たまき雄一郎ブログ

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衆議院議員玉木雄一郎のオフィシャルブログです。

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今国会3回目となる衆議院憲法審査会が開催されました。先週の議論を受ける形で、緊急事態条項の条文案づくりに入ることを提案しました。現行憲法が定める参議院の緊急集会の権能についても議論を深めました。

 

今後も緻密な議論を積み上げながら、憲法改正の議論をリードしていきます。

 

衆議院インターネット中継より

憲法審査会発言要旨(2023年3月16日)

言い放しを避けるため、議論を積み重ねてきた緊急事態条項についてテーマを絞って議論し、残された論点について意見を集約し、具体的な憲法改正の条文案づくりに入ることを提案したい。

 

同時に申し上げたいのは、緊急事態条項については、ぜひ、レッテル貼りではなく、当審査会でのこれまでの1年以上にわたる議論を踏まえた正確な情報発信を、議員各位や有識者・メディアにもお願いしたい。ちなみに、私たち国民民主党の基本的な考えは、「緊急事態条項が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、緊急事態を理由に、安易に権限の濫用などが発生しうる状況が放置されていることが危ない」ということである。つまり、私たちの目指す緊急事態条項は、「権力行使容易化条項」ではなく、「権力行使統制条項」としての緊急事態条項であることをあらためて強調しておきたい。
 

その上で、先週、新藤幹事から示された8つの論点について、前回、ある程度お答えしたと思うが、本日はさらに、①選挙困難事態の「議決要件」と②「緊急集会の位置付け」に2点について述べたい。
 

まず、「議決要件」について。
 

新藤幹事は、議決要件として「過半数」を提起されたので、新藤幹事に質問したい。まず、自民党の憲法改正4項目の条文イメージ案・たたき台素案では「各議院の出席議員の3分の2」となっているが、そもそも、この自民党の条文イメージ案を見直すつもりなのか、伺いたい。
 

その上で、我が党の意見を申し上げれば、選挙困難事案の国会承認は、新藤幹事のおっしゃる「衆参両院が通常の機能を発揮する中で決議するとなれば、大原則である過半数で足りる」との考えもとり得ないわけではないが、やはり、憲法に規定された原則4年、6年の任期の特例を認める以上、新藤幹事のおっしゃる「原則や現状を変更して特別な状態を作り出すとき」にあたるので、3分の2以上の議決を必要とするのが適当ではないか。
 

ただ、確かに3分の2を求めると、任期延長が認められにくくなり、国会機能の維持に支障をきたす可能性も否定できないのも事実である。仮に、過半数でよしとするのであれば、その場合は、要件適合性における裁判所の関与とセットで導入すべきと考える。
 

次に、緊急集会の位置付けについて。
 

国民民主党は、仮に、憲法54条2項の「緊急集会」が、任期満了時にも開けると解釈するにしても、それは、「一時的・暫定的、限定的なもの」だと考える。具体的には、最大70日、約2ヶ月を超えるような長期にわたる権限の行使は憲法上、想定されていないと考えるべきであるし、処理できる案件も内閣が示したものに限定され、権限行使にも一定の制限があるものと考える。学説でも、緊急集会では憲法改正発議や条約締結の承認はできないとされている。


そこで、尊敬する立憲民主党の篠原委員に伺いたい。篠原委員は、前回「緊急事態ぐらいは参議院に花を持たせるというのが我々衆議院の情け心じゃないかと思う。」と発言されたが、まず、緊急事態の話は、「花を持たせる」とか「情け心」といった情緒的な議論で判断すべきではないことを指摘しておきたい。緊急時という歴史的に見て正気を失いがちなときに、情緒に流された判断を避けるためにこそ、緊急事態条項が必要だというのが私たち国民民主党の考えである。その意味で、憲法54条2項の「緊急集会」が「どのような期間」「どのような案件」について対応できるのかを明確にした上で、足らざる部分を憲法改正によって補うべきであると考える。情緒ではなく、法的な緻密な議論を求めたい。


そこで、予算案についての考えを伺いたい。1953年3月18日に解散後、緊急集会が開かれた際、「暫定予算」を処理した例があるが、この時、あえて本予算の処理はしておらず「2ヶ月間の暫定予算」の処理としている。このことから考えても、やはり本予算の処理は緊急集会には馴染まないと考える。加えて、土井真一先生の解説書によれば、「内閣の経済政策をより良く実現するために必要な「補正予算」を成立させる必要だけでは、緊急の必要があるとは言えない」ともされている。こうした学説も踏まえると、やはり、緊急集会で予算案を処理できるにしても、それは「2ヶ月程度の暫定予算が限界」だと考える。


立憲民主党の中間報告によれば数年間は緊急集会で対応可能と考えていると思われるが、篠原委員は、緊急集会で本予算案の対応ができると考えるのか、しかも複数年にわたって対応できると考えているのか、その根拠とあわせて考えを伺いたい。


もう一点。前回、篠原委員は、「任期延長というものは、特別法で工夫して、改正して、さっさとやって、そして、後でまとめて一緒に憲法改正にしていった方が私はいいんじゃないかと思います。」と述べているが、私には全く理解できない発言。これは憲法に違反する「違憲立法」を先にして、後で憲法改正すればいいと主張されているのか。私の頭では到底理解できない考えなので、その真意を伺いたい。憲法に違反するような特別法を、場合によっては、緊急集会だけで可決できるとすれば、リベラルの方々が懸念する「緊急政令」以上の権力の濫用を招くのではないか。私は立憲主義の観点から心配で夜も眠れなかった。任期延長を可能とするいかなる特別法を考えているのか、篠原委員の考えを伺いたい。


最後に、国民投票法に実効性あるネット広告規制をどのように盛り込むべきかを判断するにあたって参考にするため、2名の参考人の招致を改めて提案したい。1人目は、「ケンブリッジ・アナリティカ事件」の当事者であるブリタニー・カイザー氏。2人目は、ティックトックの周CEOである。森会長の取りはからいをお願いしたい。

先週に引き続き、憲法審査会が開催されました。昨日スタートした、日本維新の会、有志の会との「憲法に関する実務者協議会」を紹介するとともに、緊急事態条項の条文案で成案を得て、国会に提案することを報告しました。

 

また、先週の審査会で緊急事態条項の残された論点として提示した5点についても、立憲民主党の見解を確認するとともに、国民民主党の考え方を述べました。

 

引き続き「対決より解決」で、憲法論議を前に進めていきます。

 

 

衆議院インターネット中継より

憲法審査会発言要旨(2023年3月9日)

 前回に引き続き、緊急事態条項、とりわけ「議員任期の延長規定」についてテーマを絞って議論し、残された論点について意見を集約し、具体的な憲法改正の条文案づくりに入ることを提案したい。


 なお、昨日(3月8日)、日本維新の会と有志の会ともに、緊急事態条項の条文案をまとめるための実務者協議をスタートさせた。できれば今月中には成案を得て、条文案を本審査会に示し、議論の加速化に寄与したい。


 先ほど新藤幹事から、緊急事態条項に関して8つの論点が示されたが、前回の審査会で、私からも「5つの残された論点」があると申し上げたところ。


①「選挙実施困難要件」の具体的要件
②任期延長期間の上限
③解散後の前衆議院議員の身分復活のあり方
④任期延長における最高裁判所(司法)の関与のあり方
⑤参議院の「緊急集会」の位置付け


