お茶子 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


ちなみに「お茶子(おちゃこ)」というのは、

関西独特の言い方で、

寄席や芝居小屋で、

芸人や役者の世話をする人たちのことです。

高座では座布団を、

ひっくり返したりすることもあったようです。


当時、祖父の映画館ではこのお茶子さんが大勢いて、

売店でお菓子や飲み物を売ったり、下足番をしたり、

館内のいろんな仕事に従事していました。

「お煎にキャラメル~」

という売り声が懐かしいですね。


尾道市には「かんざし灯籠」という伝説があります。

江戸時代の末期、尾道の芝居小屋に、とても美しい、

しかしどこか寂しい影のあるお茶子さんがいました。

そのお茶子に浜問屋の若旦那が恋をします。

しかし身を飾るかんざしひとつない、

みすぼらしいお茶子の姿を見た両親は、

けっして二人の恋を許してはくれませんでした。


世をはかなんだお茶子は井戸に身を投げ命を絶ちます。

そして幽霊となって大銀杏の下に出るようになりました。

娘は夜な夜な悲しい声で、

「かんざしをください」と訴えていたそうです。

そんな薄幸の娘の哀れを慰めるために、

心ある人々がお金を出し合って、

八坂神社に灯籠を奉納しました。



▶︎みりん