男はつらいよ | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。

 

渥美清さんの大ファンです。

もちろん「男はつらいよ」シリーズは全部見てますし、

DVD もすべて所有してます。

 

でも、僕が若い頃は、

まだレンタルビデオ屋なんてありませんでしたから、

当然、都内のいろんな名画座で見たわけです。

情報誌をチェックして、

それまで見ていなかった旧作を、

上映している映画館を見つけると、

横浜だろうが埼玉だろうが千葉だろうが、

関係なく電車に乗って見に行きました。

 

とにかく面白かった。

だからあちこち見て回ることなど、

全然苦になりませんでした。

ちょうどその頃、

アメリカのニューシネマにもハマっていましたが、

「男はつらいよ」と黒沢明監督の映画は、

僕にとってはちょっと別格で、

それまで、どうしてこんな面白い映画を、

見ていなかったんだろうと、

取り憑かれたように見て回ったものです。

 

ある東京近郊の映画館でのことです。

「男はつらいよ」2本立ての、

1本が終わって休憩になりました。

トイレに入って用を足していたところ、

僕の隣に小学校高学年くらいの、

男の子がやってきて用を足しながら、

「ああ、寅さんってほんとにいいなぁ」と独り言ちたのです。

なんだか自分のことを褒めてもらったような心持ちになって、

僕は思わず涙ぐんでしまいました。

 

そして「坊主、お前にもわかるんだなぁ」

心の中でしみじみと少年に話しかけました。

もちろん寅さんの口調で。

 

 

▶︎近景