ANOTHER SUMMER DAY (夏詩の旅人2 リブート篇) | Tanaka-KOZOのブログ

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★ついにデビュー13周年!★2013年5月3日2ndアルバムリリース!★有線リクエストもOn Air中!



 1993年5月。
サニー・ミュージック 赤坂ツインタワービル本社。
僕はこの日、ここで行われる大規模なオーディションに参加していた。

大学を卒業後、大手アパレルメーカーに勤務していた僕は、当時悶々としていた。



だって、同僚たちとカラオケに行けば、そこで女子社員が歌う曲は、櫻井ジュンの歌ばかり…。

有名アーティストのCDアルバムを購入し、参加ミュージシャンのクレジットを確認すると、そこにはいつもギタリスト「Kazz」の名がある。

そう、2人はかつて、僕が大学時代に一緒にバンドを組んでいた仲間たちだった。

彼らはプロミュージシャンとして、着々と実績を積んでいた。
だが僕は大学卒業後、普通に企業へと就職した。

もし僕があの時、音楽の世界に飛び込んでいたら、どうなっていたのだろう?
そんな事を考え出していた僕は、彼らの活躍を見る度に、悶々としていたのだった。


 そんな時に、大手レコード会社のサニーが募集した大規模なオーディション。

エントリーしたら、あとはオリジナル曲の入ったテープさえ持参すれば、ダイレクトに音楽プロデューサーが、応募者全員と面談してくれるというオーディションだ。

そのオーディションは2日間かけて行われ、1日の参加者は1500人を超えた。
僕は自分が作詞作曲した曲を4曲持って、そのオーディションへエントリーしてみる事にした。


 だけど実は、その参加は、ほんの軽い気持ち。
単なる腕試しというやつだった。

なぜなら、僕が持参した録音は、自分で全てバッキング演奏も録音したものだったからだ。
こんなお粗末な演奏で、大手サニーのオーディションが通る訳がないからね。

その演奏は、僕が20歳の頃に宅録したものだ。
20歳の頃までまったく楽器が弾けなかった僕は、大学3年の春休み、一念発起してエレキギターを購入した。

既に、大学1年の時にはベースを挫折していた僕だったが、作曲の為にベースは多少利用していた。
その甲斐あってか、エレキギターは購入後、猛練習の甲斐もあってか、一ヶ月半程で、なんとか簡単なギターソロまでは弾ける様にはなった。

そして僕は自分の曲を記録として残す為に、MTRとドラムマシンを購入して、全16曲を録音した。
ドラムをプログラミングし、ベースを弾いて、ギターを被せて、歌やコーラスパートを1人で入れた。

そんな、素人丸出しで、7年前の録音状態の曲を持って、僕はオーディションへと参加したのだった。

でも仕方ない…。
だって僕の手元には、ちゃんと録音されたものは、それしか無かったんだ。

どうせダメで、けちょんけちょん言われるであろうと分かっていたのだが、それよりも大手サニーのプロデューサーの反応を、とにかく僕は聞いてみたかったのだ。
学生時代の僕が、あの当時に、果たしてプロに通用したのかどうかと…。



 2日目の最終日に参加した僕は、ツインタワービルに着くとエレベーターに乗って、オーディション会場へと向かった。
オーディション会場がある階層に着くと、僕は受付で番号札を貰い、広い部屋へと通されたのだった。

そこには、大勢のミュージシャンたちが既に待機していた。

髪をツンツンに立て、ビスが飛び出たパンク風の革ジャンを着た男や、赤い髪に染めた女。
広い待合室には、そんな、いかにもミュージシャンという格好をした人たちが大勢詰め込まれていた。

そんな中、一般人の服装をしていた僕は、妙に浮いている感じだった。
ここでオーディションが行われていなければ、誰も僕の事をミュージシャンだとは分からない恰好で僕はいた。

前日同様、この日の参加者も大人数過ぎて、僕らはイスに座らされる事もなく、その広い空間に立ちすくんで待たされた。
そしてサニーの女性スタッフから次々と呼ばれる番号。

そして、僕の番号が呼ばれた。
僕は奥の部屋へと通される。

通されたその部屋も広かった。
対面で座れるテーブルがあちこちに設置してあり、その各テーブルの上にはラジカセが1台だけ置いてあった。

僕は辺りをチラチラと眺める。
先ほど待合室で見かけたパンク風の男や、赤い髪の女も、それぞれ別のテーブルに座っている姿が見えた。

彼らは先ほど待合室で見かけた態度とは打って変わって、おとなしい猫のように背中を丸めイスに座り、目の前のプロデューサーへ愛想笑いをしている。
一方プロデューサーは、笑顔1つ見せず、席に着く早々、彼らのテープをラジカセにセットし、イヤホンで聴いた。

