たまき雄一郎ブログ

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衆議院議員玉木雄一郎のオフィシャルブログです。

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全国の国民民主党の仲間の皆さんへ

連日、暑い日が続く中での活動に敬意を表します。今朝も街頭に立っている仲間もいることでしょう。熱中症など体調には十分に気をつけてください。

 

さて、国内外で政治的混乱が生じ、閉塞感と政治不信が漂う今こそ、国民民主党結党の原点の思いに立ち返ることを皆さんに呼びかけたいと思います。

私たちは、2020年、批判・反対に終始する政治から脱し、新しい日本を作るため、「つくろう新しい答え。」を旗印に、「対決より解決」を掲げて設立し、政策本位で各種課題に取り組んできました。この姿勢はこれからも変わりません。

 


2020年9月15日 国民民主党設立大会

 

昨年末に自民党の派閥の裏金問題が発覚し、自民党政治に対する不信感が極度に高まりました。これを容認することは私たちの掲げる「正直な政治」に反します。しかも、あれだけの事態を起こしておきながら、自民党が先の国会で成立させたのは抜け穴だらけのザル法でした。そして、一部の野党は、そんなザル法の成立に助け舟を出す始末でした。

他方、期待を担うべき野党第一党は、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、自衛隊を憲法違反だと主張する政党との繋がりを深めています。また、地政学的なリスクの高まりによるエネルギーの自給体制の強化や、AIの活用により電力消費量の増大への対応が求められる中で、原発ゼロ政策を依然として綱領に掲げています。

こうした政治状況の下、多くの良識的な国民は、どこにも持って行きようのないもどかしい思いを抱いているのではないでしょうか。

私たちは、そんな国民の思いを受け止めることができる存在でなければなりません。

「改革中道」

私たちの目指す「中道」とは、自分の考え方や価値観だけで物事を裁かないことを意味します。つまり、異なる意見も認めたうえで、熟議を尽くし、どのように結論を見い出すかという議論の作法です。中道とは民主主義そのものと言っても過言ではありません。

私たちのこの考えは、あたりまえ過ぎて面白みがないかもしれません。しかし、耳に聞こえの良い極論や二元論の中に課題を解決できる真の答えはありません。SNSの普及によって極論や陰謀論が蔓延しやすくなっているからこそ、この中道の理念が重要なのです。

データとファクト(事実)に基づき、国民のための現実的な政策を模索し実現を図る、そんな私たちの基本姿勢が今の日本に必要なのです。

かつて、日本は「政治は三流、経済は一流」と言われた時代がありました。しかし、政治がダメなら経済もダメになってしまうことを、この30年は証明したのではないでしょうか。

今、私たちが目撃しているものは自民党の危機ではなく、日本の危機です。

既存の政治の枠組みを変える「改革」の時が来ています。

そして、古い慣習、因習を変えていけるのは、極論ではなく、データとファクトに基づく冷静な議論です。

「新しいあたりまえ」

私たちは、非現実的な極論や、紋切り型の正論ではなく、冷静な議論で変えるべきものを変え、日本に「新しいあたりまえ」を作っていかなくてはなりません。そのためには、まさに、私たちの「偏らない現実的で正直な政治」が必要なのです。

大きな声をあげることはしないけれど、この国の未来に危機を感じている多くの良識的な日本人の声に応える政治を実現していきましょう。

そのために、私たちは強く大きくなる責任があります。

がんばりましょう。

この夏を、国民の思い受け止め、そして、私たちの思いを伝える夏にしていきましょう。

来週水曜にも内閣不信任案の提出が報じられる中、事実上最終回となる憲法審査会が開かれました。(内閣不信任案が提出されるとその採決までは全ての国会審議はストップします)岸田総理は今年9月までの総裁任期中の改憲を約束してきましたが、もはや政治責任が問われる事態です。

 

内閣提出法案を人質に憲法改正条文案の起草をさせない立憲民主党も同じです。55年体制のような「決められない政治」を国民は求めていません。

 

その中で自民党の中谷元筆頭幹事から条文化作業に向けたメモが提出されたことは一歩前進でした。国会は来週閉会しますが、閉会中審査で少しでも条文化作業を進めるべきです。

 

 

自民党中谷元筆頭幹事が配付したメモ

憲法審査会発言要旨(2024年6月13日)

 憲法審査会は本日、事実上の最終回を迎えた。結局、今国会で条文案どころか「起草委員会」も設置されず、岸田総理の今の総裁任期中の発議は不可能となった。今、猛烈な徒労感を覚えている。これは岸田総理の政治責任が問われる事態である。また、条文案を出したら他の法案審議を止めると言う立憲民主党、そのことに唯々諾々と従う自民党にも苦言を呈したい。憲法審査会には政局を持ち込まないとの理念が形骸化している。この停滞する憲法論議は、停滞する日本、決められない日本を象徴しているように感じるのは私だけではないはずだ。


 他方、先ほど自民党の中谷幹事からご説明いただいた内容には概ね賛成だ。自民党に少しでもやる気があるなら、せめて、起草委員会の設置だけでもここで決め、閉会中審査で本日のメモ及び3会派の条文案を踏まえた条文化作業を進めることを求める。先ほど発言した立憲民主党の篠原孝委員が議員任期の延長だけでなく「緊急政令」も加えたいなら、ぜひ条文化作業に加わって欲しい。


 これまでの議論で、選挙困難事態に対応するには憲法改正が必要であることは明らかになった。本日もまず前回の立憲民主党本庄幹事の「繰延投票で対応できる」との発言に反論し、あわせて自民党山田委員の質問にも答えたい。

 

