5月18日(水)シアターコクーン13時開演の
「8月の家族たち」を観に行きました。
劇場エントランス近くのエレベーター前の記帳台には
蜷川幸雄さんの写真が展示されていました。
<タイムテーブル>
作:トレイシー・レッツ
翻訳:目黒条
上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
<出演>
麻実れい、秋山菜津子、常盤貴子、音月桂、橋本さとし、
犬山イヌコ、羽鳥名美子、中村靖日、藤田秀世、
小野花梨、村井國夫、木場勝己、生瀬勝久
<あらすじ>
詩人でアルコール中毒の父ベバリー(村井國夫)が突如、失踪。
その知らせを受け、8月酷暑のオクラホマ州の実家には、
両親思いの次女アイビー(常盤貴子)、5年振りの訪問となる
母方の叔母マティ・フェイ(犬山イヌコ)と夫のチャーリー(木場勝己)、
そして長女バーバラ(秋山菜津子)と夫ビル(生瀬勝久)、
その娘ジーン(小野花梨)が帰省してくる。
久しぶりに集まった家族が目の当たりにしたのは、
夫の失踪と薬物の過剰摂取で半錯乱状態となった
母バイオレット(麻実れい)の姿だった。
そしてある衝撃的な事件が起こる。やがて三女カレン(音月桂)が
婚約者スティーブ(橋本さとし)を連れてやってくる。
寝坊した叔母の息子・リトル・チャールズ(中村靖日)もようやく現れ、
一族全員がそろい楽しいディナーを迎えるはずが、
皆が抱える心の闇が見え隠れし始める・・・。
2007年にシカゴの劇場で産声をあげた本作は瞬く間に脚光を浴び、
同年にはブロードウェイに進出、戯曲はピューリッツァー賞を受賞、
作品はトニー賞最優秀作品賞他4部門を受賞。
映画版は、母役にメリル・ストリープ、長女役にジュリア・ロバーツ、
次女役にジュリアン・ニコルソン、三女役にジュリエット・ルイス、
そしてユアン・マクレガー、ベネディクト・カンバーバッチなど
錚々たるキャストが出演した名作。
オクラホマの二階建ての家のセットがよく出来ていて、
本物の家の手前の壁だけを取り払って、
中が見えるようになっているような造りでした。
今年はやけに薬物中毒の舞台を観る機会が多いのですが、
麻実れいさんのバイオレットも怖かった~
足元がふらつきながら階段を下り、這いながら上がる。
ろれつがまわらなくて目はうつろ。親族が談笑しているのに
ひどく攻撃的な言葉で悪言雑言を吐き、周囲を凍り付かせる。
バーバラ役の秋山菜津子さんとの母娘喧嘩は、
口喧嘩から取っ組み合いの喧嘩になり周囲をあわてさせる。
すごい迫力だった。( ̄□ ̄;)
若い女性と浮気をした夫をヒステリックに問い詰めるバーバラ。
最初は笑ってかわしていた夫・ビルもついにブチ切れる。
あの追い詰め方では修復不可能になるのも無理はない。
夫婦喧嘩があまりにも激しく、リアルなので、マチソワで
あのテンションを保つなんて尋常じゃないと思われる。
犬山イヌコさんと木場勝己さんの夫婦役は、
長年つれそった夫婦感がにじみでていて、夫婦の歩んで来た
歴史が脳裏に浮かんでくるような演技だった。
どうしたらあんな空気が出せるのだろうか…
あらためて役者という職業に尊敬の念を抱かずにはいられない。
母親から精神的に虐待を受けていたバイオレットの
壮絶な生い立ちは聞いていて辛かった。クリスマスプレゼントの
ブーツのエピソードでは思わず顔をしかめてしまった。
とにかく明るい三女のカレン役を演じた音月桂さん、
恋する乙女のハッピーオーラまき散らしがキュート。
スティーブ役の橋本さとしさんは浮気性の色男の役。
ジゴロ役のさとしさんを見た事がなかったので新鮮でした。
明るい髪の色が似合っていて、ジーンをくどくシーンがセクシー。
全体的に、感情の上下が激しくて、ヒステリーな女性陣に、忍耐強く耐える
男性陣、そして最終的に爆発という感じだったような気が… A^_^;)
母が薬物中毒という設定ではあるが、現実的に一般の家庭に
置き換えると、配偶者亡き後、残された認知症の親の面倒は
誰が見るか、と姉妹の押し付け合いともとれるようなシーンもあり、
思春期の娘と母の親子喧嘩、壮絶な夫婦間バトル、
どこにでもあるような家族の光景なのに、やけにドラマティックだった。
家族間では相手の事がよく分かっているだけに、
相手が一番傷つく言葉でやりこめようとして、口喧嘩もすごい事になる。
そんな中、チャーリーの食事前のとぎれとぎれの長いお祈りや、
住み込みの家政婦・ジョナが作ったなまず料理を気味悪がった
女性陣がお互い食事を勧め合うシーンが面白かった。
後半は怒涛の衝撃告白が続き、驚きの連続 (@_@)
当初3時間超えなので、耐えられるかな、と思ったが、
ストーリーも台詞も面白くてあっという間だった。
コメディとシリアスのバランスが絶妙で濃い舞台だった~(´∀`)