【こんな工場が一番の驚き】
今から40年以上前の昭和57年に発刊された松下幸之助全研究シリーズ全4巻を完読した
その当時のことを知るにはその当時に書かれた本を読むのが一番である
そういった意味で新事実ばかりで貼った付箋は137枚
なかでも今回一番驚いた話があります
インドネシアにあるナショナル・ゴーベル社のガンダリア工場内に千坪余りの巨大なモスクを建てたというのだ
毎日お昼休みには、構内にコーランが流れる
この国では回教の教えが社会道徳の基盤になっている
とくに金曜日が聖なる日にあたりこの日はお祈りをする
宗教心が強い国民性のため工場内の巨大なモスクに従業員は大喜びであったという
それだけではない
この日は工場の近所の人たちも「私たちもこのモスクで礼拝させてください」とくるのだという
毎週この日だけは工場の門を開けて一般の人を招き入れるのでモスクに向かう人々の群れが次々とふくれ上がるという
松下幸之助さんが海外に赴任する責任者や幹部にいつも言っていたことがあります
「本社のことよりも、その国の人がどうすれば喜ぶか幸せになるか。どうすれば繫栄するかを考えてくれ」ということである
松下さんのこの経営方針がインドネシアでは工場内に巨大なモスクを建てるということで実践がされたわけである
従業員が喜び、近所の人たちも大喜び
恐らく近所の人たちは、みんな家電はナショナル製品を買ったことでしょう
第364回【松下幸之助は出来る理由を考える天才】
著書『伊藤忠 丹羽革命 社長の覚悟が会社を変える』に
伊藤忠商事を思い切った大手術で蘇らせた丹羽宇一郎(にわ・ういちろう)社長の興味深い発言がある
丹羽社長いわく
「大企業の社員は何か指示をされた時に、それをやらないための理屈をつける天才だ」と言う
なるほどこのことは自動車王のヘンリー・フォードも優秀な技術者ほど出来ない理由を考える、と似たようなことを言っています
松下幸之助さんはその真逆で出来る理屈を考える天才だったといえる
『PHP』誌のアメリカ版を出すことになった
松下さんが「君が責任者としてやってくれ」
その人は英語が苦手だったので「それはできません」と断ると
松下さんは
「日本語の苦手なわしでも、PHPの出版をやっておる。君は英語を何年学んできたんや。英語が苦手なら、英語のよくできる人に仕事をたのんだらええやないか」
ある時、松下さんが編集室の様子を見にきていろいろと質問をしてきた
責任者は
「英語の不十分な者ばかりでやっておりますので、なかなか仕事がうまくはかどりません」とつい本音を言ってしまった
すると、松下さんは
「君、何言うんや。かつて日本にキリスト教を広めた宣教師たちは、日本語を全然知らないまま日本に来たんやろう。それでも立派に布教したというやないか。要は志であり、強い使命感があるかどうかや」
確かに日本にきた宣教師たちは辞書もないのに立派に布教した
こう言われたらやらざるを得ないだろうし、やれるような気がしてきます
※写真は『伊藤忠 丹羽革命 社長の覚悟が会社を変える』岸永三(著)日本実業出版社
第363回【最も分厚い松下幸之助の対談本】
『池田大作全集8』を完読した
この全集は池田大作氏(創価学会3代会長)と松下幸之助さんの対談本である
677ページあり恐らく松下さんの対談本では最も分厚い著書といえよう
話題は「宇宙」「生命」「人間」「宗教」「政治」「教育」と多岐にわたり、他では話をしないようなことを松下さんが話しているので松下哲学を理解するうえでとても参考になりました
例えば、松下電器には7精神というものがある
そのうちの一つが『感謝報恩の精神』である
この『感謝報恩』について
松下さんは
「この思いこそ、われわれに無限の喜びと活力を与えてくれるものであり、この思いが深ければ、いかなる困難も克服でき、真の幸福を招来する根源となる」
と述べています。このことはパナソニック社のホームページにも書かれていますが
さらに松下さんは
「心の豊かさというものはいろいろありましょうが、やはり恩を知るといことが一番心を豊かにするものではないでしょうか。人間といわず天地万物いっさいのものの恵みがみなわかってくるわけです・・・・・つまり、恩を知るということは無形の富であって、無限に広がって大きな価値を生むものだと思います」
松下さんはある時
「空気を5分もとめられたら死んでしまう。仕事どころではない。空気が無限にあることは当たり前ではない。格別の有難さを感じなければいけない」
ということを述べたことがあります
つまり『感謝報恩』の恩というのは人からの恩だけではない
天地自然の恵みにも恩を感じなければならないということである
それができると、「無限の富」、「無限の価値」、「無限の喜び」が得られる
これが『感謝報恩の精神』の神髄と感じました