出発地 ナムチェ 3440m
6日目、起床後すぐに部屋の窓を開けてみたら、
ちゃりーん
景観どころの話ではない。雨に降られなければいいが。
SPO2 84 と安定。体調の不調も出ておらず、上手く高所順応できているようだ。
しかし、朝食時に隊長から風邪をひいたとの報告を受ける。熱が37.4度で頭痛があるとのこと。観察すると、声も出にくくガラガラになっており、咳もしている。
救いは食欲があること。私が参加したチュルー遠征の際にも仲間が風邪をひいたが、その時とはまだ比べものにならないくらい軽い段階。今日の行動は予定通りとすることに皆と確認した。
隊長から求められ、医療担当がロキソニン4錠処方。ついでに、私の個人装備のサントリー極みの青汁を手渡し飲むよう伝える。
体調を崩した隊長の足は重く、チェダさんのペースには付いて行けるわけもない。仏塔あたりにチェダさんがいる写真を撮れるくらい離れてしまった。 ともあれそれでいい。できうる限り遅く進み、体に負担をかけないのが今できる最善策なのだから。佐久間さんと笹沼さんはチェダさんと行動を共にしているが、私は隊長の後ろにぴったり付いてアンカーの役割を果たした。
そう、チュルー遠征の時、高熱を出した植木さんに寄り添い続けた粂川隊長のように!病人のメンタルを補強してあげることこそが、回復を早める鍵。さり気なく近くに誰かがいてあげる、これこそが重要だろう。
でも隊長は思ったよりも歩けている。チェダさんは今日はペースが遅いと少し心配している。チェダさんも隊長の具合のことは知っているけれど雨が心配なのだろう。濡れる危険と、高所で急ぐ危険、どちらが回避すべき危険なのだろうか。
本当ならアマダブラムがばっちり見えるはずのロッジからの眺望もこんな感じで空模様は確かに心配だ。山々が見られず残念がるメンバー。景観は快晴続きの帰りに見られるから、それを楽しみにしておきましょうとわたし。
ナムチェからダンボチェの道中は、100m登って200m下りて、また500m登り返すというもの。隊長にとっては厳しい登り返しのスタートだ。
あと200mですよ、残り100m切りましたよ、と隊長を鼓舞しながら登る。振り返ると、今日歩いたルートを見渡すことができた。かなり高い位置から沢筋に下りたことが分かる。標高差のわりにゆるい登りだったので、体感的には楽だったけれど、ペースがすごく遅いので、楽だったのはそのせいかもしれない。 シェルパと佐久間さん、笹沼さんから遅れること15分、目的地のダンボチェに到着。到着と同時に雨が降り出してきた。まさに危機一髪。
ダンボチェには立派なゴンパがあったので、笹沼さんと観光しに行く。佐久間さんは風邪がうつったかもしれない、喉に痛みが出てきたとのことで静養。隊長は俺も行くと言うので、ダメです、静養してくださいと却下。あとで一人でいったようですが。
このゴンパは、なかなか立派な仏様と境内があり、見る価値ありです。撮影禁止だったので、どんな仏様か知りたい人はネット検索してみてください。どこかに落ちてるかも。
夕飯後に、笹沼さんも喉が痛いような気がするなーと歯切れ悪く不調を訴えてきた。笹沼さんが感染していたら、同部屋のわたしも時間の問題だ。この隊に未来はあるのか、予断は許されない状況に突入しつつある。まだ登山始まってなくてトレッキングしてるだけだというのに、困ったものである。
夜も隊長から求められ、医療担当が風邪薬を一包処方。ダンボチェは室内でも驚くほど寒い。厳冬装備を着込んでようやく耐えられるレベル。今夜の寝方が運命を分けるかもしれない。(おわり)
到着地 タンボチェ 3840m 5h55m(休憩込)