『お別れホスピタル』・最終回 | なにわの司法書士の徒然草

なにわの司法書士の徒然草

つれづれなるままに日暮らし
PCに向かいて
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そこはかとなく書きつづれば
あやしうこそものぐるをしけれ

NHKテレビ土曜22時のドラマ『お別れホスピタル』

 

 

末期がん患者のホスピスを取り扱う作品にはつきものではあるが

 

どうやって死を迎えるのか、誰もが必ず人生の最期に経験するこのテーマ

 

死ぬとはどういうことか、それはつまりどう生きるのかということだったりもするわけだが

 

これまでも多くの作品で描かれてきたテーマだ

 

 

ただ、そんな作品の多くが患者自身にスポットを当てていったのに対して

 

今作では、患者を見守る医師や看護師の気持ちはもちろんのこと

 

見送る側の親族の気持ちも描いていったのが新鮮でもあり

 

その親族の本音の言動に衝撃を受けたところもある

 

 

特に、余命わずかな夫を抱えた高橋惠子さんのエピソードがあまりにも衝撃的

 

自身も入院していたときは、わざわざ夫と同じ病室にしてもらって

 

着替えや食事の介助など本来は看護師がする仕事も甲斐甲斐しく世話していて

 

すごく仲のいい夫婦に映っていたのに、岸井ゆきのに「もういや」と不満を吐露

 

急変して苦しむ夫に、最初は後方で静観していた高橋惠子さんが

 

ベッドに近づいて汗を拭いてあげ始め、やはりそうは言っても、と思っていたら

 

高橋惠子さんは夫の耳元で、これでもういいでしょ、早く逝ってください

 

現実社会にはこういうこともありそうだが、これをドラマで描くなんて驚き

 

穏やかな顔で優しい口調でささやく高橋惠子さんの姿に、人間の内面の狂気を感じさせられた

 

 

また、植物状態の娘を抱えた筒井真理子さんが、一緒に死んでしまおうと

 

こっそり車いすで娘を連れ出そうとしたり

 

末期がんの夫に対する看護師の手厚い世話に、私が死んでも大丈夫と言っていた泉ピン子さんが

 

ベッド脇に寄り添いながら息を引き取ってしまっていたり

 

患者の親族の思いというものに焦点を当てた斬新な作品になった気がする

 

 

テーマが「死」ということもあるし、それを真正面から描くNHKでもあるので

 

作品全体が思い空気に包まれてしまうのは仕方ないところだが

 

最後の最後のワンシーン、木野花さんが息を引き取り岸井ゆきのがお世話をする場面

 

木野花さんの口から出てきたのは権利証の断片

 

直後に、木野花さんの高笑いが聞こえて来て、権利証をむしゃむしゃ頬張る姿が描かれる

 

自分の思い入れのあるビルを子供たちに渡すものかとベッド脇に権利証を置いていたが

 

最後の最後まで意地になって、死の間際に食べてしまったようだ

 

重い重い作品の最後に、くすっと笑えるシーンでオチをつけるなんてNHKらしくないが

 

「ここは人を見送るための場所ではない、ここは病院だ、人が生き切るための場所だ」

 

という岸井ゆきのの台詞を借りれば、権利証を食べるということが

 

木野花さんにとっては「生き切った」証だったのだろう