  1. まず、東日本大震災の発災6日後の平成23年3月17日、地方議員の任期延長特例法を審議した国会で、任期満了時に選挙を適正に行うことが困難な場合に繰延投票の適用が可能か問われた片山総務大臣は次のように答弁している。
「御指摘の繰り延べ投票というのは、これはちょっと趣旨が異なりまして、告示をして既に選挙が走っている間に、その選挙期間中に何か不測の事態が生じて投票できないといったときに投票日を延ばすということであります。」
これは公選法を所管する総務大臣の答弁だが、まず繰延投票は、原則総選挙の公示後や参院通常選挙の告示後に緊急事態が発生した場合にしか適用できない。もし公示や告示の直前に大規模災害等が発生し時に繰延投票を活用する場合は、選挙実施困難だと認識しつつ、いわば「ダミー」の選挙期日を公示又は告示した上で、投票を繰り延べることになる。しかし、こうした選挙や繰延投票のあり方は、本来の制度趣旨に反すると言わざるを得ない。
  2. その上で、前回の最初の答弁について反論したい。本庄委員は「公選法第33条の2により、衆議院議員の補欠選挙では、任期満了に係る場合では最長約1年間、任期満了に係らない場合でも最長で7か月強、欠員が生じうることを想定しています。したがって、憲法上も、少なくとも7か月強ないし1年は繰延投票が認められる」と答弁されたが、しかし、数選挙区でのみ行われる補欠選挙と、全ての衆議院議員や半数の参議院議員が対象となる総選挙や参院通常選挙において「広範かつ長期に」繰延投票を実施することを同列に論じることは不適切である。そもそも、繰延投票は、ごく限られた投票所で投票ができない場合に短期間投票を選挙期日を繰り延べるものであって、多くの選挙区で一斉に繰り延べるような事態を想定していない。また、総選挙や参院通常選挙で長期間にわたって順次繰延投票が行われると、比例代表選出議員が選出されず、議席数が長期間確定しない。それに対し、補欠選挙では比例がないのでそのようなことは生じない点でも状況は大きく異なる。あてはめるべきではない事案に、無理やり繰延選挙をあてはめていると言わざるを得ない。
  3. 次に、選挙困難事態において繰延期間中の選挙運動に関して、法律改正で対応できるとの反論があったが、しかし、長期間にわたって投票を繰り延べる場合、選挙運動期間を制限あるいは短縮する旨の法律改正を行うとすれば、それはもはや繰延投票ではなく、事実上、国政選挙そのものを延期する制度になる。そのような法律による国政選挙の延期は、衆議院解散から40日以内に総選挙を行わなければならないと定めた憲法54条(総選挙の実施期限)との関係で違憲の疑いが生じる。
  4. 3つ目に、長期間にわたって議員が不在となるような判断を選挙管理委員会に委ねても問題ないと主張されたが、であれば、東日本大震災の際に民主党政権は繰延投票ではなく、なぜ特例法で対応したのか。しかも、前回紹介したように、特例法は再延長されたが、それは発災後4ヶ月経っても選管業務に人が割けないとする福島県選挙管理委員会の要請によって行われている。広範な地域において長期間選挙の適正な実施が困難な、統治機構の根幹に関わるような事態の判断を選挙管理委員会に委ねるのは適切ではなく、内閣と国会で責任を持って選挙の適正実施についての判断を行うべきである。
  5. 最後に、いわゆる「スーパー緊急集会」を認めても憲法上の制約はないと主張されたが、それは立憲主義を蔑ろにする発言だ。まず(1)解散に起因する衆議院の不在期間が最長70日であることは文言上一義的に明白である。次に、(2)参議院の緊急集会は、憲法が定める「両院同時活動の原則」に対する例外であり、厳格に解釈すべきである。さらに、(3)70日を超えた場合にどこまでが限度かが分からず、その濫用を止める手立てが憲法上用意されていない。以上を踏まえると、参議院の緊急集会は、あくまで最大70日程度の期間に次の国会が召集されることを前提とした一時的、暫定的、限定的な制度であり、これを超えて対応することは憲法違反であり、権力濫用の危険がある。

 以上のことから、選挙困難事態に繰延投票で対応することはできず、憲法違反の恐れすらある。やはり、70日を超える長期にわたり選挙の一体性を害するほど広範に選挙実施が困難な場合に備え、選挙期日の延期とその間の議員任期の延長を可能とする憲法改正が不可欠である。


 次に、自民党の山田委員の質問に答えたい。

  1. 70日を超えないが、40日を超えて選挙の実施が困難なケースでは選挙困難事態にならず、任期延長はできないではないかとの質問をいただいたが、この場合は、むしろ緊急集会で対応すべき射程だと考える。ただし、解散から40日を超えて選挙を実施することは憲法の条文上は認められないので、憲法54条1項を改正し、解散から40日以内に総選挙を実施できないときは70日以内に総選挙を行い、その後速やかに国会を招集する旨の規定を設けるべきと考える。その上で、70日を超えて選挙が選挙が困難な場合については議員任期の特例を認める、といった棲み分けを憲法上明確にすることが適切と考える。
  2. 次に、解散で一旦失職した衆議院議員が自らの身分を復活させる決議に加わるべきではなく、参議院の緊急集会で復活手続を踏むべきとの意見をいただいた。一案だとは思うが、解散によって衆議院の身分を失わしめた内閣自身が、選挙困難を認定する以上、自らの行った行為を撤回したと理論構成できるので、内閣の認定を以て身分が復活するとしても民主的統制に問題はないと考える。そもそも、議員任期の延長のような統治機構に関わる事柄は、衆参のできるだけ多くの議員が決することが適切だと考える。
  3. 最後に、解散の禁止と内閣不信任案の禁止はセットではないかとの質問だが、平時におけるチェックアンドバランスとして解散と内閣不信任をセットで考えるのが当然だが、他方、緊急時においてこそ、立法府が一義的に責任を持ち、行政府はその権限の範囲内で対応するという国会中心主義を徹底することで国民の権利保護に万全を期すべきと考える。緊急時において、与党も含めた大半の議員が、どうしてもこの総理大臣や内閣には緊急時の対応を任せられないとなる場合もあり得ることから、最終手段として、内閣不信任決議を残しておくべきと考える。

 以上、立憲民主党及び自民党の委員からの質問に返答させていただいたが、もう論点が出尽くしていると思うので、閉会中にも憲法審査会を開いて条文化作業を進めることを求めたい。もし9月までに条文化作業が全く進まないのであれば、岸田総理は約束違反で総裁の職を辞すべきではないか。このことを申し上げ、今国会最後の発言としたい。

 

衆議院インターネット審議中継より

新憲法の制定を綱領に掲げる自民党ですが、憲法改正実現本部では憲法改正原案の今国会提出に向け、他党との協議を本部長一任とする一方、衆参の国対委員長が憲法改正原案の提出よりも政府提出法案の成立を優先する姿勢を公言するなど、迷走しています。

 

自民党は2018年に4項目のたたき台素案を提示してから6年以上経ても、条文案へのアップデートすらしていません。国民民主党は昨年6月、緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正条文案を維新や有志の会とともにまとめています。

 

自民党には、一貫した対応を求めたいと思います。幹部がバラバラな発言を続けているようでは、本気度を疑わざるを得ません。もし、改正原案の国会提出ができなければ、岸田総裁の責任にも直結する問題だと思います。

