『それでネ、パパには会社を売る話を伸ばしてもらおうと思ってるの。』
―――何?何?なンの話?
眞知子サマには、旦那さんが出て行ったので今後どうするかを訊いているワケだが、なンでお父さンの会社の話が出てくるのだろう・・・・
『パパにしたって、やっぱり後継者は身内の方が嬉しいと思うの
ホントはアタシが継げばいいンだけど、今から違う勉強したくないし・・・
でも、リンならナンでもすぐに覚えられるでしょ?
だから、アタシと再婚してお婿さンになって欲しいの!』
―――またまた、これはハナシが大事になってきたデぇ・・・
『でもネ、離婚したら最低1年は再婚できないでしょう?
それに、家のローンの問題もあるし、財産分与とか・・・
何より気が重いのは、子供は2人ともオッサンに懐いてるのヨ
だから、このところソレで悩ンでたの』
―――するとナニか、私は父親の後継者候補として見られていたのか?
今さら驚くことも少ないと思っていたが、眞知子サマの提案には毎回驚かされるばかり。
今度はコトもあろうにこンなコトを考えていたのか・・・
私自身がどうなろうと、今までは深く考えてはいなかった。
しかし、今度は子供が関係している。
私のタメに2人の子供から慕われている父親を奪う権利は無いハズだ。
私が存在するせいで、週末はいつも家にいない母親。
夜中に目を覚ましてもいつも家にいないと思った子供は、いったいどれくらい寂しかっただろう・・・
平日の買い物も帰りは遅く、夕食はいつも夜の9時にはなっていたハズだ。
そンな時間までひもじい思いをさせているのは、すべて私の存在である。
「眞知子サマ。それでは私も提案があります」
『・・・・・・・・』
「私には眞知子サマのお子さンの父親にはなれません。
我が子を捨てて飛び出した男が、他人の子の親になれるハズもない!
それに、お父さンはこンな馬の骨なンかに継がすよりも、自分の育てた部下に会社を継いでもらいたいと思っているはずです」
『じゃ、じゃぁどうするのヨ!?』
「どうか、私を棄ててください。そして、優しいお母さンとして家庭に戻ってください」
『リンは?リンはどうするつもり!』
「私ひとりくらいなら、どうとでもなります。」
事実、そうだった。
今、会社は微妙な時期だが、デザインが出来ないのなら今の会社に残留する意味はない。
だから、今辞めると言えば退職金は上積みされるだろう。
その金を持って、妻と伸ばし続けている離婚話にも決着を着けられる。
その後のコトは、なぁに、男一匹、なンとでもなるだろう。
眞知子サマには、このようなコトを提案した。
笑って話すつもりだったが、私の涙腺はモノの1分も持たず、ほとんど泣きじゃくりながら、しかし最後まで眞知子サマの目を見つめながら説明した。
『わかったワ。じゃあ、今度の水曜日にオッサンと話し合ってみる
まだアタシの浮気が完全にバレたワケじゃないから、話し合いには応じると思うワ』
―――え? 案外あっさり、ですネ?
つづく