RINの奇妙な恋愛 ~The strange tale of romance ~ -10ページ目

RINの奇妙な恋愛 ~The strange tale of romance ~

こンな髪形してますが、アラフォーのおっさんです。
このブログでは、過去に体験した奇妙な恋愛話を綴ってます。
一部不快な表現も含まれておりますので、予めご了承ください。

『もしもし、アタシ。今、オッサンと電話で話し合ったンだけど、近々オッサンが家に帰ってくるコトになったワ』

今日は水曜日。
あの大荒れの日から4日が経った日の夕方で、私はそろそろ帰宅しようと会社を出たトコロだった。

先週の土曜日に私から提案を出したが、眞知子サマは意外にアッサリと聞き入れてくれた。
そして、その日はしばらくは部屋にいたが、小一時間もするとさっさと帰ってしまった。
日曜日は「おはよう」と「おやすみ」の軽いメールのやり取りダケで部屋に訪れるコトもなく、そして月曜日も同じだった。
昨夜は恐る恐るお店に行こうと思ったが、「今夜は来なくてイイ」とメールが来た。
もう2年以上もベッタリだったコトを考えると、ナニがなンだかわからなくて、軽い恐怖感さえ感じる。

『今日は2人でお買い物に行く日だけど、アタシ1人で行くワ。
そのあと夜の10時ごろにお部屋に行くから待っててネ♡』

―――1人で買い物に?ホントに?

眞知子サマは家族4人分の食料をいつもまとめ買いするので毎回大荷物になる。
私がいないととても1人では持ちきれないので、どうやって運んだのか・・・・
そういえば土日も逢ってなかったから、その時の買い物も1人でいったのだろう。
思いがけないコトがあったので失念していたが、この2年半ではあり得ないコトであった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『オッサンからの条件は3つあるの。』

さっきまで独りで夕食を食べていた私だが、眞知子サマが何を言い出すのかが気になって、ほとんど味がわからなかった。
眞知子サマはいつものようにこの部屋に入ると、なンの前置きも無く話し出した。

『誰と付き合いしてたのかは詮索しない。
浮気の事実があったのか無かったのか、それもいっさい不問にする。
その代り、今後はいっさい噂話でさえ立つような行動をするな。』

―――ほうほう・・・・

『それで、その条件だけど、
ひとつ目は、日中でも無断外出は禁止。行先と同伴者は必ず前もって申告すること。
で、二つ目は、お店に出る日は例外として、夜間の外出は厳禁。お店の閉店後も真っ直ぐ帰るコト。
それから三つ目は、外泊は完全に禁止。これは相手が女性でも同じ。』

―――ふむ。当然でしょう。しかし、当然過ぎて拍子抜けするなぁ・・・

そういえば、眞知子サマは前にもこンな疑いをかけられたようなコトを言ってたから、上手いコト躱したンだろうか?

『アタシは今夜、リンと相談してからこの条件を受け入れるか決めるつもり。
と言うのも、今度はアタシからリンに条件があるの』

―――え?今さらなンの条件を・・・


『リンは家族女と離婚して!アタシと別れてやり直すなンて耐えられないから!!』

―――え、え、え???

『だって、オッサンの条件を聞き入れたら、アタシはまた籠の中の鳥になるのよ!』


―――旦那サンとやり直すンぢゃないの?なンで籠の中のなンて・・・


口をつぐんだまま怪訝な表情をしている私を見て、眞知子サマは私の意図を素早く読み取った。


『浮気の詮索をしないのは、それは、もうどっちでも良いからだって。
アタシが下の子を身籠った時に疑って以来、ずっと続いているから今さらってコト。
一度でも他人に抱かれたオンナには、もう一切興味が無いンだって。』

「そ、それじゃなぜ?」

『赦すかって?アハハ・・・。赦すンじゃないのよ。』

「え?」

『会社の経営陣はネ、スキャンダルが嫌いなの。
女房に浮気の噂があったり、夫婦が別居したり、離婚したり・・・
だから、アタシはオッサンの名誉を守るタメに繋がれるダケ。
それも、これから先ずっと、どっちかが死ぬまでネ』

