メンタンピンのメン、ダブル風の雀頭について | takuteiオフィシャルブログ「takuteiのほぼ麻雀」Powered by Ameba

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麻雀ロンのことや各種麻雀放送のことなど。

 ここ数日で、ルールにおけるご質問やご指摘があったので回答したいと思います。

 まず最初に「メンタンピンのメン」について。

 質問内容はこちら
 メンタンピンのメンは「本来は面前ツモのことだが、現代はリーチと考えるのが普通である。ただし、地域によっては面前ツモの意味しかない」という認識で間違いないでしょうか。
 実は、このことについて、私が所属してるSNSのコミュニティ内でトラブルが発生しています。
ある一人が、面前ツモの意味しかないと考えていて、他の方の意見を受け入れず、物知らずだとあるいは勘違いしてるだと批判しまくっていて、どうにもならないんです。
 そこで、勝手なお願いだとは思うのですが、お時間があればメンタンピンのメンの由来と変遷を教えていただきたいのです。


 では、まず現在一般的に(ここ大事です。つまり一般ではない場合もあります。後述)認知されている「メン」の用法について紹介します。

門前(漢字はこちらが正しいです)…「メンゼン状態」を表すメン。 用例…メンホン・メンチンなど
門前清自摸…いわゆる「ツモ」役の省略名。門前清自摸→メンツモ→ツモという流れですね。ただしこちらの場合、省略されてメンツモやツモとは言われますが、メン=ツモで使われるケースはまずないかと思われます。よって、地域によっては面前ツモの意味しかない、という部分には疑問が残ります。
リーチ…いわゆる「メンタンピン」で使われるメンはリーチを表します。ただし、リーチの意味でメンが使われるのは「メンタンピン」「メンピン」「メンタン」の3例のみで、この後に三色やドラなどを足して申告することになります。

 メンの使用ケースだけでも複数あることがご理解いただけるかと思います。

 さて、色々と混乱の元になったメンですが、『現代麻雀用語大辞典』(田中貞行/著 筑摩出版 麻雀博物館/蔵)で、門前清について調べてみました。
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 門前清(メンチェンチン)…ポンもチーもしないで、摸牌だけで聴牌し、アガることを門前清という。しかし、現在は一翻縛りのルールであるため、その門前清だけでアガることができず、自摸らなくてはいけないのである。これを「門前清自摸」といって、一翻役としている。

(中略)

 門前清で他家の捨牌によるアガリを「門前清栄和」(いわゆるメンゼンロン)という。しかし一翻役ではなく、加十副(=符)である。 

 あの符計算の時に出てくる「メンゼンロンはプラス10符」のルーツがここです。続いて、門前清の成立と変遷についての記述です。

 門前清は最初中国の北部で行われた地方的なアガリ役で、門前清自摸を加百副、栄和を五十副の役としていたのである。

 無翻100符や50符にしていたところは、チートイツの導入時期と似たような状況だったようです。

 その後、わが国で二つに区別するのは面倒だと両方とも一翻にしたのである。ところがそれでは面白くないと、摸和を両翻、栄和を一翻と変更したのである。これも、自摸和と栄和で得点差が少なく(←そうかなぁ?)不公平であるからと自摸平和を加えて得点差を是正しようとしたのである。

 なんと意外なことに、ツモピンフが導入されたのは「メンゼンツモとメンゼンロンの得点差を埋めるため」だったようです。「ツモったらピンフが消えるのは変」という主張から生まれたものだと思っていました。

 結局は色々の屈折の末、自摸和を一翻、栄和を加十副とすることに落ちついたのである。現在でも、関西で自摸平和を認めていないが、この時代のなごりなのである。

 話が多少横道に逸れましたが、メンゼンツモ・ロンのルーツはある程度ご理解いただけたかと思います。では、なぜこのように翻数や符が加減されたり平和とくっつけたりされるなど、変化が多かったのか。その原因は、「昔は食いピンフがあったから」だと思われます。

 今でこそピンフはメンゼン役ですが、昭和初期のアルシアール麻雀では鳴きピンフも1ハン役として認められていました。日本麻雀連盟は今でもこのルールを採用(ただしツモピンフはなし)していて、メンゼンピンフは240点、食いピンフは160点となっています。
 アルシアールの場合、役満・チンイツ以外は全て1ハンで、三色やイーペーコーなどがありません。リーチもありません。よって、現代麻雀に比べ符の価値が非常に大きいです。メンゼンの加10符もバカにできない存在です。

 もしかしたらここにメンタンピンのメン≠リーチの秘密があるかもしれません。

 通常の麻雀風景を想像してください。

リーチ麻雀でアガった時
A「ロン、メンピン」
B「ああ、2000点ね」

「ピンフはメンゼン限定」ですから、ピンフにわざわざメンゼンの「メン」は付けませんね。よって、メン=リーチということが無意識に使われていることが理解できます。

これがアルシアール麻雀だとこうなります
A「ロン、親のメンタンピン」
B「ああ、720点ね」

A「ロン、ピンフ」
B「ああ、160点ね」

 つまり、今の麻雀でもそうですが、ピンフは符が固定なので暗記した点数を申告しますよね。ところが、アルシアール麻雀の場合、点数決定の要素に「親か子か」「他の役の有無」に「メンゼンか否か」というものが加わります。実戦でも頻出するアガリですから、「ピンフは○点、メンピンは○点」という具合に暗記したのだと思われます。

 その後、麻雀の流行がアルシアールからリーチ麻雀に移り変わって、メンタンピンのメン=リーチと変化したのだと思います。が、同書でメンタンピンを調べてみましたが

門断平(メンタンピン)…立直(門前)、断ヤオ九、平和のアガリを略していうもの。

 としか記述がなく、その成立やその後の変遷まで探ることはできませんでした。ただ、現在使われているメンタンピンのメン=リーチという解釈で間違いはありません。

 まとめますと、「メンタンピンのメンは、ルールによって意味が異なる」ということになります。
アルシアールの場合=メンゼンのアガリであることを表す
リーチ麻雀(現代の一般ルール)の場合=リーチを表す

 という解釈でよいでしょう。

 いや~、すっかり長くなってしまいました。ダブル風の雀頭についても紹介する予定でしたが、別記事にしたいと思います。