経済産業委員会の概要【「コントロール神話」に陥るな】 | たまき雄一郎ブログ

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衆議院議員玉木雄一郎のオフィシャルブログです。

10月30日に行われた衆議院経済産業委員会でのやり取りの概要をまとめました。主に以下の4つの課題について質問しています。少々長くなりますが、ご一読いただければ幸いです。


特に、2.の「汚染水の発生経路」に関して、海に流れ込んでいる地下水の挙動について東電が把握しきれていないこと、つまり、汚染水発生のメカニズムについて把握できていないことを、廣瀬社長がはじめて公式に認めています。実は、これは重大な問題です。


問題の真の原因が分からないのに、有効な対策は打てないはずです。その意味で、「コントロールされている」などと言える状況ではないことが明らかになったと思います。「安全神話」と同じような「コントロール神話」に陥ってはならないと思います。謙虚に現実に向き合うべきです。


<質問項目>

1.IOC総会における総理発言と原子力規制委員会の独立性について

2.汚染水の発生経路について

3.海洋モニタリングの改善・強化について

4.汚染水・廃炉スキームの見直しについて


【IOC総会における総理発言と原子力規制委員会の独立性について】


○玉木委員 IOC総会での総理の一連の発言について、田中(原子力規制委員会)委員長は、9月30日の閉会中審査で「コントロールできているかどうかを科学的に定義することは困難である」とおっしゃっていますが、先般の10月23日の参議院予算委員会では「環境への影響はきちんとコントロールされている」といった趣旨の御発言をしています。田中委員長は現状についてどう認識しているのか。コントロールされているのかどうなのか、改めて御認識を伺います。


○田中原子力規制委員長 厳密な意味で、科学的に、定量的にどこまでをコントロールされているかどうかを申し上げるのは大変困難であるということをまず申し上げた。他方、汚染水の影響ですけれども、港湾外部への放射性物質についてそれほど有意な影響は出ていない。総理は、大局的な観点から、そういうことを踏まえてコントロールされていると表現したと理解しているが、規制委員会としては、引き続き、東京電力の状況については監視を続けていきたいと思っております。


○玉木委員 もう一度伺いますが、規制委員会としては、コントロールされていると認識しているのかいないのか、明確にお答えいただけますか。


○田中原子力規制委員長 外への影響がきちっと抑制されているということが最も大事なことだと私は理解していますので、そういった点では、今抑制はきちっとされていると思っています。


○玉木委員 影響がコントロール、抑制されている、ちょっと違う言葉を使われたので、正確におっしゃっていただきたいんですが。


○田中原子力規制委員長 言葉の定義を定量的にお話し申し上げるというのは、今こういう状況の中では困難だと思っていますけれども、抑制されている、環境への影響を出さないようにするということが、今、福島第一のこういった状況の中、廃止措置を進める中では最も大事なことだと思っていますので、そういう意味ではコントロールされている、抑制されているというふうに申し上げた次第です。


○玉木委員 揚げ足をとるつもりはないんですが、定量的な分析は今は困難だとおっしゃいました。しかし、定量的に、科学的データに基づいて情報を発信していかれるのが田中委員長のお仕事ではありませんか。


○田中原子力規制委員長 もちろん、定量的にさまざまな海水濃度も、それから海洋資源についても測定して、さまざまな機関が測定しているのを私どもは集約して、評価しています。そういう測定をした場合には、どこに原因があるのかというのは、そのよって来るところまで明確にするというのはなかなか難しいというところがあります。ただし、現在の基準から照らしてみると、そういったものは十分に低い値になっているし、ほとんどの場合はそれでも検出できないレベルであるというふうに認識しています。


○玉木委員 委員長は独立した機関の長として、モニタリングした海水のデータが基準値以下であるということは言っていいと思うんです。ただ、そのことに「きちっとコントロールできている」というある種の評価を加えることは、やるべきではないと思います。今回の事故の一つの教訓は、これは国会事故調でも取り上げられていますけれども、規制する側とされる側との間のある種の密着した関係が事故の原因ではないかというふうに指摘をされた経緯もあるわけであります。そういった中で、今の組織ができたことを考えれば、客観的な、まさに科学者としての知見に基づくものはどんどん出すべきだと思いますが、政治家なり行政の中から発せられる言葉を追認するような発言を、規制委員会としては絶対やってはいけないと思いますが、いかがですか。


