故郷 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


広島県尾道市因島。

2006年に尾道市に編入合併されましたが、

それまでは「因島市」でした。

僕が子供の頃の昭和30年代、

因島市は造船の街でした。

島で最大の日立造船所には大勢の工員が働き、

造船景気で島は賑わっていました。


造船所から歩いて5分くらいの商店街に、

僕の祖父が経営していた映画館がありました。

東映の時代劇に日活の無国籍アクション。

客席は工員さんたちや街の人々で溢れていました。


当時の映画館の客席は、現在のような一人掛けの、

フカフカのクッションではなく、

4人掛けの木製のベンチでした。

腰かけて映画を見ているうちにお尻は痛くなってきます。

なので懐にちょっと余裕のある人は、

入場したときにお茶子さんから座布団を20円で借り、

ベンチの上に敷いて映画を見るのです。


また当時はエアコンなどない時代です。

大きな扇風機が客席の天井で何機か回ってはいますが、

夏場は扇子や団扇を持参し、

手ぬぐいで汗を拭き拭き映画を見なければなりません。

反対に冬場はなんの暖房設備もないので、

広い映画館の客席はしんしんと冷え込みます。

そんなときはやはりお茶子さんから七輪を有料で借り、

それを自分の足元に置いて映画を見たものです。



▶︎近景