 

衆議院インターネット審議中継より

 

憲法審査会発言要旨(2024年6月6日)

 

 憲法審査会も今国会、残り2回となった。「起草委員会」の速やかに設置し条文案づくりに着手することを繰り返し提案してきたが、もう時間がない。昨日、自民党の憲法改正実現本部は、今国会中の(憲法改正原案の国会)提出に向け他党との協議を古屋本部長ら執行部に一任したと報じられているが、一方で同日、自民党の浜田国対委員長は「ますは今ある法案を全て通す努力を優先すべき」と発言したと報道されており、慎重な姿勢を示している。一昨日、石井参院国対委員長に至っては、「国対担当の使命は政府提出法案を全て成立させることだ。条文案が出てきて法案審査に支障が出ないよう、しっかり対応したい」とまで述べたそうだ


 自民党の方針がバラバラではないか。今国会中の憲法改正原案の国会提出は諦めたのか。中谷元筆頭幹事の考えを確認したい。
 

 やる気がわずかでも残っているなら、来週はせめて「要綱形式」で議論をしよう。もう時間はない。もし、今国会で改正原案の提出にすら至らなければ、それは自民党総裁としての総理の責任にも直結する。発議なんて夢また夢だ。


 私たち国民民主党が「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」の条文案をまとめてから1年半、維新や有志の会とともに3党派の共通条文案を作ってから丸一年が経過した。この間、自民党は何をしていたのか。2018年に4項目のたたき台素案を提示してから6年以上経ても、条文案へのアップデートすらしていないではないか。


 やるならやると覚悟を決めて、スケジュールを決め、戦略的に取り組んでもらいたい。例えば、本気で今国会で憲法改正原案の国会提出を進めたいなら、野党案を上回るような政治改革案を出して、国会をもっと円満に運営すべきだったのではないか。今のような裏金を許すザル法では国会が混乱するのは当たり前で、憲法改正に向けた戦略的な取組ができていないことには苦言を申し上げておく。


 残りの時間は、立憲民主党の本庄幹事が質問に答えてくれたので再質問する。

  • まず、大規模災害が発生して選挙が困難な時に(公選法57条の)繰延投票で対応できるとの主張だが、それならなぜ東日本大震災の時にも繰延投票で対応しなかったのか。選挙委員会が選挙の実施可否を正しく判断できるというが、2011年7月13日に福島県選挙管理委員会が、議員任期の半年延長を定めた特例法の再延長を衆参の特別委員会に要請している。発災から半年経っても選挙事務に人員を割くことができなかった。大規模災害時には、選挙管理委員会も機能しないし、長期にわたって国会議員がいなくなる事態を生じさせる判断を選挙管理委員会に委ねるべきではない。
  • 議員が辞任して補欠選挙が行われるまでは長期に欠員が生じても問題ないと言うが、それはあくまで少数の欠員が対象であって、私たちが問題としている「選挙の一体性が害されるほど広範に」「長期にわたって」選挙が困難な事態に、あてはめるべき話ではない。
  • 長期にわたって選挙ができず議員がいなくなっても、参議院の緊急集会で対応できるというが、私たちは、70日を超える長期にわたって参議院の緊急集会で対応するには憲法上限界があると考える。いわゆる「スーパー緊急集会」を認めるなら憲法改正が必要だ。

 やはり「長期にわたって」「選挙の一体性が害されるほど広範に」選挙が困難な事態、すなわち、選挙困難事態に備えて、選挙期日の延期とその間の議員任期の延長ができる規定を憲法に設ける必要があると考える。参議院の緊急集会で議論するテーマも、基本的には内閣が判断するので、行政権の権限が相対的に強まる可能性もある。国会中心主義を貫き、立憲主義を徹底するためにも、国会機能を維持する憲法改正が必要だ。


 最後に、与野党各党に呼び掛けたい。国民投票広報協議会の機能に関して、フェイクニュース対策の議論が行われているが、憲法審査会での議論の現実を、変な煽りを入れずに、それぞれの支援者に説明してもらいたい。


 例えば、今の自民党の9条改正案によって、違憲論が解消されるとともに自衛隊の権限が大きく拡大し新たにできることが増えるような説明をするのもフェイクだし、一方で、9条改正で、帝国陸海軍が復活し軍国主義日本が復活するかのごとき説明もフェイクだ。具体的な法令の整備も含めて自衛隊が実際にできることは規定されるのが現実だ。


 ネット上のフェイクニュースを心配する前に、私たちが極力扇動的な言葉や行動を控え、冷静な憲法論、法律論を展開することが最大のフェイクニュース対策になる。このことを申し上げて発言を終える。

先週は国民民主党特別党員の方に憲法審査会を傍聴していただきました。これからも開かれた憲法の議論をしていきたいと思います。

 

今国会の会期は6月23日までです。今日を除くと憲法審査会は残り3回しか開けません。先週も述べた通り「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」の論点は出尽くしています。早く憲法改正の要綱案を示して具体的な議論すべきです。

 

国民投票法56条3項で定める投票用紙の「別記様式」

 

今週は国会による憲法改正が発議された後、実際に国民投票で使用される投票用紙について詰めの議論をしました。橘法制局長の答弁で、衆参の国会議員20人から構成される国民投票広報協議会の役割が大きいことが示されました。

 

衆議院インターネット審議中継より

 

憲法審査会発言要旨(2024年5月30日)

 

 憲法審査会も今国会、残り3回となった。何度も言うが、「起草委員会」を速やかに設置し条文案づくりに着手しよう。このままだと、もう間に合わない。せめて「要綱形式」で議論することを始めよう。また、今日も議論となった国民投票法のネット規制についても何度も申し上げてきた。ケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザーを呼ぶべきと10回以上提唱してきた。しかし進んでいない。全てが遅い。中谷与党筆頭幹事には、改めて改憲に至るスケジュールと戦略を明示していただきたい。


 以上を申し上げた上で、橘局長に国民投票法の「投票用紙」について質問したい。国民投票法56条第3項には「投票用紙は、別記様式に準じて調整しなければならない。」と定められているが、もし複数の憲法改正案がある場合は、それぞれの項目ごとに賛成または反対を示す複数の投票用紙を用意するのか。また、条文ごとの賛否を問うのか、事項ごとに賛否を問うのか答えてほしい。

橘法制局長答弁:複数の改正項目があれば、それぞれに賛否を問う複数の投票用紙を作る。また、条文ごとではなく、項目・テーマごとに投票用紙を作ることになる。

憲法審査会事務局配付資料(抜粋)

