ある田舎の片隅に、ひとりの少女がいました。


彼女は気立てのよい女の子で、幼いなりに周りを気遣ってか、小学生の頃までは、いわゆる「いい子」を演じてきました。

しかし、反抗期を迎えて「いい子」を演じ続けることに疲れたのか、中学生になると一気に振り子が逆に振れたように反動が来て、タバコは吸うわ、男を家に連れ込むわやりたい放題になります。

ただ、お勉強はまずまずの出来で、定期試験ではクラスで1,2番の成績を修め、地元で一番の高校に進学します。

しかし、遊びたい盛りの女の子にとって高校受験以降全く勉学への関心がなくなり、1ヶ月で不登校になります。

それ以降、焼肉屋で毎日15時間労働、月休3日、最低賃金以下の劣悪な労働環境で働いてみたり、スナックのお姉さんをやってみたり、もはや家族にも、彼女が家に戻ってきたのかさえ把握できない放蕩を続けます。

親は何をしていたかというと、最初はなんとか高校くらいは卒業させようと、定時制の高校に通わせたり、なんとか軌道を修正しようと試みます。


しかし、彼女の自由奔放に生きたいという意志は堅く、全く効果はありません。



17歳のことです。


彼女に転機が訪れます。


遠く遥か離れた北の大地に、恋人ができたのです。

彼女は昔でいうところの駆け落ちさながらに、身一つで飛行機に乗り込みます。


二人は同棲を始めました。

つつましい暮らしでしたが、二人は音楽の趣味も近く、彼女はR&Bやダンスミュージックについては周りからも一目置かれるほどの深い造詣を得るまでになり、クラブ通いのそれなりに楽しい暮らしでした。


それからは長い長い二人の同棲生活が続きます。

少女の兄が看護師になったということもあり、彼女の親は、彼女に看護学校に行くように勧めます。ニート状態だった彼女も久しぶりに受験勉強し、無事看護学校に合格、入学します。




かし、ここで二人の仲に暗雲が立ち込めてきます。


彼氏が浮気をしたり、彼女にも新しく気になる男性ができたりと二人の間に溝が生じ始め、ついに彼女は姿をくらましてしまいます。音信不通、行方不明となり、警察沙汰にまで発展してしまいます。


そのとき、彼女は看護学校で戴帽式を目前に控えていました。

戴帽式とは、看護師を目指す学生たちが、初めての病院実習に臨む直前に、教員が、学生一人一人にナースキャップを与え、看護師を目指すものとしての職業に対する意識を高め、またその責任の重さを自覚させるための一大儀式です。


しかし、その行方不明騒動もあり、彼女がナースキャップをかぶることはありませんでした。

彼女の母親は、娘のナース姿を見るのをとても楽しみにしていましたが、それが叶うことはありませんでした。


この騒動のときには、彼女の父親と彼氏とが一緒に捜索に走ります。いわゆる「義両親へのご挨拶」はなんとも異色のシチュエーションで実現することとなってしまいます。


結局、二人は初心に立ち返り、元鞘に戻ることになります。



駆け落ちから4年。騒動も落ち着いたところで、彼女の実家に二人が遊びに来ます。


彼女の両親は「もしかしたら」とそわそわし始めますが、両親の心配をよそに当事者二人は全くそんな装いも見せず、肩透かしをくらってしまいます。




は2008年。


身一つで北の大地の彼のもとへと飛び込んでから、もう4年と8ヶ月が過ぎました。

少女の長い長い波乱万丈な人生も、ひとつのピリオドを迎えることになります。



天啓というのか、コウノトリからのGiftが二人にShotgun Marriageという決意を促したのです。



彼女いわく、「つくろーか婚」というあくまで自発的・確信犯的な計画に基づくものであるようですが。







そうして、僕は、来春、おじさんになります。


親になるのは自覚的なことですが、おじさんになるのは無自覚でした。



おめでとう、今日子。