そんなこともあってか、
僕は不良たちに目をつけられていました。
ある日、学校が終わって、
尾道の商店街を歩いていたときのことです。
見知らぬ不良学生が近づいて来て僕に言いました。
「顔貸せや」
そう言うとそいつは、
商店街の薄暗くて狭い路地に入って行きました。
僕は恐怖でブルブル震えてはいましたが、
ついて行って誰もいないところで、
暴力をふるわれるくらいなら、
人通りの多い商店街を歩いていよう、
と咄嗟に判断して、
そのまま無視してどんどん商店街を歩いて行きました。
そいつが追いかけて来て、
また呼び止められるかとびくびくしていましたが、
けっきょく誰もあとを追っては来ませんでした。
そうか、僕も恐いけど、向うだって恐いんだ。
腕力も度胸もない人間の唯一の抵抗方法はこれだな。
歯向かっては行けないけど、相手の言う通りにもしない。
映画の主人公たちのようにカッコ良くは出来ないけど、
僕に出来る精一杯の行動でした。