 

 そして、本日配布された「資料2」には、「複数案が発議された場合の区別のための投票用紙等の文言を含む」とされているが、例えば、賛否を問う改正項目を「緊急事態条項」という文言で投票用紙に記すのか、「投票困難時における国会機能の維持条項」という文言で記すのかで、賛否に大きな影響を与えると思う。こうした区別のための文言も広報協議会が決めるのか。あわせてお答えいただきたい。

橘法制局長答弁:広報協議会で決めることになる。

 次に、「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」について申し上げる。もはや論点は出尽くしており、これ以上発言するすることはないが、先週、立憲民主党の本庄幹事が欠席していたので同じ質問をする。答えていただきたい。


①まず、選挙困難事態には繰延投票で対応できる言ったが、そもそも、繰延投票で何日間までなら延期できると考えるのか。70日以上を超えてもいつまでも繰延可能なのか。


②次に、2011年に野田内閣で閣議決定されているとおり、仮に法律で選挙期日を延期できたとしても、その間の議員任期を延期することはできない。仮に、繰延投票で70日を超える長期にわたって選挙期日を延期する場合には、その間、国会議員が不在になる。私たちは、70日を超える長期にわたって参議院の緊急集会で対応するには憲法上限界があると考える。いわゆる「スーパー緊急集会」を認めるなら憲法改正が必要ではないか。そして、こうした長期にわたる議員不在の状況を生み出す判断を、選挙管理委員会に委ねて良いと考えているのか。あわせて答えていただきたい。


③最後に、政府見解では、最初の選挙期日さえ解散から40日以内に設定されていれば、繰延べられた投票期日は40日を過ぎても問題ないとしているが、逆に言えば、形式上でも選挙はスタートさせておく必要がある。そうなると「期日前投票」で大きな問題を生じる。投票が困難だから選挙期日を延期したのに期日前投票ができるのはおかしいし、選挙困難事態に選挙活動ができるのもおかしい。また、仮に違反行為があっても、災害で職員も被災していれば警告もできない。それでも繰延投票で対応できると考えるのか。


 やはり「長期にわたって」「選挙の一体性が害されるほど広範に」選挙が困難な事態、すなわち、選挙困難事態に備えて、選挙期日の延期とその間の議員任期の延長ができる規定を憲法に設ける必要があると考える。

通常国会の会期も残り1ヶ月を切りました。「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」の論点は出尽くしています。

 

立憲民主党から、前々回になって天災などの緊急事態でも公選法57条に基づく繰り延べ投票で投票日の延期を繰り返せば、憲法改正は必要ないとの主張がなされましたが、仮にそうだとすると東日本大震災後の首長選挙や地方議員選挙も繰り延べ投票で対応すればよかったはずです。しかし、当時の民主党政権は特例法によって議員任期を延長しました。

 

この矛盾に対して、立憲民主党からの答弁はありませんでした。速やかに条文案づくりに着手し、危機に備える必要があります。

 

衆議院インターネット審議中継より

 

憲法審査会発言要旨(2024年5月23日)


 憲法審査会も今国会、残り4回となった。「起草委員会」を速やかに設置し、条文案づくりに着手することを提案する。そして、本審査会において条文ベースでの議論を受け入れていただけないのであれば、せめて、「要綱形式」で議論することを提案する。


 「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」については、もはや論点は出尽くしており、これ以上発言するすることもあまりないが、先週、立憲民主党の本庄幹事から繰延投票で対応できるとの意見が出たので、今日は繰延投票について何点か質問するので、答えていただきたい。


 まず、公職選挙法57条に規定する繰延投票とは「天災その他避けることのできない事故により、投票を行うことができない」場合に、選挙管理委員会は、更に選挙期日(投票日)を定めて投票を行わせなければならない、と定められている。現行の公職選挙法の下で行われた国政選挙の繰延投票は、1965年と1974年の参議院選挙のときの2回だけで、いずれも1週間の延期であり、長期にわたり、広範囲に投票期日が繰り延べられた例はない。


 立憲民主党は、選挙ができるようになるまで投票期日を何度でも延期すれば問題ないと主張しているが疑問があるので、3問質問したい。答えてほしい。


①繰延投票とは、選挙期日に投票所で投票ができないために、投票ができると思われる別の日を都道府県の選挙管理委員会が決めて行われる投票である。そもそも今、私たちが議論しているのは、大規模災害等によって70日を超えて長期にわたって広範に選挙ができないケースであって、台風や集中豪雨のように短期で終わる事象ではない。長期かつ広範に選挙ができない事態に陥った時に、その時点で、選挙が可能と思われる別の選挙期日を正しく決められるのか。そもそも、繰延投票で何日間までなら延期できると考えるのか。答えを求めたい。


繰延投票に係るこれまでの政府答弁は、最初の選挙期日さえ解散から40日以内に設定されていれば、繰延べられた投票期日は40日を過ぎてもいいとの立場であるが、逆に言えば、解散から40日以内に公示されていなければ憲法違反になる可能性がある。つまり、大規模災害が発生しても形式上は選挙はスタートさせなくてはならない。これが「期日前投票」で大きな問題を生じることを指摘したい。2003年に期日前投票が導入され、投票は選挙期日つまり投票日だけでなく、公示又は告示の翌日から投票できる。だから、いくら投票期日を延期しても、期日前投票はできるし、選挙運動も可能だ。投票ができないから選挙期日を延期しているのに、期日前投票ができるとするのは矛盾。また、選挙困難事態に選挙活動を認めることも矛盾。仮に違反行為があっても、災害で職員も被災していれば警告もできない。それでも繰延投票で対応できると考えるのか。答えてほしい。


③最後に、仮に法律で国政選挙の選挙期日を延期できたとしても、その間の議員任期を延期することはできない。これは、2011年に野田内閣で閣議決定されている。仮に、70日を超える長期にわたって選挙期日を延期する場合、その間、国会議員が不在になるが、長期にわたって参議院の緊急集会で対応するには憲法上限界があることなども申し上げている。もし「スーパー緊急集会」を認めるなら憲法改正が必要だということも何度も申し上げている。そして、こうした長期にわたる議員不在の状況を生み出す判断を、選挙管理委員会に委ねて良いのかという問題もある。あわせて答えていただきたい。


 やはり、「長期にわたって」「選挙の一体性が害されるほど広範に」選挙が困難な事態、すなわち、選挙困難事態が発生した時には、国会機能を適切に維持するために、選挙期日の延期とその間の議員任期の特例延長に関する規定を創設することが必要だと考える。


