山行報告【奥穂高岳・涸沢岳西尾根(冬期アルパイン)】1日目 | 栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

栃木県宇都宮市で攀じるパパクライマー

人の親になっても頂きを目指し、家族と共に攀じり続けるパパクライマーの記録

1.前書き

このブログを長く読んでくれている方ならご存知の方もおられると思いますが、わたしは山岳会に入ってからというもの、冬合宿というものには同じルートにしか入ったことがありません。それは「涸沢岳西尾根~奥穂高岳」という冬期アルパイン入門ルートです。


2012~2013冬合宿山行報告(23日)

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11455039172.html

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11456175739.html

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11456793606.html


20132014冬合宿山行報告(23日)

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11751290101.html

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11751292449.html

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11751301295.html


2014~2015冬合宿山行報告(23日)

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11975423093.html

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11976639589.html

http://ameblo.jp/tama-xx/entry-11977017974.html


1回目は先輩に連れて行ってもらい、視界不良の暴風雪の中、F沢のコルの下降点で撤退。2回目からはわたしがリーダーとなるも、根雪のないところへ直前に大雪がふり、蒲田富士前の岩陵をクライミングするはめとなり1ピッチで撤退判断。3回目は単純に雪が多くトレースもないのでラッセルに苦労して時間切れ。蒲田富士の先で撤退判断。


3回同じルートに入って出したわたしの結論は、このルートを年末年始に2泊3日(予備日なし)で完登するには、よほどの条件に恵まれなければ不可能であるということでした。3回も取りつき、3回とも違う条件で稜線を歩くことができたのだから(しかも2回は稜線貸切!)、もう十分にこのルートからは学ぶことができました。そこでわたしはこのルートからの卒業を宣言したのでした。


しかし、今季の冬合宿のルートを模索していくなかで、メンバーが決まり、ルートが絞られていき、結果的に残ったのは「涸沢岳西尾根~奥穂高岳」だったのでした。そう、このルートです。まさかの4回目のトライとなりました。今年も2泊3日で予備日なし(12月29日~31日)。稜線上の穂高岳山荘を宿泊には利用しない(冬期の稜線上の山荘拍は閉じ込められる危険があるため)という条件で挑みます。


ルートが決まった時点での心配事は、暖冬につき、涸沢岳西尾根の急登に雪がなかったら登れるのかいな?という点と、涸沢岳山頂から穂高岳山荘への下りも雪がないと心配な箇所です。ようは雪がなさ過ぎると困るという心配をしていました。天気は運次第なるようになれです。


2.山行記録(1日目)

「このルートは初日こそが核心である」


わたしはそれを仲間に言い続けていました。わたしは過去3回で、このルートの幕営適地とされている2400m付近にテントを張ったことがないからです。ラッセルに苦労して結果2000~2200mあたりにしか張ったことがない。体力的に2400mまで行けないのではなく、暗くなってしまうからしょうがないという感じ。


だから今年は2400m付近に幕営できるかどうかを核心としました。計画書では下記のようなタイムスケジュールを組みました。

28日 前夜発  仮眠  29日3:00新穂高温泉発  5:30 白出沢出合 ―13:00 2400m付近幕営


過去3回の6時起床7時発―幕営地14時着という計画から、4時間も前倒しで出発にしました。これで2400mまで届かなかったら嘘です。いままでどんなにラッセルに苦しめられてきたからといって、10時間弱も使えば2200mまで行けていました。仮に今回まったく同じ悪条件だったとしても、3時発なら10時間登り通しでも13時。むふふ、これなら届きますよ、絶対。2400mに!


前夜発で新穂高温泉に仮眠。雪の少なさを見て取り、スノーシュー、スノーバー、アイススクリュー等の不要と思われるギアを置いていくことにしました。読み間違いで必要になったらギア不足を理由に撤退判断とすればいいだけです。



新穂高温泉を3時50分に出発。しかし驚きました。白出沢出合までの林道の歩きやすいことといったらないのです。雪は少なからず積もっており、土をむき出しにしているようなことはありませんでしたが、トレースがバッチリもバッチリ。天気が良いので多くの隊が入っているに違いありません。人の往来の凄さを改めて感じます。



なわけで、あーという間に、白出沢出合の先、尾根への取りつきに到着です。ここまで僅か3時間!過去最速のタイムです。そして尾根に取りついたあとも、雪はなさ過ぎるということもない、根雪がしっかり付いた中に、数日前の寒気が降らせた雪がのっている感じで、歩きやすいことこの上なし。おまけにこの尾根上もトレースがバッチリなのです!こんな条件じゃあさあ、ほらもう目的の2400m付近幕営地に到着してしまったじゃないか!過去3回初日に到達できなかった2400m付近幕営地に11時50分、つまりわずか8時間で到着してしまったのでした。なんだこれ。




2400m付近の幕営地にはテントがいっぱい(最終的には張る隙間がまったくないくらいに張られて12張になりました)。わたし達がテントを張りだすと「あれ、この時間なら上の小屋まで行けるんじゃないですか?」と声をかけられる始末。ん?初日に小屋まで?そんなことは考えたこともなかった。まあ、わたし達の計画は小屋泊禁止にしているので、時間を持て余したとしても、小屋まで上がる選択肢はありませんけどね。


前日に同ルートに入り、本日山頂にアタックしていた日光のベテランクライマーKさんが無事登頂して幕営地に戻ってきたところで情報交換。山頂までもトレースばっちりだし、問題になるような(ザイルを出すような)箇所はないとのこと。おまけに稜線上もテントが3張程度いるとのこと。どれだけ条件いいの?!


明日の天気予報は風がそれなりにあるものの快晴。これは絶好の日和です。まさかまさかの諦めた先に得られる結果。取れるかもしれませんよ、4回目のトライにして積雪期の奥穂高岳山頂が!



昨年、一昨年と雪の多さに登ること自体が困難であると感じさせられた2400m幕営地から上の斜面。引き返す隊がいるほどのラッセル地獄だった斜面も、今年はトレースが稜線に向けてしっかりと伸びているのでした。



幕営地からは白く染まった山々を望むことができました。明日への期待が高まります。この日は16時に就寝として、翌日は4時起床としました。12時間も寝られるのかいな。(2日目につづく)