船通学2 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


僕が高校3年生のときのことです。

船通学の悪い慣習は未だに続いていました。


あるとき、ひとりの1年生が、

勇気を振り絞って客室に入って来ました。

動揺する2、3年生。

やがて、いかにも不良といった感じの、

厳つい3年生が近づいて行き、

「おい、どういうつもりじゃ?」

1年生は緊張して黙っていました。

「おい、なんとか言わんかい!」

僕は勇気を振り絞って声をかけました。

「ほっといてやれや」

不良3年生は僕のほうを向いて目を剥きました。

「お前は自分だけ勝手なことしやがって、

 それでええと思うとるんか」

「ええから、ほっといてやれや」

「おい、ちょっと顔貸せ」

「顔貸したら殴るんじゃろ」

「おお、殴っちゃる」

「恐いのう」

恐怖と緊張で僕は冷や汗をかいていました。


でも、なんとか踏ん張って、

その場から動きませんでした。

客室にいた大人たちがざわざわし始めました。

不良3年生はしばらく僕を睨んでいましたが、

やがてあきらめてその場を去りました。


明くる日から1年生たちが、

ぞろぞろと客室に入ってくるようになりました。

その日を境に旧態依然とした慣習は無くなりました。



▶︎笹塚