栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー -2ページ目

栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

出発地 ロブジェ 4930m  隊員3名
出発地 パンボチェ  3930m  隊長

    10日目、 SPO2  68が出た。高山病症状は出ていないし、下痢も自分から出たいとは言わないレベル。SPO2低い=高山病ってわけじゃない。私はもともと低く出るタイプなのだ。それを理解し、気をつけることこそが、重要であろう。
    隊長がいないので、3名でゴラクシェブに向けて出発。このルートも途中にロッジがないので、いままでの中ではきついルート。

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    でも快晴なので楽しみは多い。

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    登りに来た。ロブジェ・イーストも見えた。この写真、拡大すると問題のデンジャラスクレバスがしっかり写っている。ピークもクレバスもロックオン!早くクレバス覗き込みてー

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    そして、ずっとお預けをくっていたエベレストに御対面!

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    ヌプツェとエベレスト。わかるかなー、分かんないかなー。

    予定通りゴラクシェブに入ったところで、隊長と電話で話すことができた。体調回復しているので、本日はペルジェまで標高を上げるそうだ。問題なければ、明日、我々と同時にBC入りできるそうな。これには一安心。隊長は隊長のできることをやっているので、私たちもしっかりやらなければ。

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    宿泊するゴラクシェブに大まかな荷物を置いて、エベレストBC目指して出発。ここを最終目的地としているトレッカーも多い。

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    到着はしたものの、ここをルートに組み込むべきではなかったかもしれない。ゴラクシェブからエベレストBC、案外というか、大層辛いのだ。極寒の中のトレッキングとなったし、登り降りが案外多い。皆、疲れ果ててしまった。登山を目的としている登山隊としては失敗です。これはひとえにミーハーな海外委員会委員長(隊長)と副委員長(私)の責任です。反省してお詫びいたします。

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    っても、来てる我々は楽しいだけ。ここがあのエベレストBCか、やったで! みな笑顔です。

    画質悪いですが、簡単な動画です。お楽しみください。

    しかし、ゴラクシェブに戻ってからが大変。3人も高山病症状としての軽い頭痛が出てしまったのだ。一眠りしたら私は落ち着いたが、2人は食欲がなく、夜はほとんど食べられなかった。5100mという標高が牙を剥きだしている。1日寝れば、明日はロブジェBCまで標高を下げられる。1日の辛抱だ。
    ただ出発前に、カラパタールに行くという高所順応が待っている。誰なんだ、こんな詰め込み過ぎの計画を作ったのは?おれか?(おわり)

宿泊地 ゴラクシェブ 5100m  隊員3名 
獲得標高 エベレストBC 5300m 隊員3名 6h40m(休憩込)
宿泊地 ペルジェ  4240m  隊長
出発地 ディンボチェ 4300m

    9日目、 SPO2  74と回復。停滞して高所順応した価値が出ている。下痢はゆるい程度と言えるレベルで止まってくれている。
    問題の隊長は、強い薬を飲んでいるので、もう回復してるんだか、なんだかよく分からないと言い出した。既に判断できない状況になっている。SPO2はまた60台を打ったそうで、これはもう標高を下げさせるしかない。
    隊長には納得してもらい、1つ手前の街パンボチェに下りてもらうことになった。標高は今より370m下がる。これで1日ステイして回復するようなら儲けもの。ダメなら次の日ナムチェまで下りてもらう必要がある。一度別行動にしてしまったら、もう細かいアドバイスはできなくなる。
    兎に角、全回復してBCに戻って来てください、と私。隊長が戻ってくる頃には、私たちの方がフラフラで、隊長には全面的に働いてもらわないといけないんですからね!