 最後に残る反論は、選挙困難事態なんて発生しない、というものになるだろうが、前回も述べたとおり、危機に備えるかどうかを決めるのは私たちしかいない。国民からの付託を受けた私たち国会議員が決めなければ答えは出ないのである。しかも、立憲民主党所属の多くの議員の皆さんも、東日本大震災の発災の際、選挙ができずに、特例法を制定して204日もの長期にわたり投票期日を延期し、その間地方自治体議員の任期を延長するといった経験をしたはずだ。


 逆に、繰延投票で対応可能なら、なぜ、あの時、繰延投票で対応しなかったのか。やはり、繰延投票では問題があるとして、選挙期日の延期と議員任期の特例法を作ったのではないのか。


 立憲民主党が政権を目指すなら、危機に備える意思と能力を備えていることを示すべきではないか。このことを最後に申し上げて発言を終える。

憲法99条の憲法尊重擁護義務、すなわち「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあることを理由に、国会議員が憲法改正を議論するのは憲法違反である、という主張をネットなどで時々見かけますが、これは根拠のない言説です。

 

今日の憲法審査会では、衆議院法制局長から、過去の審査会での参考人(有識者)答弁で、憲法違反ではないとされていることを紹介していただきました。

 

衆議院インターネット審議中継より

憲法審査会発言要旨(2024年5月16日)

 憲法審査会も今国会、残り5回となった。今週からは「起草委員会」を設置すべきと先週提案したが、まだ設置されていない。もう論点は出尽くしているので、来週からは、ぜひ、「起草委員会」を設置し、「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」について条文案づくりに着手することを改めて提案する。
 

 議論の分かれる論点についても、具体的な条文案をベースで議論した方が国民にも分かりやすいし、書いてもいないことで誤解や不安が膨らむことを防止できる。起草委員会で条文案を作成し、その上で、本審査会において「要綱形式」で議論することを提案する。
 

 特に、選挙困難事態に、選挙期日を延期し、議員任期を延長することについてのルールと手続きを定めることには、多くの国民が理解を示してくれるはずだし、今後は、憲法改正の必要性について、国民の皆さんの理解を丁寧に得ていくことが必要だ。
 

 その意味で、今日は、ネットなどで時々見かける、憲法99条の憲法尊重擁護義務、すなわち「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあることを理由に、国会議員が憲法改正を議論するのは憲法違反である、との言説が正しくないことを明確にしておきたい。
 

 まず、法制局に確認したい。私たち国会議員が憲法改正に取り組むことは憲法99条の憲法尊重擁護義務に反するのか。また、国会議員たる内閣総理大臣が憲法改正について発言することは憲法99条の憲法尊重擁護義務に反するのか、過去の審査会での議論も踏まえて、お答えいただきたい。

 (橘法制局長答弁)内閣総理大臣や大臣が、国会議員として憲法改正について発言等を行うことは、憲法審査会に出席した参考人である宍戸先生や小山先生からは、憲法尊重擁護義務に反しない旨の意見表明が行われている。

 前回の衆院選前に行われた2017年6月1日の憲法審査会で、赤嶺先生が参考人の宍戸先生及び小山先生に質問された時、両先生ともに憲法尊重擁護義務に反しないと明確に答弁をしている。私も全く問題ないと考える。ここは明確に確認しておきたい。
 

 そもそも日本国憲法は96条で憲法改正手続を定めており、しかも、国会に独占的にな発議権を付与している。つまり、改正手続を定めた96条も含めて擁護する義務がかかっているし、国会が、必要に応じて憲法をアップデートし国民の権利保護に万全を期すことこそ「憲法保障」の一環になると考える。


 最後に、前回議論があった、選挙期日の延期と議員任期の延長は「繰延投票で可能」との意見に改めて反論しておきたい。1950年の公選法制定後の国政選挙では、1965年と1974年の参議院通常選挙で繰延投票が行われている。いずれも集中豪雨のため、ごく一部の投票所において、1週間だけ投票が繰り延べられている。地方選挙の例を見ても1週間を超えて繰り延べられたことはない。
 

 このように繰延投票は、その要件や実施例から言っても、ごく限られた投票所で投票が実施できない場合に1週間程度行われるものであって、70日を超えるような長期にわたって広範に行われることを想定していない。何より、仮に投票期日を長期に繰り延べたとしても、その間、議員任期が延長されるわけではなく、長期にわたって議員がいなくなる事態は避けられない。なお、法律の制定によって、国会議員の投票を繰り延べるとともに任期延長を行うことはできないことは、2011年に野田内閣で閣議決定されている。
 

 やはり、「長期にわたって」「選挙の一体性が害されるほど広範に」選挙が困難な事態、すなわち「選挙困難事態」が発生した時に、国会機能を適切に維持するためには、憲法を改正して、選挙期日の延期とその間の議員任期の延長に関する規定を創設することが必要である。
 

 最後に残るのは、選挙困難事態が発生するかどうかの判断であるが、それは正直、誰にも分からない。しかし、私たちは、東日本大震災の発災の44日後に予定していた市議会議員選挙などが実施できず、特例法を制定して議員任期を延長する経験をしている。同じことが国政選挙の任期満了時や解散時に発生することは十分想定し得る。議員任期が憲法で規定されている以上、そうした場合に備えた憲法改正は必要だ。
 

 前回も述べたが、私たち国会議員は学者や評論家ではなく「立法者」であり、国民の生命や権利を守るため、その可能性がある限り、あるべき法制度を構築する責任を負っている。危機に備えるかどうかを決めるのは学者ではない。国民からの付託を受けた私たち国会議員が決めなければ答えは出ない。


 改めてこのことを申し上げて、委員各位のご理解を求めます。

5月3日は憲法記念日でしたが、新聞などの世論調査などを見るに、憲法審査会での議論がメディアも含めて国民の皆様に伝わっていないと実感しました。

 

そこで、具体的な憲法改正条文案をベースとした議論やNHK中継の導入など、国民的な議論を喚起していくための3つの提案をさせていただきました。

 

なお、立憲民主党の議員から、一部の地域で災害が発生して選挙ができなくなった時は、法律で選挙期日を延期して対応すればいいとの発言があったので、野田内閣で閣議決定された答弁書を紹介し、『法律を制定することにより「国政選挙の選挙期日を延期するとともに、国会議員の任期を延長すること」はできない』と指摘しました。

 

