではあります。
貴重な経験になるわけです。
しかしこの状況においては地獄だったと想像します。
毎日のように絞られ続けるイメージでしょうか。
チューニングが合わなくて誰かが殴られるというのが日常のようでした。
話を聞いているだけで恐怖政治とはまさにこのことだという印象でした。
もちろんその渦中のメンバーは疲弊していきました。
そんな過酷な状況でも辞めるとは言えません。
むしろそれが恐ろしすぎることのようでした。
ところが自分はその先輩に気に入られていました。
これは精神衛生的には幸いなことでした。
音楽に詳しいために気に入られたのでしょう。
質問されることすらありました。
そんな様子から分かりやすくはありました。
楽器の技術至上主義なわけです。
人の価値はそこで決まるというくらいの勢いでした。
思い返せばこれはこれで良い経験だったと思います。
戦地を生き抜くような感覚を磨かれたかもしれません。
谷 孝祐
2017.4.13 18:18