 これらの論点については、今後、当審査会で各党各会派のご意見も伺いながら議論を深め合意を得ていきたいが、現時点での国民民主党の考えを申し上げておきたい。


 まず、①の「選挙実施困難要件」については、「緊急集会で対応できないほど長期」の期間と考えることが一つの目安と考える。例えば、憲法54条の規定を踏まえ、70日間あるいは80日間以上の長期にわたって衆議院の開会が見込まれない場合には、議員任期の特例延長を認めるべきと考える。


 ②の延長期間の上限については、東日本大震災の時に導入された地方議会における議員任期延長の特例法の規定を参考に、例えば「原則6ヶ月」とし、「全国一斉の選挙の適正な実施が可能」となるまで延長できることとし、選挙実施可能になった場合には、国会の議決で任期終了できるとしてはどうか。


 ③の前衆議院議員の身分復活については、解散権を行使した内閣自らが、緊急事態を発することで、その判断を撤回したと考え、失われた身分を復活させることもあり得ると考える。例えば、国民投票法15条は、憲法改正発議に係る広報を司る「国民投票広報協議会」は、憲法改正の発議の際に議員であった者で組織するとされており、議員でなくても一定時点で議員だった者に身分を付与している例が参考になるのではないか。


 ④の任期延長に関する司法の関与のあり方については、国民民主党案では、内閣が緊急事態を発令した段階で、いずれかの議院の4分の1の議員の申立てで最高裁が要件適合性を審査し、内閣と国会に「勧告」できるようにしている。この司法の関与を、議員任期の延長や再延長を国会が議決した際に適用する案もあり得ると思うが、いずれにせよ、国会議員のお手盛りを防止する観点から、いずれかの段階で一定の司法の関与を盛り込むべきと考える。


 最後に、⑤の緊急集会について、国民民主党は、仮に、54条2項の緊急集会が、衆議院解散時に加えて任期満了時でも開けると解釈するにしても、それは、一時的・暫定的なものでなければならないと考える。憲法54条では、解散から40日以内に選挙を行い、選挙から30日以内に国会を召集すること、そして、緊急集会でとられた措置は、国会開会の10日以内に衆議院の同意が必要だと規定されていることを考えれば、最大80日を超えるような長期にわたる権限の行使は憲法上、想定されていないと考えるべきである。


 また、北神委員、濱地委員からもあったように、国会法101条では「内閣総理大臣が示した案件に関連するものに限って」議案を発議できることとされている。また国会法102条の2では、当該緊急の案件が議決された時は、緊急集会は終了するものとされている。これらの規定ぶりから見ても、緊急集会は、限定された案件についてのみ取り扱うべきで、広く一般的・網羅的な案件を処理することを想定しているとは考えられない。


 よって、仮に、任期満了時でも緊急集会で対応するにしても、あくまで、その対応できる「期間」や取り扱える「案件」は限定されていると考える。そこで、立憲民主党に質問したい。奥野委員から、任期満了時に選挙ができない場合に、緊急集会で対応すべきであるとの発言があったが、それでは、緊急集会は「どのような期間」「どのような案件」について対応できる、あるいはすべきと考えているのか、考えを伺いたい。


 特に、立憲民主党がまとめた中間報告では、「数年にわたり選挙困難事態が継続する場合には『議員任期延長』によることも考えられる」としているが、逆に言えば1〜2年程度であれば、緊急集会で対応できると考えているのか。その際、暫定予算や補正予算ではなく、当初予算案についても、緊急集会で対応できると考えているのか。その際、予算における衆議院の優越を定めた憲法60条との関係をどう整理するのか、立憲民主党の考えを聞かせていただきたい。


 こうした残された論点について合意を得て、当審査会として具体的な条文案のとりまとめに入ることを改めて求めたい。維新と有志の会と国民民主党は、今月中にも成案を得て、条文案を本審査会にお示しする方針だ。


 最後に、国民投票法に、実効性あるネット広告規制をどのように盛り込むべきかを判断するにあたって参考にするため、2名の参考人の招致を提案したい。1人目は、2016年の米国大統領選挙でフェイスブックのデータを用いて投票行動を操作したとされる「ケンブリッジ・アナリティカ事件」の当事者であるブリタニー・カイザー氏。2人目は、ティックトックの周CEOである。


 中国企業が運営するティックトックについて、米国、カナダ、EU等でも国家安全保障上の懸念を理由に政府職員の端末で使用禁止にする動きが広がっている。国民民主党も昨日、議員や秘書、党職員の業務用端末でのティックトックの使用禁止を決定した。今月23日には米下院のエネルギー・商業委員会の公聴会で、ティックトックの周CEOが証言する予定だが、本憲法審査会にも周CEOを参考人として招致し、プライバシーとセキュリティ上のリスクについて話を聞くことを提案したい。

今国会初となる衆議院憲法審査会が開催されました。昨年は2月10日に開かれましたが、今年は立憲民主党や共産党の反対により、3月にずれ込んでしまいました。国民の代わりに議論する代議士であるにもかかわらず、会議を開くか開かないかに注力していた時代に先祖返りしたのは残念です。

 

国民民主党は12月14日に権力統制のための緊急事態条項の条文案を取りまとめており、今回の憲法審査会で資料として配付することができました。これまでも何度か審査会での資料配付をお願いしてきましたが、実現していませんでした。これからも具体的な提案を通じて国会での憲法論議を先導していきたいと思います。


3月2日の衆院憲法審査会で配付した緊急事態条項の憲法条文資料
(画像をクリックするとPDFが表示されます)

 

憲法審査会発言要旨(2023年3月2日)

 今国会、初めて憲法審査会が開会されたことを歓迎するが、せっかく昨年の通常国会では2月10日以来、2月中も4週連続で定例日に開催されていたにもかかわらず、今国会の初会合が3月にずれ込んだことは残念。もう「開かないこと」に力を使うのではなく、「開いて議論し成果を出すこと」に力を使おうではないか。また、今後は、緊急事態条項、とりわけ議論が積み上がってきている「議員任期の延長規定」についてテーマを絞って議論し、残された論点について意見を集約した上で、具体的な憲法改正の条文案づくりに入ることを提案したい。
 
 私たち国民民主党は、昨年12月、包括的な緊急事態条項についての条文案を党内で取りまとめた。改めて、我が党の考える緊急事態条項について、配付資料をもとに説明させていただく。まず、何度も繰り返し申しあげているように、我が党の基本コンセプトは、「権力行使の容易化条項」としての緊急事態条項ではなく、むしろ、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、権力の濫用等に対する立法や司法による統制を明らかにする「権力行使の統制条項」としての緊急事態条項である。

 まず、緊急事態の要件として、
①外国からの武力攻撃
②内乱・テロ
③大規模自然災害
④感染症の大規模まん延

の4つのカテゴリーを原則としつつ、「その他これに準ずる事態として法律で定める緊急事態」を設けている。さらに、単にこれらの事態が事実として発生するだけでなく、「通常の統治機構の運用によっては事態の収拾が著しく困難であるとき」という要件を加重している。また、宣言を発令する際の手続きとしては、原則国会の事前承認を求め、例外的に事後承認を認めることとしている。宣言の期間は「30日以内」として、国会の事前承認で延長可としている。

 次に、緊急事態が宣言された時の「効果」における、手続的統制と内容的統制について述べたい。手続的統制の第一として、まず、国民民主党では、「国会機能の維持」を大前提とし、国会中心主義を貫くこととしている。


 具体的には、国会が開会している時の閉会禁止と、閉会時の召集義務を課している。また、緊急事態宣言下での衆議院の解散制限の規定を考えている。これは、緊急事態の時だからこそ、国会の立法機能や行政監視機能を可能な限り維持しようとする趣旨である。また、解釈で認められたオンライン出席について、明文で規定すべきと考える。