そして20秒ほど聴くと、すぐにスイッチを停め、パンク男と何か話し出した。
2分ほど話すとパンクの男は、その場から帰えされて、次の参加者がその席へもう座らされた。

次々と入れ替わる、テーブルに座る参加者たち。
会場では、持参した曲をまともに聴いて貰えた者は誰もいない様だった。

そりゃそうだろう。
2日で3000人以上と面談しなきゃならないんだから、モノになりそうもない参加者は、どんどん帰えらせなきゃ、こなし切れないからね。


「座って…」
僕の担当になったメガネの男性が、素っ気なく僕に言う。

「宜しくお願いします…」
僕はそう言って軽くお辞儀をすると席に着いた。

僕は当日、カセットを2つ持って来ていた。
プロデューサーが効率よく聴ける様に、片面10分のテープのA面、B面にそれぞれ1曲ずつ録音したテープを用意した。

「この中で1番聴いて欲しいのを、1曲だけ聴かせて…」とプロデューサー。

僕は4曲持参していたが、1曲しか聴いて貰えないのか…と、少しがっかりした。

「じゃあ、これで…」
僕はそう言うと、相手男性にカセットを渡した。

男性が僕の曲をイヤホンで聴きだす。

「ん!」と、前のめりに反応を示す男性。

それから彼は、僕の曲を途中で停めずに最後まで聴いてくれたのであった。

1曲聴き終えたプロデューサーは、テープをひっくり返して2曲目も聴く。
そしてそれが聴き終えると、次のテープも手に取り、ラジカセにセットした。

結局プロデューサーは、1曲しか聴かないと言いつつも、僕が持参した4曲全てを聴いてくれたのであった。
曲を聴き終えたプロデューサーの表情は、先ほどとは打って変わって、穏やかで友好的な表情へと変わっていた。


「結構上手いじゃない?」とプロデューサー。

(上手い?)

僕は意外だった。
だってそのカセットテープは、僕がギターを始めてから一ヶ月で録音したものだったからだ。

大手サニーのプロデューサーが、僕の素人丸出しの演奏に、まさかそんな事を言うなんてと驚いた。

僕は録音したのはハタチの頃ものである事を、正直にプロデューサーへ話した。


「なら今の君の作品が聴きたい」
今度はプロデューサーが僕にそう言った。

「これは7年前の作品なんだよね?」
「今回のオーディションは、人材を確保して育ててからデビューさせるものじゃなく、すぐプロとしてデビューさせる実力のある人…、つまり、現在プロ並みに完成された人だけが対象のオーディションなんだよ」

「はぁ…」と僕。

「だから今、君がどれだけやれるのか分からないから、このテープじゃ判断できない。いつでも構わないから、現在のモノを録音して、また聴かせてくれないか?」

「後日、新曲を持ってくれば良いんですか?」

「ああ…、そうだね。今回のオーディションには間に合わないが、いつでも構わないよ」

「アポなしでも?」

「ああ…、アポなしで構わない」

「君は今後、どういう風にやって行きたい?」
「歌手として?、それとも作曲家?、作詞家?」

僕はまさかこんな展開になるとは、夢にも思ってなかったので、びっくりした。

それから僕とプロデューサーは、いろいろと今後の方針を話し合い、気が付くと1時間半も話し込んでいたのだった。

帰り際、僕はあの広い待合室で、女性スタッフに番号札を返却する。
待合室では、まだ大勢の参加者が待機していた。

「一体、90分もどこに行ってたんですか!?、何度も呼んで探してたんですよぉ!」
番号札を返却した僕に、女性スタッフ数名が詰め寄って来てそう言った。

「今、終わったんです…」

僕がそう言うと、女性スタッフたちは驚き、一歩下がって僕を嘗め回すように眺めた。
そのやり取りを観ていた他の参加者たちも、僕の周りからサーッと引けて、その場に空間が出来た。

僕はモーゼの十戒のシーンみたいな感じで、開けたスペースをスタスタと歩いて待合室を出ていく。
僕の事をみんなが見つめていた。

僕は優越感を味わっていた。
だって、こんなに驚くって事は、この2日間、3000人もオーディションを受けたのに、誰もここまで話が進んでいなかったという事じゃないか!

僕は手応えを感じていた。
学生時代に僕の作った曲は、現在でも確実に通用するのだと…。

それから僕は、翌週末には渋谷のKEYで、更にトラック数が多いレコーディングミキサーを購入した。

 だが、それから間もなく仕事が忙しくなり、そのままそのミキサーを使う事なく数年が経過してしまった。
僕は、せっかくアポなしでも会ってくれると言ってくれた、サニーのプロデューサーの好意に応える事なく、その後、彼とは2度と会う事はなかったのであった。





 1998年
僕はアパレル業界から転職し、サーフ系雑誌“F”で働いていた。
年齢は32歳になっていた。

“F”での僕は、雑誌に載せる広告営業と、日本各地のサーフポイントの近くにある、宿や飲食店の取材をし、それを記事に書いていたりする仕事が中心であった。
他には月一くらいで、社が主催するDJイベントに駆り出されては、深夜の青山のBARで、集まって来た女性客たちの話相手などもさせられた。

