世に中にポップなロックは数多くあれど、その人じゃなきゃ創れないほどオリジナリティのあるものはそれほど多くはないんじゃないかと思います。

自分にとってはその筆頭が、Brian Eno
アンビエントも含め、相当幅広いフィールドで活躍してきた彼ですが、その本領は実はポップなロック創りにあって、それは実にユニーク。

今日ご紹介するのは、1977年にリリースされた "Before And After Science"
$ノスタルジックなノイズたち

いわゆる、ボーカルアルバムと呼ばれているものですね。
この頃の彼がやっていたのは、まぎれもないロックです。

ソロ・デビューアルバムの Here Comes The Warm Jets からすでにサイケでグラムでちょっと壊れた感じのロックを創ってましたが、彼の音楽が持つサウンドスケープが一挙に花開いたのが、ソロ3作目の Another Green World でしょう。

このロック史に残る素晴らしいアルバムによって、彼のサウンドスケープ創造能力(?)が一気に花開いたわけですが、そこで進化したサウンドスケープとロックの融合は、次にリリースされたこのアルバムで更なる発展を遂げました。

なんというか、今聴いてもまったく古さを感じさせないどころか、ここまでのサウンドプロダクションができるミュージシャンは未だにこの時期のイーノを除いて、いないんじゃないかと思わせるほど。

このアルバムはレコードでのA面B面、CDだと前半後半でまったく違うサウンドスケープを持っています。
前半がイーノならではのポップなロック、後半がゆったりとしたサウンドスケープにつつまれたアンビエントロック。
この対比がまたたまりません。



壊れ気味のポップネス。最高です。


後半のアンビエントモードポップネスの入り口。ちょっと穏やかな曲。


また、同じアルバムの中でこういう曲を同居させてしまう、できてしまうのが彼の凄さ。


イーノがどんな音楽を創っても、それがどんな方向性であっても、刺激的で創造性にあふれ、
手放しで評価できた時代でした。

彼の作品と行動に影響を受けたミュージシャンは数限りなくいるでしょう。
ソロだけでなく、プロデュース活動においても、ボウイやトーキングヘッズとのコラボレーションなどにおいても、比肩できる人が考え付かないほどの功績を残してくれています。

単なるリスナーであった自分ですら、その音楽観に多大なる影響を受けていますから。

最近の活動は、自分の期待が大きすぎるのか、やや肩透かしのものが続いてますが、さすがに革新的なことをやり続けるには、年を取り過ぎたのか。

でも、70年代から80年代に残してくれたアルバム群だけでも、十分過ぎるほど。
憧れの存在です。

今日の東京は雲は多めではありましたが、春っぽい気温と空気に包まれました。


暖かな日差しと、少し怪しげな黒い雲のハーモニー。

いかにも天候不順な春の一日。

こんな日は音楽三昧に限ります。


今日聴いたアルバムたち。


Sparklehorse "Good Morning Spider"

Sparklehorse "It's A Wonderful Life"

Brian Eno "Before And After Science"

The Morning Benders "Big Echo"

Pink Floyd "The Final Cut"

中島みゆき "寒水魚"

凛として時雨 "Just A Moment"


新譜は1枚もありませんね。

どれも自分にとって、春の空気感を感じながら聴くのが、そのアルバムの良さを最大限に味わうことができるアルバムばかりです。

もちろん好きなアルバムばかり。

最後の凛として時雨は、その春の気分に浸ったモードを思いっきりリセットするために聴いたので、それだけ異色ですが^ ^


やはりSparklehorseは自分にとってかけがえのないミュージシャン。相変わらず心に沁みまくります。

彼のアルバムを聴くと、自分の一部が溶け出して液体化するような気がします。

ブログタイトルの「ノスタルジックなノイズたち」は、彼の音楽もイメージしてます。


Enoのこの時期のアルバムは、本当に素晴らしいポップアルバム。

誰にも創ることはできません。彼の天才を感じます。

次回レビューでご紹介する予定。


The Morning Benders もたまりません。これもノスタルジックなノイズな一枚。


Pink Floyd "The Final Cut"は、フロイドファン、特にギルモアのファンには非常に不評なアルバムですが、自分はピンクフロイドの中で圧倒的に好きなアルバム。ウォーターズのリリシズムが爆発して、まるでSparklehorseのように沁み込みます。


意外ですかね、中島みゆき。普段は歌詞を気にしない自分ですが、彼女の歌詞はリアルでセンシティブで仕掛けにあふれていて感心します。メロディやアレンジや歌唱のバランスも素晴らしい。


これだけ好きな音楽に浸ると、明日はまた仕事だけどまあいっか、という達観した気持ちになるから不思議。


さすが、音楽。


USインディなんですが、とてもブリティッシュな雰囲気の彼ら。

ジョージア州アセンズ出身の Dead Confederate 。

デビューアルバムでは重量級かつ泣きのロックを見せてくれました。
これはこれでけっこう好きなアルバムなんですよね。
ほんとに自分たちのやりたいことやってる感じです。
ある種、すごいアルバムと言えます。
このご紹介はまたの機会に。

Dead Confederate のセカンドアルバム "Sugar"
$ノスタルジックなノイズたち

彼らの基本は一言で言うと、エグいロック、ですね。
時々、下世話ギリギリの線まで行きかねない。

でもセカンドアルバムでは、曲ごとのサウンド・コンセプトがはっきりして、曲創りやアレンジも洗練され、ファーストに比べて、明らかに音楽の幅と表現の選択肢が広がりました。