 それでもなお、定足数を満たすことが難しいなど、国会がその機能を果たすことができない場合には、ドイツにおけるミニ国会のような「両院合同委員会」による国会機能の代替についても規定している。この両院合同委員会において採られた措置は、国会の事後承認がない場合には、その効力を失うとしている。

 このように可能な限り国会機能を維持する対応をしてもなお、「法律制定・予算議決を待ついとまがない特別の事情があるとき」には、「あらかじめ法律の定めるところにより」内閣が緊急政令・緊急財政処分を行うことができることとしている。これらの緊急政令や財政処分については、速やかに国会の承認が必要としている。

 加えて、任期満了時に緊急事態が宣言された場合であって、「長期にわたって全国一斉の選挙の適正実施が困難であると認めるとき」は、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、議員任期の延長と選挙期日の特例を定めることができる規定を設けている。緊急事態条項のうち、この「議員任期の延長」規定については、これまでかなり議論の積み上げが進んでおり、条文化に向けて最優先で議論するテーマだと考える。

 そして、この「議員任期の延長」に関して、国民民主党案であえてペンディングにしている論点が5つある。まず、①参議院の緊急集会の位置付け、②加重要件である「選挙実施困難要件」の具体的要件、③任期延長期間の上限、④解散後の前衆議院議員の身分復活のあり方、⑤延長における最高裁判所(司法)の関与のあり方について。これらは各党からさまざまな意見が出てきていると認識しており、今後、当審査会で議論を深め合意を得ていきたい。
 
 次に、手続的統制の第二として、「裁判所による統制」を設けている。
 国民民主党案では、まず一番最初の入口の段階で、緊急事態宣言の要件が満たされているのどうかの「要件充足性」について、いずれかの議院の4分の1以上による申し立てがあったときは最高裁が宣言を解除すべき旨を「勧告」できるようにし、内閣や国会の恣意的な宣言発令を抑制できるようにしている。

 さらに、緊急事態宣言発令中に採られた法令、命令、条例及び規則等の合憲性について、最高裁が集中的に判断ができる規定を設け、最高裁が事実上の憲法裁判所しての機能を発揮できるようにしている。

 続いて、緊急事態宣言の「効果」に関する「内容的統制」について概要を述べたい。まず、いかなる場合であっても「絶対に制限してはならない人権」を明記している。何度か当審査会でも紹介した、いわゆる「デリゲートできない権利」に関する規定である。
 
 まず、ドイツ憲法のように、「各人権の本質的内容」の絶対的制限禁止を規定するとともに、「自由及び権利の制限は必要最小限のものでなければならない」旨も規定している。その上で、判例や学説の多数の見解等を踏まえ、奴隷的拘束、思想・良心・信教の自由の内心部分への制約や、検閲、拷問・残虐な刑罰の絶対的禁止を規定している。

 最後に、国の基本法である憲法は落ち着いた環境の中で議論し手続きを進めるべきと考え、スペインやフランスの憲法を参考に、緊急事態宣言の発令中は、憲法改正、発議、国民投票ができないとの規定も設けている。

 以上、国民民主党案の全体像を説明させていただいたが、我が党としては、特に、これまでの議論で合意点の多い「議員任期の特例」についての議論をまず急ぐべきであり、残された論点について意見を集約し、改正条文案の作成に入るべきと考える。残された論点も、先ほど述べた5点に集約されてきたと思う。そこでまず、憲法54条2項の参議院の「参議院の緊急集会」を、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、仮にできるとして、期間や権限などその限界はどこまでなのかなど、有識者に出席を求め、その解釈を本審査会で確定することを提案したい。なお、我が党は、緊急集会を仮に任期満了時にも開催できるとしたとしても、その機能は一時的、暫定的であって、その期間や権限には限界があり、例えば「70日を超える長期」にわたってまで、緊急集会の規定を濫用すべきではないと考える。現に、国会法102条の2では、内閣総理大臣が求めた事案の処理が終わると緊急集会は終了するとされている。

 最後に、国民投票法に、実効性あるネット広告規制をどのように盛り込むべきかを判断するにあたって参考になるのが、2016年の米国大統領選挙でSNSを用いて投票行動を操作したとされる「ケンブリッジ・アナリティカ事件」である。SNSにおけるフェイクニュースが民主主義に与える影響を考えるため、ケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏を憲法審査会に呼んで話を聞くことを、改めて提案したい。

以上

 

衆議院インターネット中継より

本日、国民民主党憲法調査会で、緊急事態条項の条文イメージ(たたき台素案)が了承されました。前憲法調査会長である菅野志桜里さんが置き土産のように残してくれた条文「案」でしたが、党内での議論や衆議院憲法審査会での累次の討論を経て、ついに完成。この日を迎えることができました。感慨深いものがあります。


▲緊急事態条項の憲法条文イメージ(たたき台素案)ポンチ絵
(画像をクリックするとPDFが表示されます)


緊急事態条項というと、どうしてもナチス(ワイマール憲法の「国家緊急権」を悪用して独裁体制を築いたとされる)を挙げて批判する人がいますが、私たちはむしろ、コロナ禍という緊急事態を理由に、憲法で保障された営業の自由や教育を受ける権利などが、いとも簡単に行政によって制約される事実を目の当たりにし、「行政の権限を統制するための緊急事態条項」をまとめるに至りました。

緊急事態下であっても人権を保証し、可能な限り立法府や司法府を機能させて三権分立を維持するための条項です。我が党の緊急事態条項は、いわば、行政の権限行使を容易化する憲法条項ではなく、「行政の権限を統制するための憲法条項」なのです。

衆議院の憲法審査会でも何度も述べていますが、

緊急事態条項が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中で、緊急事態を理由に憲法が保障する権利がいとも簡単に制約される現状の方が危ない

のです。

これから地方組織や党員・サポーター、広く国民の皆さんの意見も聞きながら国民的議論を喚起していく方針ですので、どうかよろしくお願いします。

国民民主党代表 玉木雄一郎

 

 

▲緊急事態条項の憲法条文イメージ(たたき台素案)概要
(画像をクリックするとPDFが表示されます)

 

▲緊急事態条項の憲法条文イメージ(たたき台素案)条文本体
(画像をクリックするとPDFが表示されます)

実質的な議論としてはこの臨時国会で2回めとなる憲法審査会が開かれました。緊急事態において国会の機能をいかに維持するかについて、具体的な条文のイメージも交えた活発な議論が交わされました。

 

バラバラの内容を各自が言いっぱなしではなく、テーマを決めて集中的に議論できたことはよかったと思います。代議士として国民の負託を受けた以上、今後も建設的な議論を重ね、一致点を見いだせるように「対決より解決」で臨みます。

 

衆議院インターネット審議中継より

憲法審査会発言要旨(2022年11月10日)

 冒頭、今後の審査会の運営について申し上げたい。これまでの議論の中で、ある程度コンセンサスが得られたと思われる項目の一つである「緊急事態条項」、とりわけ議員任期の特例延長にテーマを絞って議論することを提案したい。言いっ放しではなく、具体的な議論の成果を出せる審査会の運営を求めたい。
 
 その上で、3月31日、すでにこの場で述べているが、改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べておきたい。私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、「行政の簡易・迅速な権力行使」を可能とする“権力行使の容易化条項“としての緊急事態条項ではなく、むしろ「公共の福祉」などの漠たる規定を根拠として行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する“権力行使の統制条項“としての緊急事態条項である。

 まず、国民民主党は、行政府による権力濫用を防止する観点から、緊急事態の要件は明示的に限定列挙すべきと考える。具体的には、
①外国からの武力攻撃
②内乱・テロ
③大規模自然災害
④感染症の大規模まん延
この4つのカテゴリーを原則とすべきと考える。
 
