夏詩の旅人 ファーストコンタクト | Tanaka-KOZOのブログ

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 今回は、音楽イベント会社“Unseen Light”の女社長、岬不二子の話をしよう。

僕が初めて不二子と出会ったのは、1998年だった。
その頃の僕は、アパレル会社から転職し、サーフ系雑誌“F”で働いていた。

そして、その年の8月に僕の働いていた会社が、不二子の“Unseen Light”とタイアップで、湘南の鵠沼海岸で音楽イベントを行う事になった。

それは不二子が、大手音楽事務所Uから独立起業して、1年が経った夏であった。
当時、僕は32歳で、彼女は28歳であった。



※その辺りの話は、「ANOTHER SUMMER DAY」の回で書かれています。
ANOTHER SUMMER DAY

 高校生まで山梨県北斗市で過ごした不二子は、東京の大学を卒業後、大手音楽イベント事務所に就職した。
それから彼女は27歳の若さで独立し、音楽イベント会社“Unseen Light”を立ち上げた。

 不二子の仕事っぷりは社名の通り、“Unseen Light(まだ見ぬ光)”にスポットを当てた、大胆なマッチメイクにあった。
まだ誰も目を付けていない人材を、誰よりも早く発掘する彼女の嗅覚は、音楽業界の中において一目を置かれていた。

 26歳の時、不二子は大手音楽イベント事務所で、一緒に働いていた男性と婚約を交わしていた。
彼と付き合い始めて3年。
不二子が事務所を辞めて、独立起業するという話を恋人に話した。
すると、相手の男性は猛反対した。
男性は不二子に、家庭に入ってもらいたかったのだ。
“俺を取るか、仕事を取るか決めてくれ!”恋人の男性は不二子にそう迫った。
不二子は、それがきっかけで恋人と別れる決心をした。
彼女は自分の夢だった、独立起業の道を選んだのであった。

※その辺りの話は、「もう決して一人じゃない!」の回で書かれています。
もう決して一人じゃない!



 独立起業をしてから1年後、たった1人で赤字続きの会社を続けていた不二子へ、初めて黒字になる仕事が舞い込んで来た。

それはサーフィン系雑誌“F”とタイアップする、夏の鵠沼海岸での音楽イベントであった。
そこで不二子は、プロになる前の主人公と初めて出会う事となる。

イベントが明日に迫った前日の夜。不二子は主人公に誘われて、夜の鵠沼海岸で焚火を囲みながらお酒を飲んだ。
そこで不二子は、自分の会社もいつかは人を雇える様な大きな会社にしたいという夢を話すのであった。