衆議院インターネット審議中継より

憲法審査会発言要旨(2024年5月9日)

 憲法審査会も今国会、残り6回となった。今後の運営について以下の3点を提案したい。

 

  1. 来週からは、全会派を入れた「起草委員会」を設置し、これまでの議論を経て、概ね意見の集約が図れた「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」について条文案づくりに着手すること。その際、「3会派案」をベースにしていただきたいこと。
  2. 国民投票広報協議会の規程案を策定すること。
  3. 広く国民に議論を知っていただくためNHK中継を導入すること。

 以上、3点を会長及び幹事の皆様にお願いする。


 議論の分かれる論点についても、具体的な条文案をベースに議論した方が国民にも分かりやすい。というのも、憲法記念日における各種メディアのアンケートを見たが、議論もしていない架空の論点について賛否が示されているものもある。憲法審査会で何を議論しているのか、もっと解像度高く、国民の皆様にお示しする必要があると実感した。


 ちなみに、「憲法改正に賛成ですか反対ですか」という問いがあるが、冷静に考えるとおかしなアンケートだ。例えば、「法律改正に賛成ですか反対ですか」と聞かれたら、多くの国民は、まず、「どの法律ですか?」と問い返すはずだ。憲法改正についても「どの条文をどのように変えるのか」について問うレベルまで具体化する必要がある。また、そのことが無用な不安を払拭することにもつながる。


 特に、大規模災害が発生した場合などに選挙実施が困難な時に、選挙期日を延長し、議員任期を延長することについてのルールと手続きを定めることには、多くの国民が理解を示してくれるはずだ。


 この論点についての国民の理解を得るために、野党第一党である立憲民主党の果たす役割が大きいと考える。各国の例を見ても、与野党が合意できた改憲案には、国民も安心して国民投票で賛成の意を示すとされている。


 立憲民主党の逢坂幹事が述べたように、災害に強い選挙づくりも進めることには私も賛成だ。オンライン投票も可能にすればいい。しかし、それでもなお選挙実施困難な事態は想定し得る。


 前回も述べたように、昨年2月22日に、泉「次の内閣」で閣議了承された「中間報告」(PDF)を見ても、立憲民主党も「選挙困難事態」は否定していないし、緊急集会の位置付け、「射程」について必要あれば憲法に明記することも検討するとしている。


 逢坂幹事から「スーパー緊急集会」についての回答をいたいただいたが、より具体的に答えてもらいたいのは、立憲民主党は、現行憲法下で、憲法改正なく①70日を大幅に超える期間、②憲法上、衆議院の優越が認められる「当初予算案」や「条約」も取り扱えると考えているのか。


 私たちは、参議院の緊急集会の射程は、あくまで「一時的」「限定的」「暫定的」であり、その射程を超える活用を行うなら、やはり憲法改正が必要だと考える。解釈で「緊急集会」の権限、射程を拡大するのは、皆さんが恐れる権力の濫用につながる可能性がある。であれば、衆参同時活動の原則に戻り、選挙実施困難な事態が発生した場合には、選挙期日を延期し議員任期を延長する憲法改正の方が、よりよい改正だと考える。


 もう一点議論を整理するために質問したいのは、昨年、参考人でお越しいただいた長谷部教授がおっしゃった、大規模災害が発生した場合、「選挙が可能となった地域から順次、繰延投票を行なって当選者を決めていけばいい」そして「3分の1以上の議員が選出されたら定足数を満たす」とする考えに同意するのか。例えば、南海トラフ地震が発生し、四国、近畿、東海ブロックの各府県で選挙ができないが、他の地域ではできる場合に、その選挙結果が全国民を代表する選挙としての正当性があると言えるのか。私はとても選挙の一体性が確保されているとは思えない。こうした長谷部教授の考えに、立憲民主党は賛成するのか意見を伺いたい。


 最後に、長谷部先生のような学者と私たち国会議員との間には根本的な違いがある。学者は「既存の条文の解釈」を出発点にして現状を説明する学説を組み立てるのに対し、私たち国会議員は「立法者」であり、それゆえ、例え蓋然性が低くても、可能性がある限り国民の生命や権利を守るため、あるべき法制度を構築する責任を負っているはずだ。危機に備えるかどうかを決めるのは学者ではない。それは国民の生命や権利を守る責任を背負った私たち国会議員である。私たちが決めなければ答えは出ない。


 芦部先生が晩年、9条と自衛隊の矛盾を整理しきれず、「政治的マニフェスト」と考える説まで考えて悩んでおられたようだが、憲法の規範性を外す説に至るなどは本末転倒の議論である。しかし、こうした学者の悩みを取り除くのも、立法者として私たちしかできないことである。前回も申し上げたが、「書いてあることは守りましょう」「書いてあることと異なる事態が生じた時は書いてあることを改めましょう」それが立憲主義の原点である。

今国会3回目となる今日の憲法審査会は、かなり論点が整理された次につながる会になりました。特に、「緊急事態条項」は誤解を与える表現なので、今後は「緊急時における国会機能維持のための改憲」と呼ぶことを提案し、自民党の中谷筆頭幹事にも了解をいただけたことはよかったと思います。

 

衆議院インターネット審議中継より

 

憲法審査会発言要旨(2024年4月25日)

 

 今国会の憲法審査会も残り7回しかない。前回も申し上げたように、今国会では、5会派で概ね意見の集約が図られてきた「緊急事態における国会機能維持を可能とする憲法改正」に絞り、 起草委員会を設置し、条文案づくりを行うことを改めて提案したい。

 そのために、立憲民主党と自民党に、それぞれお願いがある。

 まず、立憲民主党にも前向きに議論に参加していただくことをお願いしたい。立憲民主党も昨年2月22日に泉「次の内閣」で閣議了承された「中間報告」を見ても、「選挙困難事態」は否定していないし、緊急集会の位置付けについて必要あれば憲法に明記することも検討するとしている。

 次に、自民党に2つお願いがある。1つは、緊急事態条項という呼び名を改め、「緊急時における国会機能維持のための憲法改正」と呼ぶようにしてもらいたい。私たちも気をつける。まずは、内閣の権能を強化する改憲ではなく、国会の機能を強化する改憲を優先してはどうか。その意味で「緊急政令」は最初の改憲項目からは外すことを提案する。