 国民民主党は、手続的統制の方策として国会機能を最大限維持することが重要だと考えているが、かかる観点から、宣言を発令するのは内閣の権限とする一方で、緊急事態事態の宣言について、原則、国会の事前承認を求め、例外的に事後承認を認めることを考えている。この点は、自民党の2012年改憲草案にも明記されており、建設的な合意がつくれるはずだと考える。


 その上で、手続的統制の第二の方策として、司法による統制を機能させることを考えている。具体的には、緊急事態宣言の要件が満たされているのどうかの「要件充足性」について最高裁が勧告できるようにし、恣意的な宣言発令を抑制することを検討している。例えば、「緊急事態宣言が発生された場合又は延長された場合において、いずれかの議員の総議員の4分の1以上による申し立てがあったときは、最高裁判所は、その宣言が要件を満たしているか審査し、申立てから30日以内に判決を行わなければならないとし、満たしていないとの判決を行ったときは国会及び内閣に対して解除の勧告を行うとする」旨の規定を設けるのも一案だ。

 私たちは、国会議員の任期満了時に緊急事態が宣言された場合、議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定を憲法を改正して設けるべきとの立場です。その際、いつまで任期を延長できるかについては、多数派の恣意的な決定を排除するため、各議院の3分の2以上の多数で延長期間を定めることを考えている。この延長できる期間の決定においても、最高裁判所の関与を求める案も考えられるが、我が党としては、緊急事態宣言の発令するかどうかの最初の入口の判断の際に限定して、最高裁判所の関与を求める仕組みを検討している。

 また、緊急事態にこそ、国会機能を可能な限り維持することが必要であるとの観点から、国会開会時の閉会制限と閉会時の召集義務を課し、また、緊急事態宣言下での衆議院の解散制限の規定を考えている。さらに、解釈で認められたオンライン出席について、明文で規定することも検討したい。加えて、オンラインを活用してもなお定足数を満たさずどうしても衆議院、参議院の本会議が開けない場合には、ドイツにおける「ミニ国会」のような「両院合同委員会」による国会機能の代替についても議論している。

 いずれにしても、国民民主党としては、緊急事態においてもできるだけ国会機能を維持するため、特に、「緊急事態の定義」と「議員任期の特例延長」についての議論の具体化を急ぐべきだと考える。なお、任期の特例を創設するに当たっては、憲法54条2項の参議院の緊急集会を、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、有識者に出席を求め、その解釈を本審査会で確定することを提案したい。
 国民民主党としては、条文上、解散時に加えて任期満了時を読み込むことは困難であること、また、両院制を正しく機能させる必要があることから憲法改正が必要であるとの立場である。

 ちなみに、平成23年の質問主意書に対する政府答弁書(平成23年11月11日内閣衆質179第23号)においても、大規模災害が国政選挙の直前に発生した場合に、「法律を制定することにより『選挙期日を延期するとともに、国会議員の任期を延長すること』はできない」、すなわち憲法改正が必要とされている。政府答弁でも、立法措置では国会議員の任期の延長はできないとされており、政府あるいは内閣法制局からもヒアリングを行うことを提案したい。

 国民民主党としては、今述べたような緊急事態における統制の具体的内容について党内で議論しており、いずれ条文の形でお示ししたい。いずれにせよ、引き続き緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたい。

 最後に、SNSにおけるフェイクニュースが民主主義に与える影響を考えるため、また、外国勢力が、いわゆるディスインフォメーションを用いて偽りの情報を流布することで国家の安全保障が脅かされる可能性について検証するためにも、2016年の米国大統領選挙において投票行動が操作されたとされる「ケンブリッジ・アナリティカ事件」の当事者であるブリタニー・カイザー氏を当憲法審査会に呼んで話を聞くことを改めて提案したい。

以上

この臨時国会初となる憲法審査会が開会されました。10月3日に召集されて3週間以上を経てようやく開会されました。定例日には開いて議論するという、通常国会で当たり前となったはず「慣例」は守るべきです。

 

今回は通常国会からも参院選を挟んで時間があいたので、「前回までのあらすじ」としてダイジェスト的な内容をお話ししたほか、防衛費の増額についても「もうひとつの憲法9条」とも言われている海上保安庁法第25条を取り上げ、考え方を述べました。

 

衆議院インターネット審議中継より

憲法審査会発言メモ(2022年10月27日)

■今後の審査会運営について

 まず今後の本審査会の進め方について申し上げたい。毎週定例日には開催するという慣例は守ってほしい。また、これまで、緊急事態条項、9条、国民投票法などについて議論を行ってきたが、言いっぱなしにならないよう、一つのテーマについて一定の意見集約を行ってから、次のテーマに進むことを求めたい。そのための分科会方式や小委員会方式を提案したい。

■緊急時の議員任期延長改正案

 特に、緊急事態条項、とりわけ、議員任期の特例延長の必要性については、本審査会で概ね合意が得られていると考えられることから、具体的な改正案について議論すべきだ。国民民主党として条文イメージ案を取りまとめているので、資料を配付の上、改めて説明させて欲しい。まずは、緊急事態の定義(4類型)についてコンセンサスを得ることを求めたい。

■外国勢力による情報戦への対応

 参考人招致についても改めて提案したい。憲法改正の国民投票におけるネット広告規制について、インターネット事業者等から意見を聴取して欲しい。さらに、SNSの個人情報を利用して内心の自由を操作し、選挙に介入した「ケンブリッジ・アナリティカ事件」の当事者であるブリタニー・カイザー氏からのオンラインも含めた意見聴取も優先的に行ってほしい。ロシアによるウクライナ侵略でも、フェイクニュースなどによるサイバー空間における情報操作、いわゆる「ディスインフォメーション」の影響が指摘されている。情報の発信者やプラットフォーマーに対する規制、外国勢力の影響を排除するための規制、ファクトチェック機関の創設などの議論をより具体的に深めていきたい。

 とにかく、税金をいただいて議論することを仕事とする国会議員として、言いっぱなしではなく、山積する憲法上の課題に一つ一つ結論を出していく運営をお願いしたい。

■憲法9条について

 次に、憲法9条について一言述べたい。国民民主党としては、「自衛隊」という組織を明記するかどうかの形式的な議論の前に、その自衛隊にいかなる自衛権の行使を憲法上認めるのか、そして、その自衛権の行使を行う実力組織は「戦力」あるいは「軍隊」なのかという本質的な議論が必要との立場だ。なぜなら、この議論を避けている限り、仮に自衛隊という行政組織名が憲法に明記され、「存在」の違憲性が解消されても、その自衛隊による自衛権の行使という「行為・行動」の違憲性の疑義が残り続けるからである。

 

 ここで、改めて自民党の新藤幹事、日本維新の会の馬場幹事に伺いたい。両党の憲法改正案による改正後の自衛隊は、「戦力」あるいは「軍隊」なのか、そうでないのか。そして、今後の解釈変更によってはフルスペックの集団的自衛権が認められる改正になっているのか伺いたい。特に、前回、足立康史議員が「芦田修正」を取り入れるとの趣旨を発言したと思うが、日本維新の会として、芦田修正を採用する考えなのか。そうであれば、依然として自衛権の範囲が解釈に依存することになり、条文と現実のギャップを解釈で埋める「解釈の迷宮」から抜け出せないのではないか。党としての考えを聞きたい。

 

