嵐の詩 | 右岸だより

右岸だより

 歳を取り、ヒマになりなり、昔やりたかったことを手掛けようと思っていますが、思うようにできません。そんな中で出来ることを探したり、出来るように工夫したりしてもがいている毎日を綴ってみたいと思っています。

嵐の詩 野口赫宙 講談社

 日本語でも書く朝鮮作家だそうだ。占領時代に教育を受けたためだ。本書は彼の自伝だ。複雑な家庭と学制の変化で多様な教育を受けた。儒学に始まり、朝鮮民族教育、そして日本の教育さらにはキリスト教の系の学校にも学んだ。その中で見事に優等生を通し、最後は日本の教育に組み込まれていった。日本の文学賞を受け、日本の作家として活躍した。

 日朝関係を我々にはない視点で見せてくれる。彼らから見ると日本に文明をもたらしたという意識が強い。にもかかわらず日本は粗暴、独善的で恩知らずさと言うことになる。倭寇に恐れおののき、占領に遭った歴史を知れば無理もない。そんな過去が現代政治に利用されるのは残念だけど、忘れろと言うのにも無理がある。現代の日韓・日朝関係を考える時、忘れてはならない視点だ。