○田中原子力規制委員長 私どもから公式に発表しているところでは、コントロールしているとか抑制されているというような表現はなしに、客観的なデータを国際的にも発信させていただいております。今、コントロールされているという総理の発言をどう思うかというお問い合わせがあったので、そういうふうにお答えしたものでございます。


○玉木委員 最初に申し上げたように、9月30日の委員長の発言は慎重な言いぶりで、よかったと思います。しかし、先般の参議院予算委員会でのお答えについては、まさにそこを逸脱して「きちっとコントロールされている」、「基本的にはコントロールされていると思いますが」というふうに、おっしゃっています。こういったことは、慎むべきではないかと思いますが、いかがですか。


○田中原子力規制委員長 御指摘はそのまま受けとめて、今後とも気をつけていきたいと思います。



【汚染水の発生経路について】


○玉木委員 8月の原子力災害対策本部後の記者会見で、資源エネルギー庁のある幹部の方が、一日当たり約300トンもの汚染水が海に流れ込んでいるという発言をしています。東京電力の廣瀬社長に伺います。そもそもこの事実関係はどうなっているのか。また、汚染源に触れて海に流れ込んでいる汚染水の現状、あるいはそもそも地下水の挙動についての最新の試算について教えていただけますか。


○廣瀬参考人 もともとは400、海側のところで流れているのではないかというモデルからスタートしております。その400トンが、先生おっしゃるように、どれほど汚れているのかということについてはわかっておりません。


○玉木委員 ということは、(資源エネルギー庁幹部の発言にある)300トンの汚染水が海に流れ込んでいるということは、東京電力の何か試算結果に基づいて発表されたものではないということですか。


○廣瀬参考人 私ども、今、水ガラスというもので、その400トンを余り外に出さないようにというのをやっています。そこの手前で水を抜いておりますので、その水を抜く量が、数10トンから100トンぐらいを抜いておりますので、残りが300トンという数字はございますが、それが全て汚染されているかどうかということについてはわかっておりません。(玉木委員「わかっていないのですか」と呼ぶ)わかっておりません。


○玉木委員 つまり、最も大量に汚染水が発生しているかもしれない(発生)経路について、今現在もまだ全くわかっていない。そもそもの汚染水が発生するメカニズム、そのもとになる地下水の挙動、こういったことについて東京電力さえ把握していない中で、ブロックしているとかコントロールされていると言うのは、私はやはり言い過ぎだと思います。単に、はかったら海の水から結果として基準より上のものは出てきませんというだけであって、それは単にラッキーなだけかもしれません。そこで、国が前面に出て、東電とも協力してやるべきなのは、こうした汚染水が発生するそもそものメカニズム、その根っこをきちんと抑えていくことではないか。これをやらない限りは、茂木大臣がおっしゃったモグラたたきがいつまでも続いてしまう。


○茂木国務大臣 東電のシミュレーション解析の精査を行っているところであります。専門家によります検討を始めているほか、必要に応じて現地調査等も行う予定でありまして、地下水の流入量等についてより正確な共通認識を得た上で、今後の予防的、重層的対策にも生かしていきたいと考えております。


○玉木委員 一つ問題を指摘したいのは、一番左に書いています地下水バイパス、これがそもそも地下水の流入を抑えるためのいわば第一の防御壁です。これが3月に完成しています。しかし、稼働のめどが全く立っていません。政府の掲げる緊急対策の一つとして行う措置として導入されたにもかかわらず、地下水バイパスが機能していません。いつまでたっても稼働のめどが立たないのであれば、そろそろ代替策を考えていかなければいけないと思う。この地下水バイパスの稼働のめど、あるいは、動かないのであれば代替措置が必要ではないかと思うんですけれども、廣瀬社長、いかがでしょうか。


