「地頭」の鍛錬が静かなブームとなっている。
古くは百マス計算に始まるいわゆる"脳トレ”ブームはニンテンドーDSによって爆発的に人口に膾炙するところとなったのは記憶に新しい。
昨年ごろから「地頭本」が売れ始めている。クイズを解いてみなさん地頭を鍛えましょう!という趣旨の類の本だ。
■地頭ブームの発端は外資系企業?
さらにさかのぼれば、90年代後半以降、Microsoft、Mckinseyといった外資系企業、それも当時学生ランキングの上位にあった人気企業が挙って面接試験で難問奇問を出し、それがベストセラーになったこともある。
代表的な例としては
「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」
「富士山を動かすのには何年くらいかかるか」
「日本に蚊は何匹くらいいるだろうか」
といったような問題があり、このような問題をフェルミ推定と呼ぶ。
フェルミ推定とは、情報が少なく把握するのが難しい問題を、その少ない情報から仮説を立て、それを組み合わせ、ある一定時間(短時間)に回答(数値)を求める問題解決の考え方。
当時、大企業の人事担当者や戦略コンサルティング企業を受ける学生がこぞって猫も杓子もこの流れに遅れまいと躍起になっていたのもあり、そういった人たちには今さら感があるのだろうが、一般の人々まで浸透し始めたのは案外最近なのかもしれない。
また、民間企業の就職試験以外のケースでいえば、ロースクール入試の適性試験の論理問題を解くために、野矢先生のテキストでトレーニングした方も多いkかもしれない。
恒例の勝間先生も時代の流れに遅れまいと、「ビジネス頭を創る100の難問」という監修本を出版された。
■あなたはGoogleの面接試験問題が解けますか
勝間本の中から1問紹介すると、Googleの面接試験の問題で以下のような問題が出たそうです。ぜひチャレンジしてみてください。
100枚の金貨を手に入れた海賊が、5人で分けようとしています。
そこで、最年長者から順に分配方法を提案することになりました。
提案に対して全員が投票し、賛成票が半数以上入れば、その提案どおりに分配されます。
賛成が半数に満たなかったら、提案者は殺されます。
誰かの案が採用されるまで、この手順を繰り返します。
5人とも優秀な頭脳と強欲さを併せ持つ人物で、何としても生き残りたいと思っています。
最年長者はどんな提案をするでしょう?
<以下、回答>※反転させてください。
年長順、つまり提案順からA,B,C,D,Eとします。
バックワードインダクション、つまり最後の状況から順番に考えていくという手法を用います。
1)A,B,C,Dが死んでいる場合
Eは総取り
→E:100枚
2)A,B,Cが死んでいる場合
Dが総取り
→D:100枚、E:0枚
3)A,Bが死んでいる場合
Cは「自分は99枚を取り、Eに1枚渡す」と提案する。それにEは賛成せざるを得ない。
なぜならEはCの提案に反対するとケース2)のようにDに全て取られるから。
→C:99枚、D:0枚(Cに反対)、E:1枚(Cに賛成)
4)Aが死んでいる場合
自分以外にもう1人賛同者を得れば、提案は認められる。どの海賊に分け前を与えれば、与える量が最小ですむか、という点。賛同者となりうるのはD。なぜなら、Bの提案に反対して、海賊が3人になると、ケース3)のように自分は何ももらえなくなってしまうから。
→B:99枚、C:0枚(Bに反対)、D:1枚(Bに賛成)、E:0枚(Bに反対)
5)Aが存命で提案する場合(当問題)
Aは他に2人の賛同者を得ればいいので、「自分の取り分が98枚、Cに1枚、Eに1枚を渡す。」と提案する。C,EはAの提案に賛同せざるを得ない。なぜなら、反対してAが殺され、Bの順番になったらケース4)のようにC、Eは1枚ももらえなくなってしまうから。
→A:98枚、B:0枚(反対)、C:1枚(賛成)、D:0枚(反対)、E:1枚(賛成)
友人に聞いてみたところでは、4人の回答者のうち2人が正解でした。
(ちなみに小生は解けませんでした。「3人の賛成が必要なんだから、普通に100枚を3人で山分けすりゃいいでしょ、常識的に考えて」と思ってしまいました。)
ちなみに類題では東大生の正解率は9%だったそうなので、これが正解できた方は自慢してもいいかもしれません。(誰に?)
