カラパイア:死の間際、認知症患者の記憶が突然はっきりと戻ることがある「終末期明晰」の謎 2024年05月12日より転載します。
貼り付け開始、
https://karapaia.com/archives/52331683.html
![認知症患者の多くが死の直前に記憶を取り戻すno title](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/4/f/4f84afef.jpg)
認知症は「長いお別れ」と表現されることがある。本人はまだ生きているが、これまでの記憶や思考がどんどん削ぎ落されてしまうからだ。
だが死の直前、何もわからなくなっていた認知症の人の記憶や意識が、突然はっきりすることがある。これを「終末期明晰(terminal lucidity)」という。
この不可思議な現象がなぜ起きるのか、今のところ確かなことは不明だが、いずれにせよ、それはずっと失われていた大切な人ともう一度触れ合う最後の貴重な機会となりうる。
今回はこの「終末期明晰」について詳しく見ていこう。
大切な思い出やその人らしさを奪い取っていく認知症は、本人にとっても家族にとっても辛いものだ。
ところが不思議なことに、死の間際になって認知症の人の意識や記憶が、突然はっきりすることがある。これを「終末期明晰(terminal lucidity)」という。
こうした記録は19世紀からすでにある。認知症の患者の家族や医療関係者から、きちんと意味のある会話を交わせた、消えたはずの思い出が戻った、冗談を口にし、食事を欲しがったといった体験談が報告されているのだ。
だがその一方で、終末期明晰が起きた人の43%が24時間以内に、84%が1週間以内に死亡するという推定がある。つまりそれは死が迫っている時に起きるのだ。
また別の研究によると、認知症が進行した人に半年以内の死が近づくと、その多くにかつてのその人らしさが垣間見られるようになるという。
さらに認知症だけでなく、髄膜炎・統合失調症・脳腫瘍・脳損傷など、脳や思考能力に影響を与えるほかの疾患でも、終末期明晰が報告されている。
ただし例外もあり、終末期明晰らしき症状があった人が、必ず近い将来亡くなるわけではない。
こうしたものは、一般に予測される認知症の進行から外れることから「逆説的明晰(paradoxical lucidity)」と呼ばれることもある。
だが残念ながら、せっかく意識がはっきりと戻っても、それらはいずれも一時的なもので、神経変性疾患の進行が逆転して、以前の状態に回復するわけではない。
なぜこのような現象が起きるのか? その理由は今のところよくわからない。なにしろ終末期明晰を研究すること自体が非常に難しいのだ。
まずこれがいつ起きるのかわからない。愛する人が一緒にいるときに起こる、音楽によって一時的に記憶が明晰になるといった話もあるが、大抵の終末期明晰は特にきっかけがないのにやってくる。
ニューヨーク大学の研究チームは、死の前の脳活動の変化が終末期明晰を起こす可能性があると推測した。しかし、これだけでは、失われたと思われていた能力が突然回復する理由を完全には説明できない。
また認知症の患者に死期が迫れば、必ず起きるというものでもない。
仮にどのタイミングで終末期明晰が発生するのか予測できたとしても、そもそもその本人や家族にとっては、最後の時間を一緒に過ごすとても大切な機会だ。
その時間をあえて研究に捧げてやろうなどと思う人はほとんどいないし、それを強いることは倫理的に問題がある。
photo by iStock
これが起きた時、死にゆく人が家族や人生に最後の別れを告げようとしているのだと、受け止める人もいる。それが死後の世界を証明するものなのだと考える人もいる。
いずれにせよ、認知症が進行した人の意識が戻った時、周囲の人たちの反応はさまざまだ。安心する人もいれば、混乱し動揺する人もいる。
介護のやり方を変えようとしたり、命を助けるために何かしなくてはと感じる人もいる。
だが、それが死へのプロセスの一部であることを理解し、認知症が回復するわけではないことを知れば、その瞬間を最大限に活用することができる。
それは長い間失われていたその人らしさに、もう一度触れることができる最後の貴重な機会なのだ。
References:Terminal lucidity: why do loved ones with dementia sometimes ‘come back’ before death? / written by hiroching / edited by / parumo
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症状が出る数年前に認知症を診断できるAIツールが開発される
貼り付け終わり、
https://karapaia.com/archives/52331683.html
![認知症患者の多くが死の直前に記憶を取り戻すno title](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/4/f/4f84afef.jpg)