○廣瀬参考人 先生御指摘のとおり、地下水バイパスはもう随分前にでき上がっておりまして、設備的にはいつでも稼働できる状態になっておりますが、その後、私どもがいろいろ御心配をおかけするような事象を相次いで起こしてしまって、漁業関係者の方々に、とりわけ風評被害について御心配を惹起してしまっておるというところで、大変申しわけなく思っております。今、国も入っていただいて、一緒に御説明する機会などをたくさん頂戴しておりますので、丁寧な説明をこれからもして、ぜひ漁業関係者の皆さんの御理解を得たいというふうに思っているところでございます。もちろん、それ以外にも、サブドレーンの水抜きであるとかそうしたようなことで、一日400トン入ってくる水をまずは抑えるという対策は重層的にやっていかなければいけないというふうに考えております。


○玉木委員 もっと真剣に、深刻に考えていただきたいと思います。緊急措置としてやると位置づけられていて、装置ができているのに稼働のめどが立っていないということであれば、やはりその代替策を考えるべきではないかと私は思います。



【海洋モニタリングの改善・強化について】


○玉木委員 次にモニタリングについて一点質問をしたいと思います。先般の予算委員会で、福島第一原発から20キロ圏内については事故当事者である東電だけがはかっており信頼性に疑義が生じるので、国が前面に出て、規制庁もモニタリングをして、データの信頼性を高めるべきだと指摘しました。それに加えて、モニタリングの手法についても少し工夫をしていただきたいと思いますが、特に近い海域には「連続モニタリング装置」というものをぜひ入れていただきたい。これは、ドイツやフランスの河川や海岸線には設置されていて、これが入ると24時間365日データがとれます。2時間おくれのタイムラグだと思いますが、ほぼリアルタイムで時間的な連続性の中できちんとデータをとることができる。連続モニタリング装置が導入されれば、例えば、雨が降ったら、ではとりにいきましょう、それでととったら、もうそのときは希釈されて基準以下になっている、こういう疑いが晴れるので、国が、規制庁が前面に出て、近い海域でのモニタリングについては連続モニタリング装置を入れて強化すべきだと思いますが、田中委員長どうですか。


○田中原子力規制委員長 これまでも、発電所の排水溝の近くでは連続モニタリングというのをずっとやっていますので、そういった技術がございますので、それを拡大する形で、今御指摘のようなことで、もう少しモニタリングの体制を強化していきたいと考えております。


○玉木委員 ぜひここは積極的にやっていただきたいと思います。



【汚染水・廃炉対策スキームの見直しについて】


○玉木委員 最後に、現在の汚染水処理を含む事故対策、そして廃炉についての基本的な枠組みの見直し、つまり、東電と国との役割分担をいま一度見直してみるべきだと思います。自民党の方からも組織の分割案等々が出てきているというふうに伺っていますが、組織論の前に、まず公平な費用負担をステークホルダー(利害関係者)間でどうするのか、ここを決めないと、組織論も最後で行き詰まってしまいます。


そこで、参考資料につけていますが、これはスリーマイルアイランドの事故の際の、ソーンバーグさんというペンシルベニア州の州知事さんが政治的リーダーシップで出した費用負担の案です。連邦政府が4分の1、原子力の関係事業者が4分の1、事故を起こした当事者であるGPUが32%等々、こういったことを決めて、政治的リーダーシップで解決を図っていきました。その際に大切なのは、なぜ国が関与するのかの基本理念をしっかり固めることです。そうじゃないと、例えば除染でお金が足りないから出しましょうということでは、なし崩し的な国費の投入につながります。


なぜ国家関与が必要なのか、例えば、廃炉技術の蓄積が、これは国益にかなうんだ、世界の利益にも貢献するんだ、こういった国家関与の哲学を明確にした上で費用分担の案をつくり、そして必要であれば組織論に入っていく。この検討の順序を間違ってはおかしなことになるので、そういったことも踏まえて、根本的な原子力賠償機構法の見直し、原賠法の見直し、そういった根っこの制度の見直しをぜひ行っていただきたい。このことを申し上げ質問を終わります