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/entrance/1194750110/
■頭の体操に終わらない地頭鍛錬とは
地頭ブームを見るにつけ思うのが、これが実際にビジネスにどのように役立てることができるのか、ということ。
実生活に直結する例で言えば、冒頭の外資系企業への就職活動に若干役立つということかもしれないが、単なる頭の体操のお遊びになってしまうのでは、というような気もしています。
無理やりアナロジーとして考えてみると、例えばこの海賊の例で言えば、外交政策でのパワーポリティクスに援用されるような考え方につながるかもしれません。
今回のクイズの正解では、A,B,C,D,Eという5人は、隣同士が反駁しあい、敵の敵に賛成票を投じることになります。これは外交政策でいうところの「敵の敵は味方」「遠交近攻」という定石につながっていくのかもしれません。
あまり外交戦略論には詳しくありませんが、こういった権謀術数的な議論は中国の春秋時代やマキャベリズムの時代に隆盛していたものと思われますが、外交センスに元来疎いといわれる日本人にはこのクイズは不得意にあたるのかもしれません。
ただし、この海賊のクイズでは論点をシンプルにするためにいくつかの前提があります。
前提1:各提案は自分だけの利益を考慮し、談合は行わないこと。
例えば、各海賊が裏で協力したり(要は談合)ということがないという前提であること。協力がないとAがほぼ総取りになってしまうのであれば、B,C,D,EがAに反対するというカルテルαを結んだ上で、Aを殺した上で、4人で山分けしようという考えになるだろう。しかし、ここでC,D,EがBのいないところで悪だくみをして、「4人よりも3人で分けたほうが分け前が多くなるから、Bの提案に反対して3人で分け前を得よう」というカルテルβを結ぶ、ということもあるだろう。
前提2:各人の提案の確実な履行が担保されること。
もうひとつの前提は、各人の決定権というものが担保され、提案が反対されない限りは殺されないという前提がある点だろう。
実際には、「そんな小難しいこというやつは殺してしまえ!」ということもあるかもしれません。
前提3:各人が自らにとって最善な選択について正確な判断を下せること。
そして忘れてはいけないのが、クイズに答えるという意味ではいささか屁理屈になるが、海賊の5人全員が非常に聡明で、判断ミスを犯さないという点だ。大金を目の前にして、提案が反対されれば殺されてしまうというこの切羽詰った状況で、これだけ賢く選択肢を吟味できるというのはほぼ不可能といってもいいだろう。
実際、振り込め詐欺では取り分の多寡でもめてトラブルになり、傷害・殺人に及んだケースや、内部通報になったケースもあると聞く。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/e/06/index1.html
現実は哀しくもこんなものかもしれない。(これはこれで囚人のジレンマとかパレート最適な結果だったりして。)
もっと身近な例で考えてみると、例えば社内で大きなプロジェクトを達成したとして、その成果を上司(成果配分の権限がある)が横取りしそうなときに、平社員の自分としてどのように立ち回れば一番上手く報酬を得られるか、というあたりか。
そんな戦略的な社員、ちょっといやだ。
古くは百マス計算に始まるいわゆる"脳トレ”ブームはニンテンドーDSによって爆発的に人口に膾炙するところとなったのは記憶に新しい。
昨年ごろから「地頭本」が売れ始めている。クイズを解いてみなさん地頭を鍛えましょう!という趣旨の類の本だ。
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地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」
細谷 功 東洋経済新報社 2007-12-07 by G-Tools |
■地頭ブームの発端は外資系企業?
さらにさかのぼれば、90年代後半以降、Microsoft、Mckinseyといった外資系企業、それも当時学生ランキングの上位にあった人気企業が挙って面接試験で難問奇問を出し、それがベストセラーになったこともある。
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ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?
William Poundstore 松浦 俊輔 青土社 2003-06 by G-Tools |
代表的な例としては
「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」
「富士山を動かすのには何年くらいかかるか」
「日本に蚊は何匹くらいいるだろうか」
といったような問題があり、このような問題をフェルミ推定と呼ぶ。
フェルミ推定とは、情報が少なく把握するのが難しい問題を、その少ない情報から仮説を立て、それを組み合わせ、ある一定時間(短時間)に回答(数値)を求める問題解決の考え方。
当時、大企業の人事担当者や戦略コンサルティング企業を受ける学生がこぞって猫も杓子もこの流れに遅れまいと躍起になっていたのもあり、そういった人たちには今さら感があるのだろうが、一般の人々まで浸透し始めたのは案外最近なのかもしれない。
また、民間企業の就職試験以外のケースでいえば、ロースクール入試の適性試験の論理問題を解くために、野矢先生のテキストでトレーニングした方も多いkかもしれない。
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論理トレーニング101題
野矢 茂樹 産業図書 2001-05 by G-Tools |
恒例の勝間先生も時代の流れに遅れまいと、「ビジネス頭を創る100の難問」という監修本を出版された。
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ブレイン・ティーザー ビジネス頭を創る100の難問
勝間 和代 花塚 恵 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2008-10-17 by G-Tools |
■あなたはGoogleの面接試験問題が解けますか
勝間本の中から1問紹介すると、Googleの面接試験の問題で以下のような問題が出たそうです。ぜひチャレンジしてみてください。
100枚の金貨を手に入れた海賊が、5人で分けようとしています。
そこで、最年長者から順に分配方法を提案することになりました。
提案に対して全員が投票し、賛成票が半数以上入れば、その提案どおりに分配されます。
賛成が半数に満たなかったら、提案者は殺されます。
誰かの案が採用されるまで、この手順を繰り返します。
5人とも優秀な頭脳と強欲さを併せ持つ人物で、何としても生き残りたいと思っています。
最年長者はどんな提案をするでしょう?