その頃は、仕事が落ち着くと3ヶ月に1回程のペースで、僕は都内の小さなライブBARで弾き語りライブをやり始め出していた。

でもそのライブは、30人程の客の前でやる、小規模なライブであった。
プロを目指すとか、そんな事を意識した音楽活動では決してなかった。





7月

「アニキ、カミシャクの「ARROWS」にでも、これから行きますかぁッ!?」
新卒で後輩社員のグリオが、僕にノリ良く言う。

「サキのとこか?」と僕。

「そうです。サキちゃんのとこです」とグリオ。

 金曜の週末。
僕ら2人は新宿で飲んでいた。

カミシャクのARROWSとは、上石神井にあるBARの事だ。
ARROWSには、サキという19歳の女の子がバイトをしていた。

サキは新宿にある「EXP」という音楽専門学校に通っていた。



彼女は、高校卒業と同時に福岡から東京へ上京し、プロのドラマーを目指していた。
小柄で笑顔が可愛い女の子であった。

EXPの女子寮が上石神井にあったので、彼女は上石神井の駅前のBARで、深夜アルバイトをしていたのだ。
ちなみにそのBARは、ガールズ・バーではない(笑)

僕らが初めてARROWSに行ったのは、その年の4月に入ってすぐであった。

カウンター越しでサキと話しているうちに、僕らは仲良くなり、店が終わる深夜2時になると、いつも隣にある居酒屋「三男坊」で待ち合わせをし、始発まで一緒に飲んだりしていた。



「これ…、お土産…」
お座敷席の正面に座るサキがそう言って、僕に包みを渡した。

お土産は「博多通りもん」というお菓子だった。
サキは、GWに一旦実家へ帰っていたのだ。

「あっ、これ知ってるよ!、美味いんだよな」
僕は、当時姉が福岡に住んでいた関係で、その和菓子を食べたことがあった。

「なに?、なに?、アニキだけ?」とグリオ。

「だって…、この前ヤマダ電機に買い物付き合ってもらったりしたから…」
サキが少し困った顔で、グリオへそう言う。



 5月頃、グリオの企画で僕が車を出し、ARROWSの女の子たちと多摩川へBBQに行った事があった。
その頃から僕とサキは、2人で会う機会が増えていたのだった。

「ねぇ、グリオさんはどうして、こーさんの事を“アニキ”なんて呼ぶの?」
サキが前々から聞きたかったであろう質問を、グリオにぶつけた。

「それはね…」
僕がグリオに変わって説明を始めた。

「俺が新卒のグリオと、初めて2人で飲んだ時の話だ」
「どこで飲もうかと、歌舞伎町をうろついてたら、突然客引きのニイチャンに声を掛けられたんだ」


以下、回想シーン。

「アニキィ~!、どこで飲むか決まってるんですかぁ~?、もしまだなら外国人BARはいかがっすかぁ~?」
若い客引きの男性が、僕に声を掛けて来た。

「外国人BAR~?」と僕ら。

「そうですよ!、ロシア、フランス、スペイン、ルーマニアと揃ってますよアニキィ~!」(客引き男性)

「いや…、いいよ俺らは…」(僕)

「そんな事言わないで下さいよアニキィ~!、ル~マニアッ!、ル~マニアはいかがっすか、アニキィ~ッ!」(客引き男性)

ははははは…。
客引き男性の、そのフレーズとノリがツボにハマったグリオが笑う。



「という訳で、以来こいつは俺の事を、あの客引き男のマネをして、“アニキ”と呼んでいるんだよ」
「だから別に、俺の事を敬って言ってるわけじゃないんだ」

僕がサキへ説明した。

「へぇ~、そうなんだ?」
大したオチもない話だが、サキは一応反応してくれた。


「あっ…、それから、今日は報告があるんだぁ♪」

思い出す様にサキが、僕らに笑顔で言う。

「デビューが決まりましたぁ~!」とサキ。

「ええっ!、ホントかよ!?」(僕)

「現役女子高生アイドルのバンドメンバーとして、デビューする事に決まりましたぁ~!」
きゃっきゃっとはしゃぐサキ。



「女子高生じゃね~じゃん」
グリオがサキにつっこむ。

「あたし以外は全員本物の女子高生なの!、あたしは童顔だから年齢サバ読んで参加する事になったの」
サキがグリオに言う。

「へぇ~…」
そういうのもアリなんだぁ…と僕ら。

「今度、NHKの歌番組に出演するから観てね!」(サキ)

「まじか?、ホントにデビューすんだな?」
「どこの事務所と契約したんだよ?」
僕がサキに聞く。

「エイマックス…」(サキ)

「すげぇッ!」(グリオ)

「でもね…、意外とそうでもないんだよ…」(サキ)

「と言うと…?」(僕)

「メンバー5人で活動資金は年間150万だけ貰えるの…、あとは自分たちでツアー費とかスタジオ練習代とか、なんとかしろって…」(サキ)

