僕が高校3年生のときのことです。
船通学の悪い慣習は未だに続いていました。
あるとき、ひとりの1年生が、
勇気を振り絞って客室に入って来ました。
動揺する2、3年生。
やがて、いかにも不良といった感じの、
厳つい3年生が近づいて行き、
「おい、どういうつもりじゃ?」
1年生は緊張して黙っていました。
「おい、なんとか言わんかい!」
僕は勇気を振り絞って声をかけました。
「ほっといてやれや」
不良3年生は僕のほうを向いて目を剥きました。
「お前は自分だけ勝手なことしやがって、
それでええと思うとるんか」
「ええから、ほっといてやれや」
「おい、ちょっと顔貸せ」
「顔貸したら殴るんじゃろ」
「おお、殴っちゃる」
「恐いのう」
恐怖と緊張で僕は冷や汗をかいていました。
でも、なんとか踏ん張って、
その場から動きませんでした。
客室にいた大人たちがざわざわし始めました。
不良3年生はしばらく僕を睨んでいましたが、
やがてあきらめてその場を去りました。
明くる日から1年生たちが、
ぞろぞろと客室に入ってくるようになりました。
その日を境に旧態依然とした慣習は無くなりました。