イベント当日になった。順調に進んでいた音楽イベントであったが、トリを務めるバンドが交通事故に合い、ステージに間に合わなくなってしまった。

実はその事故は、地元のヤクザが、ショバ代を払わなかった事への嫌がらせであったのだ。

イベントは止まってしまい、カンカンに怒るスポンサーが不二子を攻める。
それを見た主人公は、ギターを手にステージへと上がろうとする。

だがアマチュアのミュージシャンがステージに上がるのを止めようと、スポンサーが邪魔をするが、それを振り切ってステージへと上がった主人公。

「ああ…、もうお終いだ…」と顔を覆い隠すスポンサーであったが、ステージは拍手喝さいとなり、事なきを得るのであった。

演奏が終わり、ステージを降りて来た主人公に、「どうして自分はミュージシャンだって教えてくれなかったの?」と聞く不二子。

「俺はプロじゃないから言う必要もない。だがいつかはプロとしてやっていくつもりだ」と語る主人公。

「私も頑張るッ!、だからあなたも歌を続けてッ!」
不二子がそう言うと、主人公は笑顔で、「そしたら、いつか一緒に仕事が出来たらいいな…」というのであった。



※その時の話は、「まだ見ぬ光」の回で、書かれています。
まだ見ぬ光

 6年後、会社を大きくする事に成功した不二子は、新宿にオフィスを構えていた。

ある日、大物音楽プロデューサー、秋山康二と絡む仕事が、突如不二子の会社へと舞い込んで来た。それは伊豆の下田に新しく出来るFM局の開局イベントの仕事であった。

なんとかしてそのイベントを成功させたい不二子であったが、部下から渡される企画は全てパッとしないものであった。

会社帰り、不二子が電車の中で、ふと聴いたFMラジオから流れる曲。
その曲は、あのとき鵠沼海岸で不二子を救ってくれた彼の曲であった。

彼がまだ音楽を続けていた事を知った不二子は、開局イベントの仕事に主人公を抜擢しようと連絡を試みるのであった。

伊豆の下田で再会を果たす2人。不二子が主人公にオファーした内容は、彼をパーソナリティーにした音楽番組であった。

3日間限定で行われるその特番は2日目まで順調に進む。
番組で自分の歌を披露した彼の元へ反響のメールも届き出す。
そこで不二子は、彼にチャンスを与えるべく、3日目の番組終了後に、主人公を秋山プロデューサーに会わせる約束を取り付けるのであった。

ところが番組最終日に彼は現れる事はなかった。
何度電話をしても出ない彼。

忙しい合間を縫って会ってくれる事になった秋山プロデューサーはカンカンになり、彼と会う事もなく下田から東京へと帰ってしまうのであった。

夕暮れどき、FM局がある下田港に彼が不二子へ謝罪をしに現れた。
理由を語らない主人公に不二子は少し怒っていたが、最後は握手をして2人は別れるのであった。



※この時の話は、「ハイビスカスの少女」の回で書いています。
ハイビスカスの少女

 そして更に2年後、不二子の会社が鎌倉国立大学学園祭のイベントを一部を請け負う事となった。

不二子は野外ステージのライブを、昨年、奇跡的なカムバックを果たした歌手の櫻井ジュンにオファーを出す。

オフィスで打ち合わせをするうちに、櫻井ジュンと、同席していたギタリストのカズらが主人公と学生時代バンド仲間であった事実を知る。

そのときに、学生時代のバンドメンバーでライブをしたいというジュンの提案を、不二子は快く受け入れた。

あの日から消えた笑顔

 彼との再会を楽しみにする不二子。
10月になり学園祭当日となった。

主人公と不二子は、ジュンとカズを記念講堂に残し、設営が済んだ野外のライブステージを確認しに出て行く。

その記念講堂では当日、反原発フォーラムが行われる予定であった。
会場の確認が済んだ不二子と主人公は、大学構内にあるレストランで話をしていた。

そこで不二子は、彼が何故、メディアに出る事を優先することより、旅をする事の理由を聞いた。

そこでハルカの存在を彼から聞かされる不二子。
自分が今、元気に歌を続けていられるのはハルカのおかげだと話す彼。

主人公は、伊豆の今井浜から東京へ帰省したハルカにもう1度会って、お礼を言いたいのだと言う。

Surfer Girl ↑↑↑※そのエピソードは、ここで書かれています。(第1話)

 その時であった大学の構内で爆破が起きた。
何が起きているのか分からない2人は、スマホでTVのニュースを確認する。
そこには、テログループが、ジュンやカズがいる記念講堂に立てこもり、人質を盾に犯行声明を挙げている姿であった。

次々と爆破が起こる大学構内を逃げ惑う人々。
そんな中、主人公は人質になっている仲間を救いに行くと言い出す。
それはテロ組織が、日本中の原発施設を全て停止させないと、人質を1時間おきに1人ずつ殺すという事だからであった。

しかし犯人が立てこもる講堂内の周りには、反原発に同調したデモ隊100名が誰も近づけない様に守っている。
度重なる爆破の為、警察の機動隊も大学構内に入れない状態だ。



「やめて!、行ったら殺されるわ!」と、不二子が止める中、主人公は不二子に「旅の記録が書かれた手帳」を託すと、彼女を置いて人質がいる講堂へと走り出す。

講堂前に到着した主人公。
襲い掛かるデモ隊に絶体絶命となるが、不二子の計らいで大学の運動部員たちの援軍が入り、講堂内へ入る事に成功する。

スローな武器にしてくれ!