「あんな大手でも、そうなもんなんだ?」(僕)

「そう…。だから楽器代とかもあるから、結局バイトは辞められないよ…」(サキ)

「厳しい世界だな…」(僕)

「でもまだ女の子は良いよ。オミズとかで働けるから…」
「もっと大変なのは男子だよ。男子は肉体労働しながら活動しなきゃなんないんだから…」

サキは僕らにそう言うと、ドリンクに口をつけた。


「はい!、タコ串お待ちどう様でしたぁ~!」

そこへ三男坊のバイト店員が注文した料理を運んできた。
タコ串は、少し炙ったタコブツに、シソの葉を巻いて串に刺したものだ。


「これ!、これ!、これ美味いんだよなぁ~」
グリオが言う。

「おい、あの店員どっかで見た事ないか?」
僕がサキに耳打ちして言う。

「あ…、あの人ね。お笑いでTVにたまに出てるよ」
「ダンコ・ザ・カンクルーって名前で、ラップでギャグをやってるの」

サキが言う。

「ああ…、“学校に行こう”っていう、バラエティに出てたやつか?」
思い出した僕が、サキに言う。

「新宿のルミナとかでたまにライブをやってるみたいだけど、やっぱ大変らしくて夜はバイトしてるらしいよ…」
サキが言う。

「やっぱプロの世界は、どれも厳しいという事ですね…」
話を聞いていたグリオが言う。

「君も頑張れよ…」
僕がサキに向かって静かに言った。

「うん」
サキは笑顔で僕にそう応えた。




 月曜日
サーフ系雑誌“F”編集部。

「おはよう!」
編集部に入った僕がみんなに言う。

「あ、おはようございま~す!」
編集部のみんなが僕へ言う。

「ホンコン!、表4広告のバドワイザーのゲラ上がってるか?」
僕がデザイナーの女性にそう聞く。



ホンコン(本紺)は、その名の通り、お笑いタレントのほんこんさんが、おさげ髪をした様な顔をした女性だ。
気が強い女性なので、僕はちょっと苦手なタイプであった。

「ええ…、上がってるわよ」

そういうとホンコンは眉間にシワを寄せながら、僕にゲラを渡した。
別に怒ってるワケじゃないのだろうが、いつも彼女はそんな表情をしている。

「ありがとう…。じゃあ早速これを持って、BUDジャパンの本社に行って来るわ…」
受け取った表4広告を眺めながら、僕は言う。

「あっ!、グリオ」
僕は近くにいたグリオに声を掛けた。

「来月の鵠沼海岸での音楽イベント…、あれ、俺とお前で行く事になったからな…」

「分かりました」とグリオ。

「それで一緒に、ホンコンとタシロも連れて行く」

タシロとは、ホンコンの子分みたいな存在の、デザイナー担当の女性だ。

「えッ!、あの2人もですかぁ?」
グリオが嫌そうな反応をする。

「仕方ないだろ!、他に誰も動けないんだから…」
僕は小声で周りに聞かれない様に、グリオへ耳打ちした。

「ねぇ!、鵠沼のイベント終わったら、その後、みんなで飲みに行きましょうよ!」
遠くに座ってMacを操作していたホンコンが、僕らに向かって突然言い出した。

「いや…、俺はいいよ…。翌日も朝早くなると思うから…」
僕はホンコンにそう言って、彼女からの誘いをかわした。

「なんでよ~!、なんかいつもアタシたちの誘い断ってなぁ~い?」
ホンコンが憤慨した表情で、僕に言って来た。

「そうそう!、なんか私たちの事、いつも避けてるよねぇ~?」
ホンコンの隣で作業していたタシロも、それに同調して言い出した。

「そ…、そんな事ねぇって…」(だって楽しくないんだもん…)
僕はおどおどする。

そこへ編集部の電話が鳴った。

「おい!電話だ」
僕は(助かったぁ…)と、胸を撫でおろしながら思った。

ホンコンが電話に出る。

「海外からよ」
ホンコンが受話器を押さえて僕に言った。

「中出氏頼む!」
僕は英会話が出来る中出氏に対応を振った。

流暢な英語を話し出す中出氏。
それを僕とグリオは眺めていた。

「ナカデさんは、なんであんなに英語が喋れるんでしょうね?」
グリオが隣に立つ僕へそう聞いた。

「知らん…。あいつ留学経験とかも無いんだけどな…」
僕がグリオにそう応えた。


「おい、なんでお前は英会話が出来るんだ?」
電話が終わった中出氏に僕は聞いた。

「高3の時、大学受験で通っていた予備校で学びました」
中出氏が僕に言う。

「へぇ…、そんな予備校へ通っただけで喋れる様になるもんなんだ…?」
僕は感心して言った。

「どこの予備校に行ってたんですか?」(グリオ)



「みしゅじゅ学苑です」(中出氏)

