バック・グラウンド | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


10年以上も前のテレビバラエティで、

有名人の奥様ばかりが集まって、

ワイワイやってる番組がありました。


一般のミセスも参加して自分の体験談を話すのですが、

ある中年女性が自分の人生を語ったとき、

他の女性たちから総スカンを食ったことがありました。


彼女は若い頃に黒人の米兵と恋に落ち、

彼の子供を身ごもるのですが、

彼には本国に妻子がいて、

けっきょく彼女と子供を捨てて帰国してしまいます。


そして、彼女は現在も、

別の黒人の米兵と暮らしているのですが、

今の彼にも本国に妻子がいるらしいのです。

しかし、彼女は「今度の彼は大丈夫、

わたしは今ても幸せです」

と主張します。


他の奥様たちは彼女に向って意見します。

「目を覚ましなさい」「あなた騙されてるわよ」

攻められれば攻められるほど、

彼女もムキになって反論します。

しかし、彼女の味方をしてくれる人は誰もいません。

議論が白熱して収拾がつかなくなってきたその時、

番組は彼女の生い立ちの再現ドラマを流しました。


幼い頃、大好きな父親がある日突然蒸発してしまい、

彼女はずっと父親の愛に飢えて生きて来ました。

その後も、不幸続きの彼女の人生。

今の彼に望みをかけて、幸せにすがりたいと願う、

彼女の心情が痛いほど理解出来ました。


再現ドラマを見終わった奥様たちの中で、

彼女を責める人はもう誰一人いませんでした。


人が怒ったり泣いたりするのには理由があります。

この番組のおかげで、人間を演じるとき、

その人物の「理由」を見つけてあげることが、

とても大事なんだと気づかされました。



▶︎近景