 一方、不二子は大学の正門前で、主人公の無事を祈りながら待っていた。
やがてTVレポーターが正門前から、テログループが制圧されたというニュースが伝えられた。

安堵する不二子であったが、1人重傷者が出ているという追加メッセージに、不二子は嫌な予感がした。

そしてやがてその重傷者が彼である事を知った不二子は、彼を乗せた救急車に同乗して病院へと向かう。

1週間後、意識が戻った彼の見舞いに病院へ訪れた不二子であったが、そこで彼がもう2度とギターが弾けない身体になってしまった事実を聞かされ涙する。

数日後、再び病院へ訪れる不二子であったが、病室はもぬけの殻となっていた。
彼は携帯電話を解約し、家も車も処分して行方をくらました。

タイムリミット

 その1年後、不二子は親から強引に見合いをさせられる。
見合い相手は素敵な男性であったが、最後はその男性からのプロポーズを断ってしまう不二子。

彼女はその時、彼(主人公)に対する自分の気持ちに気づき、彼の行方を捜す決心をするのであった。



爆走!ダーティー・ハリー

 そしてあのテロ事件から14年が過ぎた。
ある日不二子の元へ、主人公の親友カズから連絡が入る。
それはあの事件当日、一緒に人質になっていたドラムの小田が、ライブBARをオープンさせたので、そのオープン記念イベントに来ないか?という事であった。

小田のBARでカズやジュンらと14年ぶりに再会した不二子。
そこで彼女は、主人公から預かっている「旅の記録が書かれた手帳」の存在を話すのであった。

そしてその手帳に書かれた場所を全て訪ねる旅に出て、主人公を探すという決心をみんなに言う不二子。

翌日、仕事を部下に任せて不二子は旅に出る。
そして彼が訪れて出会った人たちと話をする度に、不二子が知らなかった事実が少しずつ判明して行く。

手帳に書かれた彼が出会った人たちは、みんな幸せに暮らしていた。
だが彼の手掛かりは結局、何も分からないままであった。

不二子は仕事に復帰したが憔悴していた。
そこへカズから主人公が見つかったと電話が入る。

「会うのか?」(カズ)
「もちろん会うわッ!」(不二子)
「今更やつに会ってどうする?」(カズ)
「会いたいのッ!」(不二子)
「君が思ってる、あいつじゃないかも知れないぞ」(カズ)
「それでも会いたいのッ…」(不二子)
「そうだな…。君にはやつと会う資格があるよな…」



こうして不二子はついに彼とに再会を果たす。
だが再会した彼は、ハルカと既に結婚をしていた事実を知る。

だがそれでも不二子は、彼に会えた事を良かったと思うのであった。
何故ならば、彼にもう1度会えなければ、自分は前に進むことが出来なかったからだ。

2度とギターが弾けないと医師に宣告された彼が、最近ようやくギターが弾けるようになって来たと不二子へ伝える。

「また始めるのね?弾き語り…」
「ねぇ?、いつから始めるの弾き語り…?」不二子が彼に聞く。

「では、今ここから始めよう…」彼が不二子へ静かに言った。
「観客は1人…。君のために歌おう…」

そう言って彼が目の前で歌い始めた曲は、不二子が彼の曲を初めて聴いたあの曲。
あの鵠沼海岸のイベントで、飛び入りで歌ってくれたあの曲だった。

不二子、は彼と初めて出会ったあの時の情景が甦り、涙が溢れ出て来るのであった。
そして長かった不二子の旅が、ようやく終わりを告げるのであった。

ここから始めよう(最終回)