 今後、政府・与党においても、反撃力、いわゆる敵基地攻撃能力の保持について議論を深めていくと思うが、相手領域内の軍事施設等を狙って誤爆した時に、業務上過失致死に問われる可能性もあるが、業務上過失致死の国外犯規定は日本の刑法にはないし、そもそも、軍事作戦にまつわる過失等を平時の法体系である刑法で裁くことが適当なのかという問題がある。その意味でも、もう自衛隊が「戦力」あるいは「軍隊」なのかという議論を曖昧にし続けるべきではない。

■防衛費の増額と海上保安庁法25条

 関連して防衛費の増額について申し述べたい。国民民主党は国を守るために必要な防衛費の増額には賛成の立場である。一つの参考となるのがNATO、北大西洋条約機構が加盟国に要求する国防費の対GDP2%だ。これに関して、海上保安庁の予算など安全保障に関わる予算を足し合わせれば、日本でもGDPの1.24%程度になるとの主張があるが、これは誤解を招く議論である。そもそも「NATO基準の国防費」には明確な定義があり、それは「軍隊の要求を満たす経費」であって、「軍事戦術の訓練を受け、軍隊としての装備を保有し、展開オペレーションの際に、直接、軍の指揮下で行動でき、現実的に、軍を支援するために国家の領域外に展開可能な部分についてのみ計上する」ことになっている。

 

 一方、海上保安庁法25条は「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認められるものと解釈してはならない」と定めている。また、実態としても有事を前提とした自衛隊と海保との連携訓練は一度も実施されていない。したがって、海上保安庁予算も「NATO基準の国防費」に含めたいのであれば、海上保安庁法25条の削除が必要だということは指摘しておきたい。

 

 重要なことは、都合よく「軍隊」の定義を使い分けるのではなく、ロシアによるウクライナ侵略が長期化し、北朝鮮が何十発ものミサイルを我が国周辺に着弾させ、台湾統一を悲願とする中国の習近平総書記が3期目に入った今、我が国の主権と領土を守るために必要な「armed forces」とは何かという本質的な議論が必要だ。

 

 いずれにせよ、自衛隊が対外的には軍隊だが国内的には実力組織であるといった説明は日本でしか通用しない。憲法改正するのであれば、自衛隊が「戦力」あるいは「軍隊」なのかどうかというガラパゴス的議論に終止符を打つべきではないか。形式的で中途半端な9条改正は将来に禍根を残すことを指摘しておきたい。

 

以上

これまでの累次の憲法審査会で、緊急時の政府による権限行使を統制するための緊急事態条項について繰り返し提案してきました(3/173/243/31のブログ)。今日の審査会では、国民民主党憲法調査会でまとめた具体的な条文イメージ(下記)を配付し、国会でも議論を深めようとしたのですが、幹事会の了承が得られず配布することができませんでした。とても残念です。

 

▲国民民主党憲法調査会(3月25日)資料(クリックするとPDFが開きます

 

審査会でも申し上げましたが、かつての言いっぱなしの放談会に逆戻りしてはいけません。審査会運営を主導する立場の自民党、立憲民主党には、議論のテーマを拡散させることなく、一つ一つ結論を出していくことを改めて求めたいと思います。

 

その上で、今日は憲法9条についての国民民主党の考え方を示しました。2015年の安保法制である種空文化した憲法9条に規範力・統制力を復活させるための提案をしています。ご一読ください。

 

憲法審査会発言メモ(2022年5月12日)

■今後の審査会の運営について

まず今後の審査会の進め方について、一言申し上げたい。これまで、緊急事態条項、国民投票法について議論を行ってきたが、一つ一つのテーマについて一定の意見集約を行ってから、次のテーマに進むことを求めたい。憲法審査会において、オンライン国会についての憲法解釈を取りまとめることができたのは画期的だったが、コロナ禍で明らかになったこの他の憲法上の課題については優先的に議論し、速やかに一定の結論を得るべきだと考える。特に、緊急事態条項、とりわけ、議員任期の特例延長の必要性については、本審査会で概ね合意が得られていると考えられることから、具体的な改正案について議論すべきである。

 

そのために必要は有識者からの意見聴取、特に、憲法54条2項の「緊急集会」が解散時だけでなく、任期満了時にも認められるのか否かについての参考人からの意見聴取は早急に行うべきである。また、国民投票法についても、ネット広告規制について、インターネット事業者等からのヒアリング、そして、私がこれまで何度も提案しているケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏からの意見聴取も優先的に行ってほしい。


とにかく、議論したテーマについて、具体的な意見集約を行わずに、次のテーマにいってしまうと、また言いっぱなしの憲法審査会に逆戻りしてしまうので、ぜひ、議論のテーマを拡散させることなく、一つ一つ結論を出していく運営をお願いしたい。そのためには、分科会方式や小委員会方式による運営を検討いただきたい。


なお、緊急事態条項について、これまでの審査会での議論も踏まえた上で、国民民主党として条文案を取りまとめている。ぜひ、その全体イメージについて、資料を配付の上、改めて説明させていただきたい。本日の配付は幹事会で残念ながら認められなかったが、会長の取り計らいをお願いしたい。

■9条について

ロシアのウクライナ侵略、そして厳しさを増す我が国を取り巻く安全保障環境の中で、安全保障のあり方や憲法9条のあり方について関心が高まってきている。そこで、国民民主党としての9条を論ずるにあたっての基本的考え方を述べて起きたい。これは2020年12月に取りまとめた国民民主党の「憲法改正に向けた論点整理」にまとめている。

〈不文律による規範力・統制力の限界〉
現行憲法9条は、2項で戦力の不保持と交戦権の否認を定める一方、現実の防衛政策として、国際的には戦力と言える自衛隊を保持している。この条文と現実との乖離を埋めるため、政府は、現実を追認する形で、

  • 「戦力」は保持できないが、「自衛のための必要最小限度の実力」(=自衛隊)は保持できる
  • 「交戦権」は否認されるが、「自衛のための必要最小限度の実力行使」(=自衛行動権)は容認される

という、一般国民にも国際社会にも容易に理解しがたい政府解釈の積み重ねを繰り返してきた。

その結果、憲法9条は現実を規律・統制する規範力を事実上失ってしまった。さらに、2015年、これまで政府が一貫して堅持してきた「集団的自衛権の行使は違憲」という立場を一転させ、戦力不保持、交戦権否認をうたう憲法9条のもとで、集団的自衛権の一部容認にまで踏み込んだ安保法制を成立させたことで、憲法9条の規範力・統制力はいよいよ限界を突破し、9条2項の空文化に拍車をかけたと言える。逆に言えば、憲法改正の必要性が著しく低下したとも言える。

〈明文化により憲法の規範力・統制力を強化する必要性〉
そこで、国民民主党としては、日本国憲法の三大原理の一つである「平和主義」の理念を堅持しつつ、厳しさを増す安全保障環境の中で、現実的な対応をとる必要性を正面から認め、憲法9条に国家の最高法規としての規範力・統制力を復活させることが必要だと考える。その上で、現在の解釈ではできないことは何か、改正によって追加的に得られる意義、必要性は何かを冷静に見極める必要がある。

〈9条の論点整理〉
複雑怪奇な解釈がなされている憲法9条の規範性を復活させるためには、これにつきまとってきたイデオロギー対立から自覚的にいったん身を離した上で、次の3つの論点を分けて整理して、冷静な議論が必要だと考える。

【論点1】安全保障政策として「自衛権行使の範囲」について、憲法上どこまで認めることとするのかという論点
【論点2】その自衛権を担う実力組織としての「自衛隊の保持・統制に関するルール」をどのように規定するかの論点
【論点3】【論点1】【論点2】の検討から導き出された「自衛権行使の範囲」「自衛隊の保持・統制に関するルール」と、9条2項の「戦力の不保持・交戦権の否認」との関係をどのように整理するかの論点