その分、ファーストで見られた、自分たちのやりたいことをやるという強い軸足感は薄れてしまいましたが、バリエーション感は豊富。
同じミュージシャンが創った曲なのか、という気持ちにさせられるほど。

しかしいくらなろうとしても、スマートなUSインディ一派にはなりきれない。
でも、不思議と心に引っかかるんですよね。
メロディーもキャッチーだし。
もうちょっとメジャーな存在でいてもいいんじゃないかと。







他にも、Jマスキスが参加したキャッチーな曲などもありますが、USインディっぽい明るめで軽快な曲には彼らの本領がないと思っています。
本当は自分たちのやりたいファーストの世界を突き詰めたいが、セールス面からレーベルがそれを許してくれないのでは、と想像してます。

しかし、Depreciation Guild とか、Dead Confederate とか、日本人になじみにくい単語をグループ名に使うのは勘弁してほしいものです。

憶えにくくて。

ロッキングオンの最新号。


レディオヘッドの巻頭特集。


やはり、この号の校了の前日がダウンロード開始日だったそうで、いや、なんとも編集冥利に尽きる程のギリギリ進行スケジュールだったでしょうね。

完徹2日は必要だったのではないでしょうか。


そんな特集号なので、やはり敬意を表して買うことにしました。


で、読んでいるわけですが。


レディオヘッドの特集は後回し、というかやはり最後にとっておきたい。

好きなもの、一番目当てのものは最後に食べる派だもので。

特に寿司とかね。トロとウニは最後ですから。


面白かったのが、ブラッドフォード・コックス(Deerhunter) と Ariel Pink の対談。


ともに、昨年リリースされたアルバムが絶賛された人たちですね。

自分は、この2枚のアルバムへの評価が高くなかったので、ちょっと微妙な気持ちですが。


この記事、読み物としてはとても良かった。


しかし。


気になった発言がふたつ。


コックス

「Deerhunter は、ほとんど僕の音じゃない。僕はまったくコントロールしてないし、僕の意見を全面的に通してるのは、ビジュアルと歌詞だけ」


ふーん、そうだったんだ。

かなり意外。

でも、なぜAtlas Sound ってソロプロジェクトが別にあるのかの意味はわかりました。


コックス

「アーケイド・ファイアなんて僕はなんにも感じないし、特になんの接点も見いだせない」

「アーケイド・ファイア?このアルバムでほんとにいい曲があったら、ちゃんとそう言ってるよ。でも・・・だろ?」

「MGMTの新作とかめちゃくちゃよかった」

アリエル

「あれ、すごいアルバムだったよね」


ふーん、そうなんだ。

やっぱりこいつらのアルバムを評価できないはずだ。

感性の方向性が合わないわ。


そういえば、リアムがレディオヘッドのニューアルバムと、レディオヘッドファンのことをこき下ろしてますね。


昔からリアムのことは、ミュージシャンとしてだけでなく、人間としても好きになれなかったですが、やはり、ね。

悪ぶってメチャクチャするのがカッコイイといつまでも思ってるガキなのかもしれない。


どうやら自分は、アーケイド・ファイアとレディオヘッドを絶対的に評価するという、軸足の上に完全に乗っているようです。


音楽は、特にロックは、本来プライベートなものですよね。

音楽は、ミュージシャンその人そのものなので、歌詞も、メロディも、音も、サウンドスケープも、ミュージシャンの価値観がそのまま出てくる、圧倒的にプライベートな存在であるはず。

それを売るための音楽として、売ることしか興味のない人たちが制作の主導権を握るから、中身のないやっかいなものになるんですが。

いろんなロックを聴いてきましたが、ネットやブログで聴いた時に、お、これいいじゃん、とすぐに反応する音楽には、ある傾向があることに気が付きました。

ミュージシャン自身の音像感覚がそのまま出た音楽、です。

サウンドスケープよりももうちょっと広義な感覚。
言い方変えると、オリジナリティのある音世界、という感じでしょうか。
それが、自分にビンビンと響きます。

鋼のような強さでも、春風のようなさわやかさでも、雲のような浮遊感でもいいんですが、一聴した瞬間にそのミュージシャンの世界観に引きずり込まれるような音楽。

個性的な音の雰囲気を持つ音楽ですね。

2010年のベストアルバムに選んだアルバムたちも、例外なくそれを持ってます。

逆に言うと、ギター一本もって歌のよさで勝負、とか、ロックンロールバンドとしての完成度がウリ、のような方向性は、なかなかその世界に入れないことが多いですね。
何度も聴いて行って、曲になじんでから、実はすごく良かったんだ、ということで好きになることが多いです、そういうタイプは。

で、今回のテーマの個性的なタイプですが。

ご紹介するのは、 Papercuts
$ノスタルジックなノイズたち

USサンフランシスコが拠点の Jason Quever のソロプロジェクトです。
3枚目のアルバム、 "You Can Have What You Want"

春のもやのなかで漂うような、独特の浮遊感が特徴です。
好きな人はたまらない感覚だけど、入れない人は苦手な世界かも。
そういう意味で、相当にプライベートなロックだと思います。

空気の中に春の香りがし始めた週末の1日、やや強くなり始めた日差しを眺めながらぼーっとして聴いてました。








催眠作用が強めですね。
聴いているといつの間にか寝てしまっている確率高し。

仕事など、したくなくなる系のロック。
そういう意味でも、土日の昼間などに聴くと、自分的には素晴らしい気分転換。

でも、自分が好きな個性的な音像を持つロックって、決してセールス的には恵まれてるとは言えないものが多いような。

まあ、明らかに王道ではありませんけどね。。