<以下、回答>※反転させてください。
年長順、つまり提案順からA,B,C,D,Eとします。
バックワードインダクション、つまり最後の状況から順番に考えていくという手法を用います。
1)A,B,C,Dが死んでいる場合
Eは総取り
→E:100枚
2)A,B,Cが死んでいる場合
Dが総取り
→D:100枚、E:0枚
3)A,Bが死んでいる場合
Cは「自分は99枚を取り、Eに1枚渡す」と提案する。それにEは賛成せざるを得ない。
なぜならEはCの提案に反対するとケース2)のようにDに全て取られるから。
→C:99枚、D:0枚(Cに反対)、E:1枚(Cに賛成)
4)Aが死んでいる場合
自分以外にもう1人賛同者を得れば、提案は認められる。どの海賊に分け前を与えれば、与える量が最小ですむか、という点。賛同者となりうるのはD。なぜなら、Bの提案に反対して、海賊が3人になると、ケース3)のように自分は何ももらえなくなってしまうから。
→B:99枚、C:0枚(Bに反対)、D:1枚(Bに賛成)、E:0枚(Bに反対)
5)Aが存命で提案する場合(当問題)
Aは他に2人の賛同者を得ればいいので、「自分の取り分が98枚、Cに1枚、Eに1枚を渡す。」と提案する。C,EはAの提案に賛同せざるを得ない。なぜなら、反対してAが殺され、Bの順番になったらケース4)のようにC、Eは1枚ももらえなくなってしまうから。
→A:98枚、B:0枚(反対)、C:1枚(賛成)、D:0枚(反対)、E:1枚(賛成)
友人に聞いてみたところでは、4人の回答者のうち2人が正解でした。
(ちなみに小生は解けませんでした。「3人の賛成が必要なんだから、普通に100枚を3人で山分けすりゃいいでしょ、常識的に考えて」と思ってしまいました。)
ちなみに類題では東大生の正解率は9%だったそうなので、これが正解できた方は自慢してもいいかもしれません。(誰に?)
http://love6.2ch.net/test/read.cgi/entrance/1194750110/
■頭の体操に終わらない地頭鍛錬とは
地頭ブームを見るにつけ思うのが、これが実際にビジネスにどのように役立てることができるのか、ということ。
実生活に直結する例で言えば、冒頭の外資系企業への就職活動に若干役立つということかもしれないが、単なる頭の体操のお遊びになってしまうのでは、というような気もしています。
無理やりアナロジーとして考えてみると、例えばこの海賊の例で言えば、外交政策でのパワーポリティクスに援用されるような考え方につながるかもしれません。
今回のクイズの正解では、A,B,C,D,Eという5人は、隣同士が反駁しあい、敵の敵に賛成票を投じることになります。これは外交政策でいうところの「敵の敵は味方」「遠交近攻」という定石につながっていくのかもしれません。
あまり外交戦略論には詳しくありませんが、こういった権謀術数的な議論は中国の春秋時代やマキャベリズムの時代に隆盛していたものと思われますが、外交センスに元来疎いといわれる日本人にはこのクイズは不得意にあたるのかもしれません。
ただし、この海賊のクイズでは論点をシンプルにするためにいくつかの前提があります。
前提1:各提案は自分だけの利益を考慮し、談合は行わないこと。
例えば、各海賊が裏で協力したり(要は談合)ということがないという前提であること。協力がないとAがほぼ総取りになってしまうのであれば、B,C,D,EがAに反対するというカルテルαを結んだ上で、Aを殺した上で、4人で山分けしようという考えになるだろう。しかし、ここでC,D,EがBのいないところで悪だくみをして、「4人よりも3人で分けたほうが分け前が多くなるから、Bの提案に反対して3人で分け前を得よう」というカルテルβを結ぶ、ということもあるだろう。
前提2:各人の提案の確実な履行が担保されること。
もうひとつの前提は、各人の決定権というものが担保され、提案が反対されない限りは殺されないという前提がある点だろう。
実際には、「そんな小難しいこというやつは殺してしまえ!」ということもあるかもしれません。
前提3:各人が自らにとって最善な選択について正確な判断を下せること。
そして忘れてはいけないのが、クイズに答えるという意味ではいささか屁理屈になるが、海賊の5人全員が非常に聡明で、判断ミスを犯さないという点だ。大金を目の前にして、提案が反対されれば殺されてしまうというこの切羽詰った状況で、これだけ賢く選択肢を吟味できるというのはほぼ不可能といってもいいだろう。
実際、振り込め詐欺では取り分の多寡でもめてトラブルになり、傷害・殺人に及んだケースや、内部通報になったケースもあると聞く。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/e/06/index1.html
現実は哀しくもこんなものかもしれない。(これはこれで囚人のジレンマとかパレート最適な結果だったりして。)
もっと身近な例で考えてみると、例えば社内で大きなプロジェクトを達成したとして、その成果を上司(成果配分の権限がある)が横取りしそうなときに、平社員の自分としてどのように立ち回れば一番上手く報酬を得られるか、というあたりか。
そんな戦略的な社員、ちょっといやだ。