〈まず議論すべきは「自衛権」〉
国民民主党としては、自衛隊を明記するかの形式的な議論の前に、その自衛隊にいかなる自衛権の行使を憲法上認めるのか、そして、その自衛権の行使を行う実力組織は「戦力」あるいは「軍隊」なのかという本質的な議論が必要だと考える。なぜなら、この本質的な議論をしないと、仮に自衛隊という組織名が憲法に明記され、「存在」についての違憲性が解消されても、その自衛隊が行使する自衛権の行使という「行為」についての違憲性の疑義が残るからである。

次回以降、必要に応じて、先に述べた3つの論点に沿って、憲法9条に規範力・統制力を復活させるための国民民主党の条文イメージについて述べたいが、議論の参考とするため、新藤幹事に、自民党の改憲4項目の条文イメージ(たたき台素案)について2つ質問したい。

  1. 自民党の条文イメージ(たたき台素案)の9条の2第1項に規定された自衛隊は「戦力」あるいは「軍隊」という位置付けなのか。
  2. 9条2項を残しながら、同項は「必要な自衛の措置を妨げず」としているが、その場合、これまで9条2項から導き出されてきた「必要最小限」という解釈は引き継がれるのか、それとも「必要最小限」の制約は外れているのか。

以上2つについて、自民党の考え方をお示しいただきたい。

自民党は、いわゆる敵基地攻撃能力の保持の必要性を提言されたが、相手領域内の軍事施設等を狙って長射程のミサイルを打った場合、仮に「誤爆」が起きた時に、誤爆した自衛官が処分されるのか、それとも上官が責任を負うのか、あるいは究極の上官たる国家が責任を負うのか、考え方を教えて欲しい。ちなみに、業務上過失致死の国外犯規定は日本の刑法にはないし、そもそも、こうした軍事作戦にまつわる過失等を平時の法体系である刑法で問うことが適当なのかという問題がある。その意味でも自衛隊が「戦力」あるいは「軍隊」なのかという議論を曖昧にし続けることができなくなっていることを指摘しておきたい。その際は、「防衛裁判所」的な特別の裁判体系も必要だと考える。

 

衆議院インターネット中継より

本日、今国会11回目となる憲法審査会が開かれました。国民投票法がテーマです。私からはインターネットにおける国民投票運動における「表現の自由」について問題提起しました。

 

これまで「表現の自由」は、個々の表現主体に対する国家の介入を排除すること(=国家からの自由)に主眼が置かれてきました。

しかし、巨大なプラットフォーマーと膨大なデータによって、偏った情報が集中的に流れることが当たり前になった今日において、「表現空間」に多様な情報が流通することを国家が確保する必要(=国家による自由)が出てきたと言えます。

 

国民民主党は今後もAI時代にふさわしい憲法議論を先導していきます。

 

衆議院インターネット中継より

憲法審査会発言メモ(2022年4月28日)

昨日、提出された国民投票法改正案の内容については、公選法を踏まえた技術的な改正であり、国民民主党としても賛成する。ただ、提出後、自民党の参院幹部は「残りの会期で改正案を仕上げることは参院ではあり得ない」と異論を唱えている。提出するのはいいが、よく党内ですり合わせをしていただきたいし、せっかく円満に進んできた憲法改正に向けた当審査会の運営にマイナスにならないよう注意してもらいたい。

さて、国民投票法改正については、憲法本体の議論と並行して行うべきとの立場であるが、一方で、令和3年改正法の検討条項にあるもう一つの課題として掲げられている「国民投票運動等のための広告放送及びインターネット等を利用する方法による有料広告の制限」「資金に係る規制」「インターネット等の適正な利用の確保を図る方策」についても議論を行い、早期に結論を得るべきである。

特に私たちは、旧国民民主党時代に改正法案を提出しており、そのうち、特に重要な3点について、早期に改正する必要性について述べておきたい。改正案を策定する際に考慮に入れたのが、2016年の米国大統領選挙であり、改めて紹介したい。

2016年の大統領選挙では、二つの疑惑が問題となった。一つは、この審査会で何度も紹介した「ケンブリッジ・アナリティカ事件」である。ビッグデータを活用したマイクロ・ターゲティングによる投票を操作した疑惑である。もう一つは、ロシアが大統領選挙に介入したという疑惑である。Facebook上でロシアが背後にいるとみられる偽アカウントが政治広告を掲載し、世論を誘導しようとした疑惑である。これらの疑惑は、民主主義の根幹を揺るがす事態であり、私たちは、国の最高法規である憲法の国民投票においても、同様のマイクロ・ターゲット広告を活用した投票の操作や、外国勢力からの介入に対抗する適切な対応を取らなくてはならないと考えた。その結果、インターネット広告規制や、国民投票運動に対する外国からの寄付規制を盛り込んだ。

現在の国民投票法にはインターネット広告に対する規制が何ら存在していない。制定当時の議事録を読むと、「誹謗中傷があってもインターネットを使っての逆の情報発信というのも自由にできる」から問題ないといった趣旨の発言もあり、随分のどかな議論が行われている。しかし、現状はフェイクニュースの問題や心理学を利用したマイクロ・ターゲティング広告の発達など、プリミティブなインターネット空間では想像し得なかった課題も出てきている。しかし、我が国においては、インターネット事業者の業界団体の自主規制があるわけでもない。

また、外国人からの寄付についてもなんら法律では規定されておらず、また、先日の民放連のヒアリングを聞いても、「基本、各社が考えることになります」と述べており、各社の判断に委ねられているのが現状である。外国人広告主を排除する明確なルールは法律上もガイドラインにもない。

ケンブリッジ・アナリティカによる投票操作や、ロシアの大統領選挙への介入疑惑を踏まえれば、当時と比べてもより高度化したデジタル社会において、外国勢力がSNS等を活用して、我が国における選挙や、憲法の国民投票の結果に影響を与えることは可能になっていると考える。これは民主主義に対する脅威であり、民主主義はハックされ得る前提で対策を講じるべき時代になってきていると考える。健全な民主主義を守るためには、何らかの法規制が必要だと考える。

なお、EU離脱を決める英国の国民投票においては、EU離脱を支持する組織からフェイクニュースが発信・拡散されたことが投票結果に影響を与えたと指摘されている。特に、離脱派から「EUへの拠出金が週3億5000万ポンドに達する」とのフェイクニュースが拡散され離脱派の勝利につながったとされる。

そこで、当時、国民民主党は以下のようなインターネット規制を盛り込んだ改正案を提案した。

  • まず、TVのスポットCM同様に、政党による有料インターネット広告は禁止し、「国民投票広報協議会」が行うもののみとすること。
  • 1000万円を超える支出を行い、インターネット広告による国民投票運動を行う団体に、届出義務と収支報告の義務を課して透明化を図ることとし、支出の上限を5億円とする資金規制を導入すること。これらの規制金額は、イギリスの国民投票における「認定運動者」に対する規制を参考に、人口(2倍)や運動期間(3倍)の差を勘案して約6倍としている。
  • インターネットを利用して文書図画を頒布する者は、電子メールアドレス等を文書図画に表示しなければならないこと。
  • インターネットを利用して国民投票運動を行う者は、いわゆるフェイクニュースを流すことのないよう適正な利用に努めなくてはならないこと。
  • 国民投票広報協議会は、インターネットの適正利用のためのガイドラインを作成すること。