    問題はまだある。佐久間隊員が隊長の風邪をもらい、体温38.1度を計測してしまったのだ。非常に体調を悪そうにしており、熱や下痢などないが、喉の痛み、咳がある。つまり、そのまま隊長の風邪と同じってわけ。佐久間隊員は、隊長が風邪をひいた際に同室だったため、そのまま生け贄のような格好で同室を続けてもらっていた。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
    佐久間隊員は次の目的地の標高より高くに昨日登っているので、ステイ等考えず進むという。佐久間隊員のベテランならではの回復の知恵を信じるほかない。

    出発。分岐でBCで会いましょうとパングチェに向かう隊長とガイドさんと別れた。隊長のクライミングギアの入ったビッグバッグは、ロブジェBCに先に入れることになっている。隊長が戻って来たときにギアがないなんて、チュルーの時の私のようなことにはならない。

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    私ら3名は昨日登った丘を登り、そこからロブジェ方面に入って行く。標高差は630mあるものの、距離が長いので苦にはならないルート。ともあれ、標高は5000mに近づいているし、エベレスト街道でもっともロッジが少ないルート。だいたい目的地までに3,4あるロッジが、この日のルートには1つしかない。

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   いつもはペースの速い佐久間さんも流石にペースダウンを余儀なくされていました。一休み。

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    この日の天気は快晴。でもありとあらゆる山には雲がかかり見えず。

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    ロブジェのある方角には雲しかなく、

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    振り返ってもアマダブラムやタムセルクは雲に隠れていた。昨日山々を見られたのは幸運だったのだ。ロブジェを観察する機会を得られて本当に良かった。山の神様ありがとうございます。

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   このルート唯一のロッジがあるトゥクラに到着。佐久間隊員は体調が悪そうだし、笹沼隊員も疲れている様子。心配だわ。寝ている2人を休ませるべく、私だけ二杯目のお茶を頼み時間を稼ぐ。

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    再出発すると、途中でロブジェBCを設営する場所を確認することができた。正面のプラトーがそれだ。そして左側のガレを回り込むように登っていく。今日はロブジェのロの字も拝めずに歩いて来たので、あまり実感がわかない。しかし登山の開始は刻一刻と近づいている。

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    ロブジェに到着。本当に辺鄙な場所にある街だが、お客は多く大層賑わっている。ロッジのカウンターにいた若者が日本に何度も来ている日本語ペラペラな方で、色々情報交換できたのだけど、まず驚くのは、ロクジカンと笑いのネタにしていた野口健先輩が、明日ロブジェを登りにこのロッジに来るそうな。

    山の世界ってば本当に狭いよなー

    ウエストとイーストどっち登るのと聞いたらウエストとのこと。ああ、僕らはイーストなんだ。

    えっ、イーストですか?クレバスが大きくなってから、最近もう誰も登れてないですよ。

    おー、そうそう、僕らはそのクレバスを越えに来たんだよ。

    4月に二隊、イーストのクレバスを攻略すべく登りに行きましたが、どちらもクレバスを攻略できずに帰って来ましたよ。その内の一隊は、再度のチャレンジで、昨日、ロブジェ・イーストに出発したばかりです。

    今年3隊もチャレンジしていた(いる)とはね!しかも攻略できていないとは!ここ何年かで攻略した隊はいるの?

    挑戦している隊はそれなりにいるけど、成功したとは聞いていないですね。

    きっ、きっ、きっ、きたー!!!

    これ来たっしょ!!!

    つまるところ、クレバスが大きくなってから、越えた隊は日本で調査した通り世界にも僅かしかいないってことだ。これが日本人となると、報告書でお世話になった近藤さんの隊しかいないに違いない。(近藤さん以外の日本隊で、俺イーストのクレバス越えてますけど?って隊がいたら教えてください)

    狙った獲物はデカかった! 

    登れれば、クレバスの先を狙っている世界の隊へのいい情報提供ができるってもんだぜ。まあ、今トライしているその隊が登っちゃうかもしれないけど、それはそれで情報もらえてありがたい。その隊は短期間に諦めずに2回目をトライしているのだから、脈はあるんだろう。攻略できないクレバスではないとみた!