 もう1つは、これも何度も申し上げているが、自衛隊の違憲論の解消ができない今の9条改憲案は中途半端なので、党内で改めて議論いただき、少し腰を落ち着けて議論を進めてほしい。先週、私の質問に対して、岸田総理は、日米のグローバル・パートナーシップの推進に憲法改正は必要ないと名言した。実務上の障害もない。最優先は「緊急時における国会機能維持のための憲法改正」でお願いしたい。

 その上で、両党に質問したいので、それぞれ、お答えいただきたい。

 まず、自民党の中谷元筆頭幹事に改めて確認したい。自民党の9条改憲案では「9条1項・2項及びその解釈を維持」としている。ということは、改憲後も自衛隊は、国際法的には軍隊だが、国内法的には軍隊ではないという曖昧さも維持するのか。自民党の自衛隊明記論の改憲案が成立した場合でも、自衛隊は「戦力」でもなく「軍隊」でもないのか、お答えください。
(後ほど中谷筆頭幹事から回答があり、自民党の改憲案でも、自衛隊は「戦力」でもなければ「軍隊」でもない、との回答あり。)

 次に、野党第一党である立憲民主党に質問する。

 立憲民主党は、選挙困難事態において、参議院の緊急集会が、①70日を超える期間、②憲法上、衆議院の優越が認められる「当初予算案」や「条約」も扱える、いわば「スーパー緊急集会」を認めるべきと考えているのか。また、それを憲法改正をせずに実現できると考えているのか、立憲民主党の考えを教えて欲しい。

 「一時的」「限定的」「暫定的」である参議院の緊急集会の権限を超える活用を考えるなら、やはり憲法改正が必要ではないか。解釈で拡大するのは、芦部先生もおそれる権力の濫用につながるのではないか。立憲民主党の「中間報告」でも緊急集会の位置付けについて「憲法又は法律に明記することも検討する。」としており、立憲民主党にも、ぜひ一緒に議論に加わっていただきたい。合意が得られるはずだ。

 戦後、自民党が、9条2項の範囲を解釈で拡大することで憲法の空文化を進めてきたが、(緊急集会の運用を定めた)憲法54条2項・3項の範囲を解釈で拡大するといった「新たな空文化」に立憲民主党が与しないことをお願いしたい。

 「書いてあることは守りましょう。」
 「書いてないことをしたいなら書いてあることを変えましょう。」
 立憲主義を重視するなら、憲法の規範性を守ろうではないか。

 最後に、森会長に対して、「広報協議会の規程の整備」と、NHK中継の導入の可否について結論を出すことをお願いしたい。

今国会2回目となる憲法審査会が開かれました。先般の日米首脳会談で、米軍と自衛隊の指揮統制をシームレスに統合すると岸田総理は述べましたが、そのためには9条改憲が必要ではないかと自民党に投げかけました。

 

衆議院インターネット中継より

憲法審査会発言要旨(2024年4月18日)

 前回も申し上げたように、今の国会でどこまでやるのか、中谷元与党筆頭幹事には、具体的なスケジュールと具体的な改憲項目をイメージして議論を進めることを提案したい。特に、本年9月の岸田総理の任期中までに発議までたどり着きたいのなら選択肢は一つ。それは、5会派で概ね意見の集約が図られてきた「緊急事態における議員任期の特例延長規定」を中心に、テーマを拡散させず、起草委員会を設置して条文案づくりを進めていくべきと考える。


 9条改正については、我が党は反対ではないが、何度もこの場で申し上げているように、自民党の提案している「自衛隊明記論」は、違憲論の解消にはつながらず、法律的には意味がないものと考える。本当に9条改憲を考えるのであれば、もう一度、自民党内でゼロベースで改憲案を議論をやり直してはどうか。


 特に、岸田総理は日米首脳会談で、日本は米国のグローバル・パートナーになると高らかに宣言し、米軍と自衛隊の指揮統制をシームレスに統合すると述べた。であるならば、自衛隊を明確に「戦力」あるいは「軍隊」と位置付ける必要があるのではないか。


 ここでまず、橘法制局長に、自衛隊は「戦力」にあたるのか、「軍隊」なのかについて、現在の政府解釈を説明してもらいたい。

(橘局長からの説明の概要)
 自衛隊は、国際法上(ジュネーブ諸条約上)は軍隊に該当すると解されるが、憲法上自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課せられており、通常の観念で考える軍隊ではなく、戦力でもない。

 今、説明していただいたように、これまでの解釈は「自衛隊は国際法では軍隊に該当するが、国内法では軍隊でも戦力でもない」と言うもので、国際法と国内法で位置付けが異なる理解困難なもの。一般の方が聞いても全く理解できないし、そもそも、自衛隊をそんな曖昧な存在にしておくわけにはいかない。
 そこで、次に中谷元筆頭幹事に改めて確認したい。自民党の自衛隊明記論の改憲案が成立した場合、その自衛隊は「戦力」あるいは「軍隊」になるのか答えてほしい。


 中谷幹事が答えてくれないので私から説明すると、自民党の「自衛隊明記論」では、今と何も変わらない。つまり、自民党の「自衛隊明記論」では、国際法上は「軍隊」だが、国内法的には「軍隊」ではないという矛盾した説明が温存されるのだ。


 9条を改正する場合には、自衛隊に「戦力」としての位置付けを与える必要があるのではないか。自衛隊は「戦力」なのか否かの問題に解決策を示す改憲案でなければ、9条2項との関係で違憲論は解消されない。その意味で意味がない。


 いずれにせよ、9条をめぐるこうした本質的議論に、この国会で決着をつけるのは難しいので、まずは、議員任期の特例延長規定に絞って議論を詰めていくことを提案する。


 後で、中谷筆頭幹事から「戦力ではないが、その機能を書き込む」旨の発言があったが、趣旨がよく分からなかったので議事録を精査することとする。 

 

 次に、野党第一党である立憲民主党(の奥野委員)に質問する。
 

 立憲民主党は、長期間選挙ができない場合には、参議院の緊急集会を活用すればよいとの立場であると承知しているが、その緊急集会は、
 ①70日を超えて対応することが可能で、さらに
 ②憲法上、衆議院の優越が認められる「当初予算案」や「条約」も扱える

いわば「スーパー緊急集会」を認めるべきと考えているのか。また、それを憲法改正をせずに実現できると考えているのか、立憲民主党の考えを教えて欲しい。


 「一時的」「限定的」「暫定的」である参議院の緊急集会の権限を超える活用を考えるなら、憲法改正が必要ではないか。解釈によって権限を拡大するのは、まさに権力の濫用に繋がるのではないか。


