宿題 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


小学校4年生の頃のことです。

算数の宿題でわからないところがあり、

映画館の切符売場にいた母親に聞きに行きました。


ところが母は「いま忙しいから」と教えてくれませんでした。

僕はなんだか無性に腹が立って、

「答えがわからんから教えてくれんのじゃ!」

観客のいる客席の通路を、
大声で文句を言いながら母屋に戻りました。

すると母が血相を変えて追いかけて来て、

「教えてあげるから座りなさい!」

と険しい顔で言いました。

僕は普段穏やかな母親が、

ヒステリックになっていることにびっくりしました。

僕は泣きながら母に算数の問題を教わりました。

母も泣いていました。


淋しかったのです。


父と母は朝から晩まで働いていました。

しかも下の弟は生まれたばかりの赤ん坊でしたし、

上の弟はまだまだ甘えたい年頃で、

母の愛情は弟たちに注がれていました。

長男の僕は母親が困るだろうと甘えるのを我慢していました。

だから算数の問題を教えてもらうという名目で、

母に甘えたかったのだと思います。

自分もかまってもらいたかったのです。

もしかしたら、そんな僕の気持ちを、

母も察していたのかもしれません。

だから母は感情的になったのだと思うのです。


女性が子供を生んだあとに仕事に復帰する。

この不況の最中そういうケースは多々あると思います。

でも、もし経済的に許されるのなら、

出来るだけお子さんのそばにいてあげてください。

お母さんの生き甲斐は仕事ではなく、

お子さんでいいんじゃないでしょうか。



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