―――そ、そンな・・・

『リンだったら、アタシを連れ出せると思ったンだけど・・・
でも、子供がいるからネ。やっぱりダメだったみたい』

―――・・・・・。

『リンのコトは諦めるケド、他人には渡したくないの!
だから約束して。家族女とは別れるって!
そしたらアタシ、長生きして、いつかきっとリンを手に入れるから!』


いつの間にか眞知子サマは涙声になっていた。
こンな姿を見たコトが無い私はかなり狼狽えていた。

「あ、あの、眞知子サマ・・・」

『出来る!?ねぇ、約束して!』

「わ、わかりました。それで眞知子サマのお気が済むなら」


―――しかし、約束するもナニも・・・・

もう家を飛び出してまる2年になる。
途中、季節の変わり目に3回ほど衣類を取りに行ったことがあるが、それもワザワザ妻の不在を狙っているので、顔を合わせるコトすら無かった。
「やり直せ」と言われるならともかく、約束するまでも無いコトだった。


『オッサンは今日から1週間は出張でいないケド、来週の水曜日には家に帰ってくるの。
アタシの荷物は今度の週末に運び出すワ。
でも、こうやって夜に逢いに来るのは今夜が最後・・・』

あの気の強い眞知子サマが、涙をボロボロ流し、嗚咽しながら話している。
もちろん、私の涙腺がそれに耐えられるハズは無かったが、お互い向かい合ったまま手を取ろうか躊躇っていた。

そして、手を取り合ってしまえば・・・

2人ともその先のコトも予想できるので、身を裂かれるような想いでお互いを見つめ合っていた。



つづく
『それでネ、パパには会社を売る話を伸ばしてもらおうと思ってるの。』

―――何?何?なンの話?

眞知子サマには、旦那さんが出て行ったので今後どうするかを訊いているワケだが、なンでお父さンの会社の話が出てくるのだろう・・・・

『パパにしたって、やっぱり後継者は身内の方が嬉しいと思うの
ホントはアタシが継げばいいンだけど、今から違う勉強したくないし・・・
でも、リンならナンでもすぐに覚えられるでしょ?
だから、アタシと再婚してお婿さンになって欲しいの!』

―――またまた、これはハナシが大事になってきたデぇ・・・

『でもネ、離婚したら最低1年は再婚できないでしょう?
それに、家のローンの問題もあるし、財産分与とか・・・
何より気が重いのは、子供は2人ともオッサンに懐いてるのヨ
だから、このところソレで悩ンでたの』

―――するとナニか、私は父親の後継者候補として見られていたのか?

今さら驚くことも少ないと思っていたが、眞知子サマの提案には毎回驚かされるばかり。
今度はコトもあろうにこンなコトを考えていたのか・・・

私自身がどうなろうと、今までは深く考えてはいなかった。
しかし、今度は子供が関係している。
私のタメに2人の子供から慕われている父親を奪う権利は無いハズだ。

私が存在するせいで、週末はいつも家にいない母親。
夜中に目を覚ましてもいつも家にいないと思った子供は、いったいどれくらい寂しかっただろう・・・
平日の買い物も帰りは遅く、夕食はいつも夜の9時にはなっていたハズだ。
そンな時間までひもじい思いをさせているのは、すべて私の存在である。


「眞知子サマ。それでは私も提案があります」

『・・・・・・・・』

「私には眞知子サマのお子さンの父親にはなれません。
我が子を捨てて飛び出した男が、他人の子の親になれるハズもない!
それに、お父さンはこンな馬の骨なンかに継がすよりも、自分の育てた部下に会社を継いでもらいたいと思っているはずです」

『じゃ、じゃぁどうするのヨ!?』

「どうか、私を棄ててください。そして、優しいお母さンとして家庭に戻ってください」

『リンは?リンはどうするつもり!』

「私ひとりくらいなら、どうとでもなります。」

事実、そうだった。
今、会社は微妙な時期だが、デザインが出来ないのなら今の会社に残留する意味はない。
だから、今辞めると言えば退職金は上積みされるだろう。
その金を持って、妻と伸ばし続けている離婚話にも決着を着けられる。
その後のコトは、なぁに、男一匹、なンとでもなるだろう。

眞知子サマには、このようなコトを提案した。
笑って話すつもりだったが、私の涙腺はモノの1分も持たず、ほとんど泣きじゃくりながら、しかし最後まで眞知子サマの目を見つめながら説明した。


『わかったワ。じゃあ、今度の水曜日にオッサンと話し合ってみる
まだアタシの浮気が完全にバレたワケじゃないから、話し合いには応じると思うワ』


―――え? 案外あっさり、ですネ?



