泣く | 田窪一世 独白ノート

田窪一世 独白ノート

ブログを再開することにしました。
舞台のこと、世の中のこと、心の中のこと、綴っていきます。


泣く演技をするときに、

昔、死んだ愛犬のことを思い出して泣く、

というのをときどき聞きます。

これ、相手役の俳優さんに大変失礼だと思うのですが。


昔、飼っていた犬にしろ、たとえそれが人間の家族であれ、

その記憶は俳優個人の過去の記憶です。

つまり、それは役の悲しみではありません。

たとえば、死んでしまった人を、

目の前に泣かなければならないとき、

自分の演じている役と相手の役との間にあったことを思い出す。

それも出来るだけ心の琴線に触れてくる出来事を。

台本に書かれてあることを手がかりに、

人物の心情や心理を出来るだけ具体的に想像する。

誰にも言えない、自分とその人だけの秘密。

もしくはその人にも話していない引け目に思うこと。

そんなことを想像していると、自然と気持ちが動き始めます。


最近聞いたことですが、

なんと人間の脳は、
現実と想像の区別がつけられないらしいのです。

俳優にとって、これは朗報です。


▶︎青山