「えっ!、みしゅじゅ学苑って、あのTVのCMでヤマトタケルノミコトみたいな恰好で宣伝してるあれか…?」(僕)



「はい!、怒涛の英語力です!」
中出氏はそう言うと、中指でメガネを押し上げてニヤッと笑った。

(やっぱこいつは、怪しいやっちゃなぁ~…)

僕は中出氏の顔を見ながら、そう思うのであった。





 8月某日。
鵠沼海岸での音楽イベントの開催の前日となった。

「お~悪い、悪い…」
車で現地に来た僕は、渋滞に巻き込まれてしまい、少し遅れて到着した。

「遅いですよアニキ!」
グリオが言う。

「ホントよね!」

「まったく!」

続いて、ホンコンとタシロも一緒になって言う。

「30分くらい大目に見てくれよ」
僕は先に到着していた3人にそう言った。

「ほら!、向こうの担当者はもう来てるわよッ!」
ホンコンがいつもの様に、眉間にシワを寄せて言う。

ホンコンが言ったその先には、20代半ばくらいの女性が、1人でせっせと会場設営の準備をしていた。

「彼女は?」
僕がホンコンに聞く。

「あの人が、今日のイベントを主催する会社、“Unseen Light”の社長の岬さんよ」とホンコン。

「彼女が…!?」
僕はその女性を見て、(ずいぶん若い社長さんだな…?)と思った。

彼女は長い髪をポニーテールにまとめ、ポロシャツにサブリナパンツという、動きやすい恰好をしていた。
暑い中、一人黙々と作業をする彼女を見て、(あんなに必死でやらなくても十分間に合うのに…)と、僕は思った。

「いいケツしてますね…」
僕の隣に近づいて来たグリオが、ボソッと言う。



彼女はこちらに背中を向け、しゃがんで作業をしていた。

「ああ…、そうだな…」
僕はそのことについて、特に否定する気もなかったので、グリオの言葉にそう応えた。

「いやらしい…」

後ろにホンコンがいるのを忘れていた。
彼女は眉間に、一層シワを寄せながら、嫌悪感丸出しで僕にそう言った。

「早く挨拶して来なさいよ!」

「ああ…」

ホンコンにせっつかれた僕は、設営準備をしている彼女の元へと歩いて行った。



「“Unseen Light”の岬です。今日は宜しくお願いします」

僕が彼女へ声を掛けると、彼女は深々と頭を下げて挨拶をした。

彼女から受け取った名刺には、「岬不二子」という名が書いてあった。
岬不二子はスラッとした体形で、綺麗な顔をした女性だった。

「そんなかしこまらないでくれよ。気楽にいこうぜ!」
僕は彼女をリラックスさせる為に、わざとフランクに彼女へそう言った。

岬不二子への挨拶が済んだ僕が、みんなのところへ戻ると、グリオが何やら柄の悪そうなオッサン2人に詰め寄られている姿が見えた。

「あれは…?」
僕がホンコンに聞く。

「なんかミシナ組っていう、地元のヤクザの親分さんみたい…?」
「誰の許可取って、ここでイベントやってるんだ!?って、イキナリ怒鳴り込んで来たの」

ホンコンが僕にそう言う。

「ふ~ん…」と僕。

そうか、この土地ではまだ昔ながらの風習が残ってたんだ…?
ちょっと前までは、何かお祭り事をやる時は、必ずその土地の親分さんに許可を貰って、ショバ代を払っていたからな…。

「岬さんに知らせる?」
ホンコンが僕に言った。

「いや…、いいよ」

「えっ?」

「彼女に余計な心配をかけさせたくない」
「俺があのオッサンと話して来る…」

僕はそう言うと、絡まれているグリオの方へ歩いて行った。



「おいあんたら!、今はそういう時代じゃねぇんだよ!」
僕がヤクザに近づいて言う。

「あッ!?、なんだテメ~は?、コラッ!」
ミシナ組の親分の隣にいた子分が、僕に凄んで言う。

「今じゃヤクザさんとはお付き合いしちゃイケねぇって言う、暴対法ていう法律が出来ちまったんだよッ!」(僕)

「んなこと知るか!、バカヤロウッ!」(子分)

「いいのか…?、あんたら警察に引っ張られても…?」(僕)

「何ッ!?」(子分)

「ここから今すぐ電話したら、アンタらは取っ掴まるという事だ」
携帯を手に僕が言う。

「この野郎ッ!」
子分がそう言うと隣の親分が、「待て!」と止めた。

「これだけ見物人が周りにいたんじゃ逃げおおせん…」
親分が子分に続けて言う。

「そういう事だ…」

僕は相手を見て、ニヤリとする。
だが額からは冷や汗が流れ落ちた。

「行くぞ!」
親分がそう言うと、子分も仕方なくその場から引き上げて行った。

「さすがですねアニキッ!」
グリオが、立ち去って行くヤクザの後姿を睨んでいる僕に向かって言った。

「怖えぇぇぇ…」
ヤクザが居なくなってホッとした僕は、グリオに苦笑いしながらそう言って安堵した。



「良いんですかい親分…?」
ミシナ親分に、子分のツチヤが砂浜を歩きながら言う。

「良いわけねぇだろうッ!」
ミシナが、小声で声を震わせながら、力強くツチヤにそう言った。

「ツチヤ…」(ミシナ)