認知症は「長いお別れ」と表現されることがある。本人はまだ生きているが、これまでの記憶や思考がどんどん削ぎ落されてしまうからだ。
だが死の直前、何もわからなくなっていた認知症の人の記憶や意識が、突然はっきりすることがある。これを「終末期明晰(terminal lucidity)」という。
この不可思議な現象がなぜ起きるのか、今のところ確かなことは不明だが、いずれにせよ、それはずっと失われていた大切な人ともう一度触れ合う最後の貴重な機会となりうる。
今回はこの「終末期明晰」について詳しく見ていこう。
終末期、認知症患者の記憶が明瞭になる「終末期明晰」
認知症になると不可逆的に記憶が薄れ、家族を認識することができなくなる。その人らしさも失われてゆき、会話もままならず、自分で飲み食いしたり、自分がどこにいるのかを把握することができなくなる。大切な思い出やその人らしさを奪い取っていく認知症は、本人にとっても家族にとっても辛いものだ。
ところが不思議なことに、死の間際になって認知症の人の意識や記憶が、突然はっきりすることがある。これを「終末期明晰(terminal lucidity)」という。
こうした記録は19世紀からすでにある。認知症の患者の家族や医療関係者から、きちんと意味のある会話を交わせた、消えたはずの思い出が戻った、冗談を口にし、食事を欲しがったといった体験談が報告されているのだ。
だがその一方で、終末期明晰が起きた人の43%が24時間以内に、84%が1週間以内に死亡するという推定がある。つまりそれは死が迫っている時に起きるのだ。
また別の研究によると、認知症が進行した人に半年以内の死が近づくと、その多くにかつてのその人らしさが垣間見られるようになるという。
さらに認知症だけでなく、髄膜炎・統合失調症・脳腫瘍・脳損傷など、脳や思考能力に影響を与えるほかの疾患でも、終末期明晰が報告されている。
ただし例外もあり、終末期明晰らしき症状があった人が、必ず近い将来亡くなるわけではない。
こうしたものは、一般に予測される認知症の進行から外れることから「逆説的明晰(paradoxical lucidity)」と呼ばれることもある。
だが残念ながら、せっかく意識がはっきりと戻っても、それらはいずれも一時的なもので、神経変性疾患の進行が逆転して、以前の状態に回復するわけではない。
![3](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/6/a/6a95f530.jpg)
なぜ終末期明晰が起きるのか?
なぜこのような現象が起きるのか? その理由は今のところよくわからない。なにしろ終末期明晰を研究すること自体が非常に難しいのだ。まずこれがいつ起きるのかわからない。愛する人が一緒にいるときに起こる、音楽によって一時的に記憶が明晰になるといった話もあるが、大抵の終末期明晰は特にきっかけがないのにやってくる。
ニューヨーク大学の研究チームは、死の前の脳活動の変化が終末期明晰を起こす可能性があると推測した。しかし、これだけでは、失われたと思われていた能力が突然回復する理由を完全には説明できない。
また認知症の患者に死期が迫れば、必ず起きるというものでもない。
仮にどのタイミングで終末期明晰が発生するのか予測できたとしても、そもそもその本人や家族にとっては、最後の時間を一緒に過ごすとても大切な機会だ。
その時間をあえて研究に捧げてやろうなどと思う人はほとんどいないし、それを強いることは倫理的に問題がある。
![4](https://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/f/7/f7c94676.jpg)
終末期明晰はその人本来の姿が見られる最後のチャンス
終末期明晰は、科学の枠を超えた現象だ。これが起きた時、死にゆく人が家族や人生に最後の別れを告げようとしているのだと、受け止める人もいる。それが死後の世界を証明するものなのだと考える人もいる。
いずれにせよ、認知症が進行した人の意識が戻った時、周囲の人たちの反応はさまざまだ。安心する人もいれば、混乱し動揺する人もいる。
介護のやり方を変えようとしたり、命を助けるために何かしなくてはと感じる人もいる。
だが、それが死へのプロセスの一部であることを理解し、認知症が回復するわけではないことを知れば、その瞬間を最大限に活用することができる。
それは長い間失われていたその人らしさに、もう一度触れることができる最後の貴重な機会なのだ。
References:Terminal lucidity: why do loved ones with dementia sometimes ‘come back’ before death? / written by hiroching / edited by / parumo
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ペットを飼っていると、高齢者の認知機能は低下しにくいという研究結果
体は覚えていた。アルツハイマー症の元バレリーナ、「白鳥の湖」を聞いて踊りだす(スペイン)
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