    現地に入ってみれば、ロブジェ・イーストの本峰どこだ問題なんてなかったのでした。単に、クレバスの先に行くのを諦めた人間が、行き止まりで登頂としているだけで、ちゃんとそのクレバス攻略に情熱を傾けている山屋は世界にいたのです。それは本峰そのものといよりも、そのクレバスを攻略できるか否かという、まさにアルパイン的魅力がそこにはあるってことじゃないんだろうか。じゃなかったら何隊もチャレンジしていないだろう。

    あーなんかワクワクしてきた。

    佐久間隊員は熱も下がり食欲も回復、後1日寝れば大丈夫とのこと。流石っす、先輩、まじ嬉しいっす! 笹沼隊員は元気だし、わたしも下痢は治った。隊長は隊長ができることに全力投球していることだろう。

    明日「起きたら高山病でした」なんてことになっていなければ、高所順応はクリアしてBCに入れる可能性が高くなってきた。とはいえ、私がチュルーの際にやられた標高5000mに本格的に突入するのは明日から。ここからが勝負どころだと気を引き締めて、死んだふり作戦を継続したい。(おわり)

宿泊地 ロブジェ 4930m  隊員3名 6h20m(休憩込)
宿泊地 パンボチェ  3930m  隊長
宿泊地 ディンボチェ 4300m

    8日目、 SPO2  71を記録。75あたりで安定はしているが、予断は許されない。症状は下痢にスコア1付けておいた。頭痛はなし。
    問題の隊長は、熱はあるものの、SPO2が84と66から大幅に改善。簡単に割り切れるものではないが、高山病というより風邪なのだろうという認識。標高を下げずに、停滞して安静にするという形で落ち着いた。個人的には降りて欲しかったが、自分のほうがSPO2が低く出ているので強くは言えず、最終的には隊長判断となった。

    隊長は安静、他3名は予定通りロッジ裏の山を登って高所順応に励みます。ロッジから標高差700mを一気に登りつめられ、次の宿泊地ロブチェの標高を上回れます。

    この日の朝の気温はマイナス5度。室内にいても滅茶苦茶寒いです。雲がなく放射冷却があった模様。つまりは遠征一番の快晴ってことです!

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    カンテガ左とタムサルク右

    ロッジを出ただけで撮影タイム突入ってなもんですから、高所順応で標高を稼げば、あーた、

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    タブチェ左とトブチェ右

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    中央にアイランドピーク

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    中央にマカルー(ネパール第4位の8000m級)

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    アマダブラム。見る方角が変わると別の山のよう。

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    そして私達の遠征の目的ロブジェ・イーストと御対面!

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   この中にロブジェ・イーストもロブジェ・ウエストも写っています。

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    ロブジェ・イーストには本峰何処だ問題があるので、念入りに地形図広げて、観察した山の形を地図に落とし込みます。シェルパの言いなりで目的のピークを決めるのではなく、目的のピークは自分で読図して決めるべきです。
    他の隊員は分からないと諦めていますが、私はこれに一年近い時間を費やしてきたのです。成り行き任せにするわけにはいきません。一人でも地図とにらめっこ。これが私の所属している山岳会の渓嶺イズムというやつです。読図しない奴は宇都宮渓嶺会にはいられませんからね!

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    30分前に目的の標高5000m地点についていた皆と合流。2名は読図を放棄しているので、私とシェルパで入念に本峰の位置確認。あの稜線がこの稜線で、あのスカイラインがこのスカイラインだから・・・
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    私たちは間違っていたようです。シオリに本峰と記載したピークはやはりウエストだったのです。2峰と記載したピークが本峰です。私たちとシェルパはそういう結論に至りました。
    では、大ギャップ(シェルパと認識を共有するため、以後大ギャップはシェルパが使っている名称デンジャラスクレバスに統一します。)はどこにあるのか?それは2峰と記載してある本峰の前にやはりあります。
    つまりこうなります。ジャンクションピーク(偽ピーク1)まで登り、その先の小ギャップを越え、一峰を越えてデンジャラスクレバスまで辿り着き、そこを懸垂下降してクライミングで登り返せば、そこが二峰と記載していた本峰です。
    最近多くの隊が引き返しているデンジャラスクレバスの手前が二峰(偽ピーク2)というわけです。遠くからの写真では判別できない場所です。
    とりあえず、シェルパとはそういう認識で話がまとまりました。シェルパが4月にメインピークとしてお客を登らせた二峰の先にあるデンジャラスクレバスを越えるという認識に齟齬がなければ私たちは問題ありません。

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    5000m地点に1時間近く滞在して下山開始です(私は到着が遅かったので30分)。下りていると、4600mあたりに隊長が寝そべっているのが見えました。体調が回復したのかと、喜んだのですが、、、