などを定めることとしている。また、外国人寄付規制に関しては、

  • 特定国民投票運動団体は、外国人、外国法人又はその主たる構成員が外国人若しくは外国法人である団体その他の組織から、寄付を受けてはならないと規定している。

もう一つの論点として提起したいのが、選挙運動期間と国民投票運動の期間が重なることを回避するための措置の導入である。

憲法改正の是非といった政策的な事項を争点とする国民投票と、政権の在り方を争う国政選挙との性質の違いに鑑み、両者の混同が生じないよう、つまり、国民投票が政権に対する信任投票にならないよう、選挙運動期間と国民投票運動の一定の期間が重なることを回避することとしている。

インターネット規制については、国民投票法だけの問題ではなく、より広範な議論が必要であるが、その際、表現の自由に最大限の配慮を行うことは当然のことである。特に、表現の自由は日本国憲法が保障する人権カタログの中でも「優越的地位」を占めており、その制限には慎重でなくてはならない。他方、インターネットを取り巻く環境が大きく変化する中で、インターネット、とりわけSNS上の表現を放置した場合、民主主義が機能不全に陥る可能性があるとすれば、国家がその自由を確保する義務もあると考える。

表現の自由とは、国家の介入を排除するという個々の表現主体の権利だけでなく、「表現空間」に多様な情報が流通することを国家が確保する義務も含まれると考える。「国家からの自由」とともに、巨大なプラットフォーマーと膨大なデータの前に、「国家による自由」の確保も必要になってきているのではないかということを改めて問題提起しておきたい。

最後に、現場を踏まえた適切な規制を議論するためにも、ケンブリッジ・アナリティカ事件に関与したブリタニー・カイザー氏をオンラインでもいいので当審査会に参考人として招致することを求めたい。森会長の取り計らいをよろしくお願いしたい。

今国会7回目となる憲法審査会が開会されました。先週に引き続き、緊急事態条項についての議論が行われました。

 

冒頭、衆議院の橘幸信法制局長から、諸外国の緊急事態条項について、前回の審査会で私から紹介したケネス・盛・マッケルウェイン東大教授の比較計量分析などについて、資料を用いて改めて説明がありました。この資料は緊急事態条項の議論の前提として重要です。ぜひご一読ください。

▲橘衆院法制局長による説明資料(クリックするとPDFが開きます

 

続いての各党の意見陳述の中で、私からは、先週示した権力統制のための緊急事態条項の2つのカテゴリーである「手続的統制」と「内容的統制」について、具体的な規定イメージの全体像を提案しました。詳しい発言は以下をご覧ください。

 

国民民主党はコロナ禍で明らかになった憲法上の論点について、現実的な提案で議論を先導しています。今後も具体的な成果を出せる憲法審査会となるように力を尽くします。

憲法審査会発言要旨
(2022年3月31日)

今週も定例日に憲法審査会が開催されたことを歓迎したい。また、緊急事態条項を中心としてテーマを絞って議論することには大変意義あると考える。具体的な議論の成果を出せる運営を期待したい。

改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べておきたい。それは「緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政府による恣意的な権力行使によって、憲法上の権利が制限されうる状態こそが危ない」ということだ。

私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、「行政の簡易・迅速な権力行使」を可能とする“権力行使の容易化条項“としての緊急事態条項ではなく、むしろ「公共の福祉」などの漠たる規定を根拠として行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する“権力行使の統制条項“としての緊急事態条項である。

ここで、前回紹介した欧州評議会に置かれた「ヴェニス委員会」の見解を、改めて説明したい。ヴェニス委員会は、「憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だ」と主張しており、特に、コロナ禍を経て2020年6月に策定された報告書の中で、「緊急事態と緊急事態権限に関する基本的な規定を憲法に盛り込むべきであり、その中に、いかなる権利が制限され得るのかを定めた条項(いわゆる「デロゲーション条項」)に加え、いかなる権利は制限が許されず、どんな状態にあっても尊重されなければならない権利(「デロゲートできない権利」)を明確に示す条項を含むべきである」としている。

私たち国民民主党は、ヴェニス委員会が指摘しているように、政府による緊急権の濫用を防止するためには、行使できる状況、効果、発動に関する規定の本質的部分は明確に憲法に規定すべきと考える。

ここで、国民民主党が考える“権力統制条項“としての緊急事態条項の「全体像」についてお示ししたい。私たちは、権力統制ツールとして、大きく以下の2つのカテゴリーの統制を用意することを考えている。

①国会の事前承認を求めるなどの「手続的統制」
②絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの「内容的統制」

最初に、緊急事態の宣言発令の要件と手続きについて述べたい。まず、行政府による権力濫用を防止する観点から、緊急事態の要件は限定列挙すべきだ。具体的には、

①外国からの武力攻撃
②内乱・テロ
③大規模自然災害
④感染症の大規模まん延


の4つのカテゴリーを原則とすべきと考える。さらに、単にこれらの事態が事実として発生するだけでなく、「通常の統治機構の運用によっては緊急事態の収拾が著しく困難であるとき」という要件を加重すべきである。


宣言を発令する際の手続きとしては、原則国会の事前承認を求め、例外的に事後承認を認めることとしたい。この点は自民党の2012年改憲草案にも明記されており、建設的な合意がつくれるはずだ。

次に、緊急事態が宣言された時の「効果」における、手続的統制と内容的統制について述べたい。

手続的統制の第一として、国民民主党では、国会機能の維持を重視している。


具体的には、国会開会時の閉会制限と閉会時の召集義務を課している。また、緊急事態宣言下での衆議院の解散制限の規定を考えている。これは、緊急事態の時であっても、いや、緊急事態の時だからこそ、国会の立法機能や行政監視機能を可能な限り維持しようとする趣旨である。解釈で認められたオンライン出席について、明文で規定することも検討したい。
加えて、任期満了時に緊急事態が宣言された場合の議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定である。これは、前回も申し上げたように最優先で議論するテーマだと考える。
さらに、ドイツにおけるミニ国会のような「両院合同委員会」による国会機能の代替についても議論している。

手続的統制の第二として、裁判所による統制が必要だと考える。
具体的には、まず、緊急事態宣言の要件が満たされているのどうかの「要件充足性」について最高裁が勧告できるようにし、恣意的な宣言発令を抑制できるよう検討している。また、緊急事態宣言発令中に採られた法令、命令、条例及び規則等の合憲性について、最高裁が集中的に判断ができる規定を設け、統治行為論で逃げられないようにすることで、最高裁が事実上の憲法裁判所しての機能を発揮できるようにしている。つまり、緊急事態においては、立法府に加えて、司法府のチェックが行政府に対して的確に働くよう設計している。

続いて、緊急事態宣言の「効果」に関する「内容的統制」について概要を述べたい。

内容的統制の第一として、いついかなる時も、国会機能を維持することが大前提であるが、それでもなお、①国会による法律制定・予算議決を待ついとまがないときには、②あらかじめ法律で定めるところにより、法律で定めるべき事項を定める政令や財政支出等を可能とする規定を創設したい。

内容的統制の第二として、「人権制限の限界」を明記することが重要だと考える。具体的には、「公共の福祉に基づく必要かつ合理的な限度での人権制限」を前提とした上で、それでも踏み込んではならない「絶対的禁止」の部分について一般的、個別的に規定すべきである。いわゆる「デリゲートできない権利」に関する規定である。
 
まず、ドイツ憲法のように、「各人権の本質的内容」の絶対的制限禁止を規定するとともに、自由及び権利の制限は「必要最小限のものでなければならない」旨も規定する。その上で、判例や学説の多数の見解等を踏まえ、奴隷的拘束、思想・良心・信教の自由の内心部分への制約や、検閲、拷問・残虐な刑罰の絶対的禁止を規定することを検討している。例えば、「内心の自由の侵害は、絶対にこれを禁ずる」などの明文の規定を設けてはどうか。

