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「クルマの型式指定不正問題なんて、我々の間では数十年前から知られた話でしたよ」自動車メディア関係者からそんなリーク情報を得たのは、元読売テレビアナウンサーでジャーナリストの辛坊治郎さん。国交省・マスコミ・自動車メーカーによる“馴れ合い”の実態とは?日本の発展を数十年に渡って妨げてきた“官僚のウソ”を辛坊さんが暴きます。(『辛坊治郎メールマガジン』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:辛坊治郎メールマガジン 第691号 6月14日発行「自動車認証試験」
なぜ今さら騒ぐのか?自動車「型式指定」不正問題の真実
目下話題の自動車認証試験騒動について、自動車業界をよく知る人物から連絡を貰いました。以下、その要約です。
今、マスコミが騒いでいる認証試験の不正について、実は自動車専門マスコミの間では数十年前からこうした問題は囁かれていました。
しかし、これが表ざたにならなかったのには、日本車の性能やブランド価値が右肩上がりだった当時、「実質的に性能・機能に影響しない」ということで、テストのごまかしは業界で大目に見られていたという経緯があります。
自動車番組を担当していた時代に経験したことですが、取材用に貸し出される広報車と、実際に市場に出回る車両ではエンジンの吹け上がりや走行時の足回りの質感、騒音などに明らかな違いがありました。
これをマスコミ関係者は「広報車チューン」と揶揄していました。
要するに今回明らかになった事は自動車メーカー周辺のメディア人には常識の話で、今までメーカーとメディアの癒着が不正問題に蓋をしてきたのだと思います。
私はこれを聞いて「まあ、そうだろうね」と思いました。
そもそも今回の話、日本の認証制度の根幹にかかわる話とされていますが、もし現行の認証制度が日本の自動車の安全にとって必要不可欠な制度なら、明らかになった不正な認証制度の元で生産・販売されて現在公道を走っている自動車は、安全が確認されるまで即時走行を禁じるべきでしょう。
「新車の納入は止めさせるけど、過去に販売された自動車はそのまま走っていい」という役所の見解はどう考えてもおかしいですよね。
要するに行政の本音は「安全に問題ないけど、役所の目をごまかしていたのは許せない」ってことなのです。
この態度は役所自ら、認証制度の不必要性を自白しているようなものです。
トヨタにも実はメリット。認証制度をめぐる国交省との化かし合い
今回、私のような第三者が見ていて面白かったのは、メーカーと役所の水面下の綱引きです。
問題発覚後に記者会見したトヨタトップのコメントでも明らかなように、今回の不祥事についてメーカー各社は本音の部分で「別に安全に問題はないだろう」と思っています。
実は役所もそう思っているからこそ販売済の数百万台の車について問題にしないのです。
認証不正にはいくつかパターンがあります。
例えば追突時の燃料タンクの安全性をテストするために、認証を受けるためには後方から1.1トンの重さの物体を衝突させる必要があります。
トヨタはこのテストを、他の国際標準の検査に合わせるために1.8トンの重さの物体を衝突させたデータを流用していました。
今の多くの車は、軽以外は車重1.8トンくらいが普通ですから、追突事故を想定するなら1.8トンが適当でしょう。
トヨタの本音は「より厳しい条件でやったので安全性には問題ない」という点にあります。
トヨタのトップは記者会見でこの本音を滲ませる発言をした一方で、現在の自動車認証制度を糾弾することはしませんでした。
なぜか?それは自動車認証制度はメーカーにとってもメリットのある制度だからです。
認証制度で新規参入を阻止、トヨタがクルマ市場を独占する
最大のメリットは新興企業の出現を阻止できることです。
新車の量産をするには、当該車種についての国の型式認証が不可欠です。この認証を受けるためには、先ほどの追突試験など、最低でも4台の新車をぶっ潰す必要があるのです。
その検査装置もメーカー持ちですから、資本力の小さい新興メーカーが開発した車が国の認証を受けて量産するなんて、実際問題として不可能です。
今、中国では雨後の筍の様に新興の自動車メーカーが誕生して、業界淘汰の時代に入っていますが、新興メーカーの発売する車の中には今までの常識を打ち破る画期的アイデアが盛り込まれた車も続々誕生しています。
そんなマニアックな車が、将来に渡って量産されて広く行きわたり、当該メーカーが生き残れるか?となると話は別ですが、東南アジアを旅していると、近年、聞いた事のない中国メーカーの珍しい自動車に頻繁に出会うようになりました。
一方、日本国内に目を転じると、少なくとも私が車を自腹で買うようになってから40年、メーカーの勢力図にはほとんど変化はありません。
水面下では日本の全メーカーはトヨタ系、日産系、ホンダ系に再編され、特色のある乗用車を生産していたいすゞなども業務用車専業ブランドになったりしてますが、日本では新しい乗用車ブランドは登場しない、というより登場できない仕組みになっているのです。
自らが窮地に陥るたびに「国際条約」を持ち出す国交省
今回の騒動の中で一部自動車メーカーから、「日本の自動車認証制度は不合理だ」という本音が聞こえてきた役所はさっそく反応しました。
まず、役人の間から「メーカーが役所の定める認証制度を守っていないことが明らかになったタイミングで、認証制度にケチ付けるなんて許せない」という声があがりました。
正直「このタイミングを逃して、いつ言うのよ?」と私は思いますが、役所にこう言われてしまうと、今回のことで脛に傷を持つうえに、認証制度はメーカー側にもメリットのある話ですから、メーカーが上げ始めた声はあっという間に消えてしまいました。
さらに同様の意見が一般国民からあがるのを危惧した国交省は、メディアを使って、役所擁護のキャンペーンを張り始めます。
典型的なものが、「日本の認証制度における検査項目47の大半は国際認証制度を日本に移植したもので、今回の違反の中には、国際的にも認められないものがある」なんて話です。
国交省は、自分が窮地に追い込まれると時々「国際条約」を持ち出します。日本で国交省が――
(メルマガ『辛坊治郎メールマガジン』2024年6月14日号より一部抜粋。辛坊治郎氏が「出来の悪い官僚が、いかに日本の発展を妨げているか?」について、さらに踏み込んで解説する全文はご登録のうえ楽しみください。初月無料ですぐに届きます)
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