    ロッジに帰って話を聞くと、よくなっているどころか悪くなっている印象です。回復していたSPO2も70に近い数字に戻り、熱もまたぶり返したようです。なんでぶり返したのか分からないと隊長が言うので、4600m地点で風を受けながら寝てたからですよ!と私。

    明日は、私の中ではもう行動をともにする案はありませんね、極端にいえば選択肢は下りるの一択です。私の中ではステイもありません。ステイして回復するかはギャンブルで、まず回復しませんから、下りるの一手です、と私。
    下りれば1日で回復することもあります。私のチュルーの時がそうでしたから。1日下りても私たちとロブジェBCに入るのは同じ日です。回復に2日かかっても私たちがBCで停滞している時ですし、3日かかっても私たちがHCへのルートメイクしている日にBCに入れます。
    こういう時は、最終目的から逆算するしかありません。最終目的は4人でロブジェ・イースト本峰に登ること。そして、ただ登るだけではダメで、4人で楽しく登った記憶を持ち帰らなければいけません。フラフラで登ってクライミング中の記憶がないとか、意味ないですから!
    今の段階なら余裕で全回復してBCに戻ってこれますよ。そんな話をしました。最終判断は隊長がすることなので、明日となります。

    話はまだあります。遠征に付いて来ているガイドさんが、ルートを変更したいと言い出したのです。明日はロブジェに泊まる予定でしたが、ロブジェBCに泊まろうと。そして次の日ゴラクシェブ泊。その次にエベレストBCピストンのゴラクシェブ泊。次の日にカラパタールピストンのロブジェBC入り。これでどうか?と。

    ○○か!BCに入るのが1日遅くなってるじゃないか!こっちの計画変えてんじゃねーよ!

    すると、ガイドさんは、明日はロブジェBC泊、次の日エベレストBCまで足を伸ばしてから戻ってのゴラクシェブ泊。次の日に、カラパタールピストンのロブジェBC入り。これなら当初の日数と変わらないでBC入りできる、どうか?ときた。

    ロブジェBCからエベレストBCまで1日で歩いちまったら、トレッキングの距離が伸びてるじゃないか!本番前にオマケのエベレストBC行って疲れるなんて絶対嫌だから、ない、ない、絶対ない。そもそも明日は隊長が別行動になるんだよ?それにガイドさん付き添わなくていいの?

    付いていく

    そうでしょう。ルート変えてる場合じゃなくね?

   ・・・ オーケー、分かった。最初の予定通りでいこう、とガイドさん。

    これがネパール。チュルーの時も無茶なルート変更を言い出されていたのでまたかという印象。こういうのは問答無用。英語ができなくても意思を伝えることは可能なのです。

    一度帰ったガイドさん、戻ってきて次はこんな提案をしてきました。私たちがポーターに背負ってもらっているクライミングギア等が入ったビッグバッグ3個(隊長は別行動になる予定なので4個ではない)を明日、ロブジェの街ではなく、ロブジェのBCに入れたい。だから、必要な寝袋等だけ出して明日から背負って欲しい、てな話。

    まあ寝袋くらいなら担げるなと某隊員

    いやいやいやいや、嫌ですよ!寝袋なんて担いでトレッキングしたくありませんから!寝袋担ぐ数日分の金返してくれるならまだしも、金は戻らない、寝袋は担ぐ、こんな馬鹿な話ありませんから。この人たち日本人舐めてるだけですから。こんな提案ナンセンスで聞くだけでイライラする!

    でもトレッキングに必要ない道具をBCより上に上げたくないというのは一理あるし、雇うポーターの数が減れば彼らの利益も増えるだろう。そこはガイドさんには良くしてもらってるし、顔を立てたい。こういう案でいきませんか?

   トレッキングに 不必要な道具を、ビッグバッグ2つに詰めなおす。残ったビッグバッグ1つに3人の寝袋他を詰めて、これはポーターに背負ってもらって私たちに同行してもらう。2つは明日BCに入れちゃってもいい、どう?

    分かった。それでいいと、ガイドさん。

    こんなことしてたら私の下痢は治らない。(おわり)

高所順応 獲得標高 5000m
停滞地 ディンボチェ  4300m