最後に、スペインやフランスの憲法を参考に、緊急事態宣言の発令中は、憲法改正、発議、国民投票ができないとの規定も設けることとしたい。なぜなら国の基本法である憲法は落ち着いた環境の中で議論し手続きを進めるべきと考えるからである。

こうした全体像を視野に置きつつ、国民民主党としては、特に、「緊急事態の定義」と「議員任期の特例」についての議論をまず急ぐべきだと考える。なお、任期の特例を創設するに当たっては、憲法54条2項の参議院の緊急集会を、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、有識者に出席を求め、その解釈を本審査会で確定することを提案したい。

以上のような緊急事態における統制の具体的内容について現在党内で議論しており、いずれ条文の形でお示ししたい。いずれにせよ、緊急事態条項については議論すべき論点が多々あるので、ことの緊要性に鑑み、引き続き緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたい。そのためにも、憲法審査会を毎週開催することを改めて求める。

最後に、SNSにおけるフェイクニュースが民主主義に与える影響を考えるため、2016年の米国大統領選挙において投票行動が操作されたとされる「ケンブリッジ・アナリティカ事件」の当事者であるブリタニー・カイザー氏を憲法審査会に呼んで話を聞くことを提案したい。

 

衆議院インターネット審議中継より

先週に引き続き、憲法審査会が開会されました。先週来、主張してきましたが、テーマを緊急事態条項に絞って議論が行われたことは画期的でした。

 

▲議論するテーマを明記した憲法審査会の開会案内

 

オンライン国会の実現に向けた「出席」の憲法解釈の確定は、憲法改正が不要であることを確認したものでした。今日は逆に解釈では限界がある、すなわち憲法改正しないと対応できないことについて、各党が議論を交わしました。

 

今後も「開いて議論し成果を出す」国会になるよう、議論を先導していきたいと思います。

 

参考▶国民民主党が2020年12月にとりまとめた「憲法改正に向けた論点整理」はこちら。新時代の人権保障と統治機構の再構築を通じて憲法の規範力を高める具体的な改正条文案を盛り込んでいます。

憲法審査会発言要旨
(2022年3月24日)

今週は定例日に憲法審査会が開催されたことを歓迎したい。また、緊急事態条項を中心としてテーマを絞って議論することには大変意義があると考える。これからも、言いっぱなしではなく具体的な議論の成果を出せる運営を期待したい。


改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べておきたい。それは「緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政府による恣意的な権力行使によって、憲法上の権利が制限されうる状態こそが危ない」ということだ。

 

一般的に流布する「緊急事態条項」のイメージは、「行政府の簡易・迅速な権限行使」を可能とする“権限行使の容易化条項“としての緊急事態条項である。しかし、私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、むしろ「公共の福祉」などの漠たる規定を根拠として、行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する“権限行使の統制条項“としての緊急事態条項である。

ここで、緊急事態条項に関する国際比較をお示ししたい。これは、ケネス・盛・マッケルウェイン東大教授の研究で示されたもので、1789年から2013年までに制定された約900にのぼる憲法をデータ分析したものだが、

  • 2013年時点で、93.2%の憲法において緊急事態条項を含まれており、今や緊急事態条項は憲法における最も共通した項目の一つとなっていること。(ちなみに、表現の自由は95.5%の憲法に明記されている)
  • 他方で、緊急時における人権保護規定の停止や緩和規定が憲法に盛り込まれている割合は63.7%で、過大な権力を委任することには、特に第2次世界大戦後、慎重になっている傾向があるということ。
  • また、緊急事態が宣言できる状態については、一番多いのが外国からの武力攻撃で64%、次に、内乱で45.6%、次が災害で39.7%で1990年以降、最も急ペースで規定率が上がっていること。
  • その一方、緊急事態を宣言できる状況を法律で定めるとしている憲法は10%に満たないということ。これは、緊急事態を法律で定めると、政府の重大な権限行使を議会の単純過半数で決定できるため、法律に委任することに慎重な態度をとっていると考えられる。

国民民主党としては、こうした背景も踏まえつつ、行政府による権力濫用を防止する観点から、「緊急事態」は限定列挙すべきとの考えである。具体的には、

  1. 外国からの武力攻撃
  2. 内乱・テロ
  3. 大規模自然災害
  4. 感染症の大規模まん延

の4つのカテゴリーを原則とすべきと考えている。何を緊急事態とするのか、まずこの点について、憲法審査会で議論を深め共通認識を形成したい。

次に、緊急事態が宣言された時の「効果」についての国際比較を紹介したい。

 

  • 一番多いのは、22.8%の憲法が規定している。「議会任期の延長」と「解散権の制限」である。
  • 次に規定率が高いのが、緊急事態宣言下の憲法改正(発議)不可の規定である。これが12.5%。
  • なお、法律と同等の効果を持つ政令について定めているのは7.4%にとどまっている。

こうした点も踏まえ、我が党としても、前回も提案した「議員任期の特例」についての議論をまず急ぐべきだと考える。任期満了時に正常な選挙ができないような事態に陥った場合に、任期の特例延長の規定を創設すべきと考える。この点に関して、憲法54条2項の参議院の緊急集会は解散時だけでなく、任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、その解釈を本審査会で明らかにすべきことを改めて提案したい。

次に、ヨーロッパにおける「緊急事態」と「人権保障」について触れておきたい。日本における緊急事態条項の議論については、どうしても日本特有の護憲・改憲論の磁場から離れて行うことが困難であるが、一度、こうした古い構造から離れて議論してみることが必要だと考える。そのための素材として、欧州評議会に置かれたヴェニス委員会の見解を紹介したい。ヴェニス委員会とは、欧州評議会の下に1990年に置かれた憲法問題についての諮問機関である。加盟国に法的助言を行っており、日本もオブザーバー参加している。

 

そしてこのヴェニス委員会は、「憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だ」と主張している。特に、コロナ禍を経て2020年6月に策定された報告書の中で、「緊急事態と緊急事態権限に関する基本的な規定を憲法に盛り込むべきであり、その中に、いかなる権利が停止され、いかなる権利は逸脱から許されずいかなる状態においても尊重されなければならないことを明確に示す規定を含むべきである」としているのである。続く2020年10月の報告書でも同様の趣旨が述べられている。

私たち国民民主党は、ヴェニス委員会が指摘しているように、政府による緊急権の濫用を防止するためには、行使できる状況、効果、発動に関する規定を詳細かつ明確に憲法に規定すべきと考える。

改めて申し上げたいのは、「緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政府による恣意的な権力行使によって、憲法上の権利が制限されうる状態こそが危ない」ということである。


だからこそ、憲法の規範性を生かすことが重要であり、国民民主党が考える“権限統制条項“としての緊急事態条項を検討する際には、権限統制ツールとして、大きく2つのカテゴリーの統制が必要だと考える。

  1. 原則国会の事前承認を求めるなどの「手続的統制」
  2. 絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの「内容的統制」

こうした緊急事態における統制の具体的内容について現在党内で議論しているところであり、まとまれば条文の形でお示ししたいと考えている。いずれにせよ、緊急事態条項については議論すべき論点が多々あるので、ことの緊要性に鑑み、次回も緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたい。そのためにも、憲法審査会を毎週開催することを、改めて求めて発言を終える。

ケネス・盛・マッケルウェイン教授を参考人でお越しいただくことも検討していただきたい。

 

衆議院インターネット審議中継より