つづく
『ごめんネ、リン。でも、アタシ、どうしたらイイ?』


ガラス


昨夜は眞知子サマが逆上してこの部屋を壊滅させる勢いだったので、私は宥めてスカして、どうにか落ち着かせるコトにした。
しかし、いったンは落ち着いたモノの時間が経てばまた暴れだしそうだったので、とりあえず今夜は帰ってもらうように頼みこンだ。

ダイニングキッチンは割れた鏡や食器が散乱していたが、夜中にゴソゴソ物音を立てるのも憚られるので、片付け作業を後回しにして寝床に入った。

――酔っ払い過ぎ?それとも、本心?

眞知子サマはかなりお酒に強い方だが、今までに何度か泥酔してはノンちゃんや岩田君に酷いコトをしている。
ノンちゃんはアタマからグラスの水割りを氷ごとかけられたことがあり、岩田クンは脛に痣が残るようなローキックをお見舞いされた。
2人とも眞知子サマに惚れているので苦笑いをしながら赦しているが、泥酔したトキはかなりヤバい酒癖だった。

――旦那が家を出て行った・・・・

全くの初耳だった。
それから、常連客の酉島クンとキスをしたコトも知らなかった。

――考えても仕方ない・・・・

昨夜は私もかなり呑んでいたが、酔いはとっくに醒めていた。
同じコトを考えては止め、また考えては止めるコトを繰り返していたが、日が昇るころには眠りに就いていた。

電話

そして、夕方。
眞知子サマからの電話がかかってきたが、バツの悪そうな声だった。

『昨夜のコトはあンまりよく覚えてないの。
でも、リンにナニか悪いコトをしたような気がするのヨ・・・
ねぇ、怒ってる?今からそっちへ行ってもイイ?』

――ホンマかぁ・・・・

私は半信半疑だったが、ちょうどダイニングを片付け終わったトコロなので、快くお迎えするコトにした。


2人


『え?そンなコト言ったの、アタシが?』

眞知子サマの言い訳はまだ疑わしいが、とりあえず昨夜は泥酔したせいだと言いたいらしい。

『酉島のコトはウソよ、ウソ♡
アイツにはいつもああ言って、ずっと焦らしているの。
もう何年もこの手で焦らしては通わせてるのヨ♡』

妬きもちを妬くなと言いながら、私が妬くようなコトを平気でするのはどういう料簡なのか、男女のコトに疎い私には未だに理解できない。
しかし、このコトに関してはさほど問題ではないが、次の件はさすがに深刻な問題だった。

『オッサンが出て行ったコトはホントよ。
お店が休みの日にもかかわらずアタシが夜な夜な出て行くから、さすがにおかしいと思ったみたい。
まだ相手が誰かとかハッキリとした確信は無いようだけど、アタシが生活態度を改めるまでは帰ってくる気は無いンだって』

「そ、それで、眞知子サマはどうするおつもりですか?」

『それでずっと悩ンでるのヨ。
ホントはこの春にでもリンにパパの会社に入ってもらうつもりだったけど、パパはもう自分の社員に会社を売り渡す相談を済ませてしまったのヨ。
それから、リンの会社も今ちょっと微妙なンでしょう?』

――な、なンでそのコトを・・・・

私が勤める会社は昨年の夏に関東を拠点とする会社と吸収合併したが、存続会社は私の属する方ではなく関東系の会社だった。
今年の1月からは組織の再編が行われていて、部署や支店の統廃合が進んでいる。
私の所属する広報室は関東にも同じ部署があり、関東・関西に2か所も必要ないのでこの春までに関西の部署を廃止する予定になった。
私の処遇については、関西に残るなら営業に転属、デザインをするなら関東へ転勤、どちらも望まないなら退職と、3つに1つを選ぶことになっていた。

――しかし、そのコトは私の部下でさえ知らないマル秘事項なのに、なぜ眞知子サマがソレを知っているのだろう。




つづく