「はい!」(ツチヤ)

「明日のイベントで最後に歌うグループは、今、茅ヶ崎にいる」(ミシナ)

「茅ヶ崎に…?」(ツチヤ)

「そうだ。隣の茅ヶ崎で、明日の昼過ぎまで他のイベントに出演し、それが終わったら、こっちに車で向かって来る予定の様だ」(ミシナ)

ミシナがそう言うと、勘の良いツチヤが、要領を得た顔をした。

「ツチヤ…。そのバンドが鵠沼に向かって出発したら、車で後ろから突っ込んで事故を起こしてやれ!」(ミシナ)

「そうすりゃ、イベントの最後は台無しとなる?、そういう訳ですね親分?」(ツチヤ)

「そうだ。俺たちを甘く見たらどうなるか、思い知らせてやれ!」(ミシナ)

「分かりました」
そういうとツチヤは、ニヤニヤと笑い出すのであった。




 それからイベント会場の設営準備は、思ったほど早く終わった。
時刻は昼になろうとしていた。

準備が済んだ僕は、遠巻きから岬不二子を眺めていた。

彼女は何で、あんな苦しそうな表情で頑張ってるんだ…?
それにどうして、彼女の会社のスタッフは、彼女1人しか来ていないんだ…?

僕は彼女を見つめながら、その理由を考えていた。

「ねぇ!、準備も終わった事だし、みんなでお昼ゴハンでも食べに行かない?」
ホンコンが僕の後ろから声を掛けて来た。

「悪ィ…、俺ちょっと彼女と打ち合わせを兼ねて、メシでも食って来るよ!」
僕はホンコンにそう言うと、岬不二子の方へと走って行った。

「まったく!、男って可愛いコがいると、すぐデレデレと尻尾振っちゃってさッ!」
ホンコンが眉間にシワを寄せ、腕を組みながらそう言った。

「仕方ないですよ…。彼女は良いケツしてますから…」
ホンコンの捨て台詞を聞いていたグリオが言う。

「何よッ!、お尻だったら私だってキレイなお尻してるわよッ!」
そう言って、グリオに尻を向けるホンコン。

「いや…、いくらお尻だけが良くても…他が…」
困ったグリオがホンコンに言う。

「なんだと!てめぇッ!」
怒ったホンコンが、グリオの首を締めあげた。

「うわあッ!、アニキ!助けてぇぇ…」
締め上げられるグリオが、死にそうな声でそう言った。




 空が暗くなった海岸。
暗がりの向こうから、さざ波の音が聴こえる。

僕は“Unseen Light”の岬不二子と、焚火を見つめながら缶ビールを手に話し込んでいた。

僕はイベント開催中は車中泊をしていた。
別に金が無いワケではないが、ホテルに宿泊し、いつも同じビュッフェを朝に食べ、昼はコンビニ弁当や牛丼、マックにラーメンだと飽きて来る。

だから僕は車の中に、いつもテントやらコンロ、スキレット、缶詰とかを持参していた。
泊まり込みの仕事のとき、野宿できる場所があれば、なるべくそうした。

1日の仕事の後は、まずコインランドリーで洗濯し、近くの銭湯へ行き、その後、自炊を始める。
この時は海岸での野営だったので、夜の海を眺めながら、ビールを飲んで静かに夜を過ごすのだ。

BGMに、ボリュームを絞ったラジオをかけながら、誰にも邪魔されない、充実した孤独を味わうのである。

イベント会場からさほど離れていない、今回の野営地に、僕は“Unseen Light”の岬不二子を誘ってみた。
昼間、一緒に仕事をしながら垣間見えた、彼女の辛そうな表情の理由を知りたかったのだ。

僕のテキトー過ぎて、ホント申し訳ないほどの手料理を、彼女は笑顔で食べてくれた。
そして食事を終えた僕らは、海に向けたチェアーに座りながら、波音が聴こえるだけの海を見つめていた。

