紫式部 | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


源氏物語が書かれた時代には、

怨霊を鎮めることを専門とする役人がいました。

陰陽師の安倍晴明です。

平安時代の最高権力者で紫式部の支援者でもあった藤原道長は、

怨霊を恐れ安倍晴明を重用していました。

当時の記録によれば道長は実際に怨霊に取り憑かれた女官に、

襲われるという事件にも遭遇しています。

権力争いをした元関白の怨霊によるものと、

道長は考え祈祷を実行。

怨霊の存在が広く信じられていたのです。

源氏物語の中にも数々の怨霊が登場してきます。


ところが作者の紫式部は、

怨霊について興味深い指摘をしています。

「死んだ人が怨霊になると脅えるのは、

自らの心の鬼のせいではないか」

つまり怨霊への恐怖はみずからの罪悪感から、

生まれているのではないかというのです。

人に理不尽な仕打ちをすれば罪悪感となって跳ね返り、

自分自身が苦しむことになる。

紫式部のこの人間に対する洞察力と理解の深さ。

現代人よりも全然客観的ですね。


▶︎近景