もともとシェイクスピアが大好きで舞台俳優を目指しました。
高校3年生のときの文化祭で「ハムレット」を演じました。
教室を一部屋借りて暗幕を張り巡らし、
企画、演出、主演をこなしました。
何故か当時から小劇場志向だったんですね。
体育館でやってた演劇部の舞台より好評で、
新聞部が取材に来たりして、
まあ、得意満面で「生か死かそれが問題だ!」
なんてやってましたね。お恥ずかしい限りです。
「ハムレット」の中に、
オフィーリアというヒロインが登場してきます。
この人物、よくわからないキャラクターなんです。
デンマーク王子であるハムレットの恋人で、
ハムレットと敵対する叔父王に仕える大臣の娘なんですが、
父親にハムレット様と付き合っちゃならんと言われて、
おとなしく「はい、お父様」って承知してしまうし、
その父親をハムレットに殺されると、
今度は気が狂って川に落ちて死んでしまうという、
まあ、可憐で儚い役なんですが、
もちろん、彼女の中では、
葛藤があったり苦悩があったりはするんでしょうけど、
なにも、気が狂って死ぬほどのことではないんじゃないかなあ、
と、ずっと思ってました。
で、30年間、ずっとこだわっていて、
あるときフッと思ったんです。
もしかして、彼女のお腹の中に、
ハムレットの赤ん坊が宿ってたとしたら?
父親に反対され、恋人には冷たく罵られ、
うろたえ悩んでいる最中にも、
お腹の中の赤ん坊は毎日育っていくわけです。
そのことを誰にも相談出来ずに苦しんでいる最中に、
父親が恋人に殺されてしまう。
これならば納得がいきます。
オフィーリアの気持ちが初めてわかったように思いました。
でも、もう僕には演じられません。
いや「もう」じゃなくて元々演じられません。
残念ですが。