 私たちの考えている「緊急事態条項」は、行政権を拡大させるものではなく、むしろ、大規模災害など緊急事態発生時に国会機能を維持するための条項であり、立憲民主党にも、ぜひ一緒に議論に加わっていただきたい。合意が得られるものと信じている。

実質的な議論としてはこの通常国会初となる憲法審査会が開催されました。一昨年の通常国会は初回が2月10日だったので、実に2ヶ月以上遅れての開会となります。

 

私からは、憲法改正をやるやると言ってやらない与党自民党と、一字一句憲法を変えてはならないとこだわる野党第一党立憲民主党のそれぞれに対して、建設的な議論に協力するよう呼びかけました。

 

衆議院インターネット中継より

 

憲法審査会発言要旨(2024年4月11日)

 前回、憲法審査会の議論が行われた日を覚えているか。昨年12月7日だ。あれから約4ヶ月。前回、中谷与党筆頭幹事から「起草に向けた機関」を創設する旨の発言があり、衆議院憲法審査会規程8条では、国会の閉会中も開会できるとされているのに、具体的な条文案づくりは1ミリも進んでいない。それなのに、岸田総理の威勢の良い掛け声だけは続いている。残念ながらパフォーマンスにしか聞こえない。
 
 そこで、まず自民党の中谷筆頭幹事に確認したい。岸田総理は、3月17日の党大会で「総裁任期中に実現するとの思いの下、今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。」と述べたが、これは、9月までの現在の総裁任期中の憲法改正は諦め、総裁選で再選された後に、秋の臨時国会で条文案の具体化を進めるという意味なのか。それとも、あくまで9月までの今の任期中の憲法改正を考えているのか発言の真意を教えてほしい。
 
 もし今の任期中に憲法改正を目指すのであれば、今国会あと10回の審査会で、憲法改正のテーマを絞り込み、条文案を作らないと間に合わない。果たしてできるのか。正直、絶望的だと言わざるを得ない。明確なスケジュールや戦略もなくダラダラと時間を浪費すべきではない。具体的なスケジュールを示してほしい。

 本年9月までの任期中に改憲したいなら選択肢は一つ。それは、これまで丁寧な議論を重ね、5会派で概ね意見の集約が図られてきた「緊急事態における議員任期の特例延長規定の創設」だ。国民民主党、日本維新の会、有志の会の2党1会派による共通条文案もある。森会長にもお願いしたいのは「起草に向けた機関」を具体的に動かしてもらいたい。

 もう一つ自民党に申し上げたいのは、今から他のテーマに手を広げるべきではないということだ。特に、9条の2を創設して自衛隊を明記する、いわゆる「自衛隊明記論」については、何度も申し上げているとおり、違憲論を解消できない法律的にはほとんど意味のないものであって「労多くして益なし」の改憲案だ。まだ、個人的には、2012年の憲法改正草案の「国防軍」規定の方が法律的には整合性が取れていると考える。
 自民党の「自衛隊明記案」の最大の課題は、仮に自衛隊という組織名が明記されたとしても、その自衛隊の行使する自衛権の範囲については、これまで同様に「解釈」に委ねることとしており、条文上、戦力不保持を定めた9条2項との関係で違憲論争が解消されない。そんな9条改正案にどれほどの意味があるのか教えてもらいたい。

 我が党は、自衛隊の行使できる自衛権を戦力不保持を定めた9条2項の例外として明確に位置付けるなど本質的な議論が必要と考えるが、9月までに幅広い合意が得られるとは思えない。自民党として改憲テーマの範囲をどのように考えているのか。最初の発議は、複数の改憲項目である必要があると考えているのか、自民党の考えを教えてもらいたい。

 次に、野党第一党である立憲民主党にもお願いがある。ぜひ、憲法改正絶対反対ではなく、前向きに議論に参加していただきたい。有事における権力統治のあり方たについてはイデオロギーを超え、「国会中心主義」の観点から合意を得られるテーマだと考える。

 能登半島地震が本年1月1日に発生した。あれから100日以上が経過している。先日、珠洲市を訪問したが倒壊家屋はそのままだ。発災直前に任期満了を迎えていたとして、今なお、石川3区では円滑に選挙ができない可能性もある。やはり70日を超えて選挙ができない事態に備えた議員任期の特例延長規定が必要だと考える。この間、もし近藤和也衆議院議員や西田昭二衆議院議員が国会にいなかったとしたら、被災地の実態を踏まえた議論はできただろうか。同じ石川県でも金沢では震災の痕跡もない。やはり被災選挙区の衆議院議員が必要だ。

 立憲民主党は、長期間選挙ができない場合には、参議院の緊急集会を活用すればよいとの立場であると承知しているが、その対応には違憲の可能性があることも指摘しておきたい。論点を明確にする観点から、立憲民主党に答えてもらいたいのは、
 まず、①緊急集会は、「当初予算案」も扱うことができると考えているのか
 次に、②緊急集会は、「条約」の承認ができると考えているのか
この緊急集会の権限の限度について2問、立憲民主党の考えを知りたい。
 
 仮に、本予算の議決や条約の承認を参議院の緊急集会に認めることになれば、それは一時的・暫定的・限定的である緊急集会の本来の権限を超えることになる。予算と条約には衆議院の優越が認められており、現行憲法の規定との矛盾も生じる。衆参同時活動の原則にも反する。70日を大きく超えしかも本予算や条約といった範囲にまで権限を広げるのならば、憲法改正が必要だと考えるが、立憲民主党の考えを伺いたい。

 なお、立憲民主党は、憲法改正条文案づくりよりも国民投票法の議論を先にやるべきと主張されるが、両方並行してやればいいと考える。広報協議会の強化やネット対策など賛同できる部分も多いので、我が党としても国民投票法の改正には協力したい。

 憲法改正をやるやると言ってやらない与党自民党と、一字一句憲法を変えてはならないとこだわる野党第一党との間の奇妙な共闘関係が続く「ネオ55年体制」が続く限り、憲法改正をめぐって野党は割れ続け、結果、政権交代も実現しないのではないか。逆説的に聞こえるかもしれないが、今の硬直した状況を打破するためには、野党第一党が、幅広く合意が得られるテーマ、具体的には、議員任期の特例延長規定の創設で改憲議論をリードする必要があるのではないか。

 立憲民主党には、野党第一党として建設的な憲法改正議論をリードされることを期待したい。そして、自民党にはスケジュールと改正項目の対象を明確にした審査会運営をお願いしたい。最後に会長には本審査会のNHK中継を導入することを求めて発言を終える。