そしてしばらくすると、彼女は僕に心を開いてくれたのか?
焚火の炎を見つめながら、ポツリと僕に言ったのであった。



「明日は、私にとって初めてマトモな仕事なの…」

「マトモ…?」
僕は不二子に向いて言う。

「ええ…。独立してからいつも赤字の仕事ばっかりで…、ホントにこんなんでやっていけるのかなぁ…って、不安ばかりの毎日だったわ…」

「明日は初めて黒字の仕事になるんだ…?」

「ええ…」
缶ビールを手に、炎を見つめる不二子は頷くと、続けて話し出す。

「たとえ今は一人でも、いつかは社員を雇える様な会社にして行きたいと思ってるの…」

「できるさ…」
海を見つめながら、僕は笑顔で言う。

「え?」
炎に照らされた不二子の顔が、僕に振り返る。

「君なら出来ると言ったのさ…」

「ふふ…、なんでそんな事がわかるの?」

「今日、一緒に仕事して分かったが、君は仕事に対してとても誠実だった」
「それと君には、仕事に対しての覚悟が感じられた…。ひしひしとね…」

不二子は、焚火に照らされる僕の横顔を見ながら黙って聞いていた。
そして、焚火に小枝をくべながら、今度は僕が彼女にポツリと言った。

「だが同時に顔からは、悲壮感も漂っていた…」

「悲壮感…?」
不二子が僕に聞く。

「ああ…、あんな表情をしてたら幸運も逃げてしまうぜ」
「だから今夜ここに君を誘ったんだ…」

僕がそう言うと、不二子は笑みを浮かべながらも、少し目を潤ませる表情をした。

「たとえ今は君しかいない小さな会社でも、誠実に、前向きにやっていれば、いずれ花が咲くさ…」
「だからくじけないで、頑張って欲しい…」

僕は暗闇の海を見つめながら、彼女にそう言った。

「そうね…。うん…、私頑張ってみる!」
彼女が抱えていた悩みが、少しだけ吹っ切れた様な感じで、不二子は僕に言った。

「じゃあ明日のイベントは、何としても成功させなきゃな…」
僕はそう言うと、缶の中に残っていたビールをグィっと飲み干した。

「ええ…」
不二子が微笑んで僕に言った。

砂浜には静かな波音がいつまでも続いていた。




 翌日
鵠沼海岸の音楽イベントが始まった。

イベントは順調に進み、時刻は午後4時となった。
セミファイナルのバンド演奏も終わり、あとはトリのバンドが演奏するだけとなった。

その時、アクシデントが起こった。

「何ッ?、最後に出るバンドがこっちへ向かう途中で交通事故に巻き込まれたッ!?」
ケータイを手にした僕がそう言った。

なかなか始まらない最後の演奏に、しびれを切らした観客たちがブーイングをやり出した。

マズイな…。

僕は岬不二子の方をチラッと見た。
彼女はスポンサーに責められて、ペコペコ頭を下げていた。



僕は昨夜、岬不二子が何故たった1人で、あんなに頑張っているのか理由を聞いていた。
だからこのイベントだけは、なんとか成功させてあげたかった。

「グリオッ!」

「はいッ!」

「駐車場に行って、俺の車からギターを持って来てくれッ!」
車のキーを渡しながら、僕がグリオに言う。

「どうするつもりでッ?」

「俺がステージで歌うッ!」

「だッ…、大丈夫なんですかッ!?」

「ああ、大丈夫だ…、いつもより観客が多いだけだ」

「それにしても多すぎませんか…?」

「いいから!、早くギター取って来いッ!」

「分かりましたぁ~ッ!」
グリオはそう言うと、駐車場へと走り出した。




「はいッ!アニキッ!」
15分後、汗ダラダラの顔で、グリオが僕にギターを渡した。

「サンキュー!」
僕はそう言うと、ギターを持ってすぐさまステージへと向かった。


「おいッ!、君ッ!、何するつもりだ!?」
ステージへ上がろうとする僕の前に、スポンサーの1人が立ち塞がった。

「俺が歌って時間を稼ぐ」

「君が?、何考えてんだ正気か!?」

「もうこれ以上、客を待たす事はできない!」
僕は強引に行こうとするが、スポンサーが掴んで止めに入る。

それを見たグリオが、後ろからそのスポンサーを抱え込んだ。

「アニキッ!、早く行ってくださいッ!」

「バカッ!ヤメロッ!、イベントをぶち壊す気かぁ~ッ!」
グリオに抱え込まれたスポンサーが、身体を左右に振りながら怒って叫ぶ。

僕はそんなスポンサーを尻目に、ステージへと上がった。

ステージに立つ僕を、「何事だ?」と見つめる観客たち。

「ええ…、みなさん…。本日はご機嫌麗しゅう…」と僕。

クスクス笑い出す観客たち。

「ああ…」
もうお終いだと、両手で顔を覆うスポンサー。

そして僕の弾き語りが始まった。

僕が歌い出すと、観客の笑い声がピタリと止んだ。

「あ…、あれぇ~?、なんか良い感じなんじゃないのぉ~…?」
さっきまで邪魔してたスポンサーが、手で顔を隠した指の隙間から、僕のステージを観て言う。


大いに盛り上がる会場。


そして僕の演奏が終わった。
観客からは、歓声と口笛がいつまでも続いていた。



「やりましたね?アニキッ!」
ステージから降りた僕に、グリオが駆け寄って来た。

「ああ…、俺はもう疲れたよ…」
極度の緊張から解放された僕は、グリオへそう言った。

するとステージを観ていた岬不二子が、僕の方へ近づいて来るのが見えた。

「ありがとう…、本当に助かったわ」
安堵の表情で言う彼女。

「びっくりしたわ…、まさかあなたが歌えるなんて…」
「でも、どうして言ってくれなかったの?、ミュージシャンだって事」

「俺はプロじゃないから…、言う必要もない…」
「でも、いつかはプロとしてやっていくつもりだ」

僕は少しはにかんで、彼女にそう言った。
すると岬不二子は突然、僕に向って力強く言うのだった。



「私も頑張る!、だからあなたも歌を続けて!」

「そしたらいつか一緒に仕事が出来たらいいな…」
僕は彼女にそう言うと、ニコッと笑った。

 夕暮れの鵠沼海岸。
僕と岬不二子は再会を誓い、握手をして別れた。




 東京への帰り道。
ハンドルを握る僕は、先程のステージでの興奮がまだ冷めやらない状態であった。

やっぱり俺の歌は通用するのか…?

僕は以前よりも、確かな手応えを身体に感じていた。

「グリオ、今夜サキのBARへ久々に行ってみるか?、今夜は出勤してるみたいだぜ」
助手席に座るグリオへ僕は言った。

「良いっすね~!、明日は休みだし、行きましょうか!?」
ノリ良く応えるグリオ。

サキはデビューしてからは忙しくなり、店にはあまり出なくなっていた。
僕らがARROWSに行くのも、久しぶりだった。




 東京へ着くと、僕は自宅に車を停め、それから電車でグリオと上石神井まで移動した。
駅に着き店に入ると、カウンターに立つサキの姿が見えた。

「オスッ!、メスッ!、キスッ!」
グリオが店に入るなり、元気よく手を振り上げながら、サキに訳の分からん挨拶をする。

「いらっしゃい」

僕らを見た笑顔のサキが、ホッした様な表情で言った。
彼女は、何か疲れている感じがした。

「久しぶりだな…」
席に着いた僕がサキに言う。

「うん…」

「仕事が忙しくなってきたのか?」

この場合の仕事とは、バンド活動の事だ。

「ぼちぼち…」

「そうか…」

僕らは、そんな短いやり取りを交わしていた。

すると何を思ったのか?、グリオが突然、サキに言い出した。



「今日、鵠沼の音楽イベントの担当者の女が、スッゲー可愛かったんだよ!」
「そんで、その女のケツを見たアニキが、いいケツしてるって俺に言うんだよぉ!」

グリオが笑いながらサキに言う。

その言葉を聞いたサキは、僕の方を見て、「うわぁ…」と思いっきり引く仕草をした。

「お前…、汚ねぇなぁ…」

グリオにまんまとハメられた僕は、やつに苦笑いでそう言った。


To be continued….






解説
今はもう無い、赤坂のツインタワービルでソニーの大規模なオーディションを受けた僕。
正確な年代は覚えてないけど、確か1993年頃だったはず!…?
あの時のプロデューサーも、役員にでもなってなきゃ、もう定年退職してるんだろうなぁ…。
あの時の情景や会話を思い出しながら、リアルに書いてみました。

ソニーをサニーにしたり、エイマックスだのEXPだの、居酒屋三男坊だのと、いろいろ仮名にしてるけど、分かる人には分かりますよね(笑)

今回の物語で、僕がCDを作ってから、どんな方法でプロモ活動してたのか、今後もありのままに書いて行きます。
これからプロやインディーズでデビューを考えてる人たちには、参考になる裏話情報だと思います。

さて、この「夏詩の旅人」を執筆してて、何が1番楽しいかと言うと、今はもう疎遠になってしまった友人らと、ここでは会えるからです。
僕が頸椎を損傷して、左指が上手く曲がらない様になり、音楽活動も休止してからは、音楽関係の友人、カズや小田さん、ハリーとも、もう7年くらい会っていません。
グリオや中出氏もそうですし、結婚したマイやリョウなんかもそうです。彼女たちなんかは、もう東京には住んでいませんしね。

この小説を書いていると当時の事を思い出します。
それにしても、当時はグリオとはよく飲みにいったなぁ…、あいつは本当に、あんな感じで喋ります。
酔っぱらうと暴走して、ベロベロになって、どこであろうが暴言を吐き、よくマイに怒られてましたね(笑)
僕も中出氏の話題を居酒屋で、大きな声で話してたら、「周りに聞こえる!、恥ずかしいからやめて!」と、マイにマジで怒られた事がありました(笑)

今回の話は、僕が20代から30代の頃の話なので、主人公のキャラがチャラいですよね?(笑)
それとグリオや中出氏って、本当にああいうしゃべり方で、ああいうキャラなんで、小説に書くのはどうかな?と、思ったりもしましたが、やはりリアルさが消えてしまうので、そのまま、彼らの会話を書く事にしました。

そうそう、岬不二子と初めて出会うシーンは、「まだ見ぬ光」という回では、不二子目線で書かれていたのですが、今回は主人公目線で書いてますので、読み比べてみると面白いと思います。