炭坑ガールズ10周年おめでとうございます。感じられる好循環 | 君が好き

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昨日は、炭坑ガールズ10周年、前身のMJKから12年という記念のライブに行ってきた。

MJK

このグループとは、ぼくは残念な出会い方をした。
話は2013年頃にさかのぼる。当時ぼくは荒尾を飛び越えて、熊本のアイドルに通いだしていた。
その熊本のアイドルに元MJKの子がいた。そこでぼくは初めてMJKという名前を知った。ただ、そのあとに見たのがその子がMJKを脱退する日に書いたブログだったのだ。なんて悪い出会いなんだろう。
現在ならばある程度、アイドルが脱退や卒業する理由はオブラートに包むものである。運営から「この件につきまして(残った)メンバーに質問されることはご遠慮ください」とアナウンスされ、そのメンバーの名前を出すこともタブーになるのが普通だ。
そうやって永遠の嘘をついてもらうほうが、ヲタクも切り替えしやすくありがたいのだが、当時はそんなノウハウはなく、まだ中学生だったその子は「やり方と考え方が違ったから」辞めますと素直にブログに書いていた。
その子が言うにはMJKは「みんな平等であること」を大切にしているグループで、「競いあって個人のレベルを上げていく本格的なグループ」ではなく、「仲良しグループ」でやっていくのだろうとその子は感じたらしい。その子はそれだと続けられないということで、辞めたんだとぼくはそのブログを読んで解釈した。
2013年は、NHKの朝ドラで「あまちゃん」が放送され、アイドルブームが最高潮の時期だった。新潟のNegicco、仙台のDorothy Little Happyや福井のせのしすたぁ、愛媛のひめキュンフルーツ缶などいわゆるご当地アイドルが中央のアイドルシーンに登場し、九州でもLinQがオリコンチャートを賑わせていた。
ご当地アイドルでも中央のアイドルシーンで活躍できる。
そんな夢を持てる時代で、どんなご当地アイドルでも上を目指していた時代だったのだ。
そんな時代に「仲良しグループ」というのは、なんとなく「やる気がないのかな」と感じられる風潮だった。
2013年夏に九州のアイドルを紹介する雑誌「九州アイドルBOOK」が発売され、そこにもMJKが掲載されていた。そこでMJKのメンバーが「次の目標はサンパレス?」「ムリムリ(笑)」と話していた。それを見てぼくは、多分冗談で言っていたのかもしれないけど、MJKに対し「仲良しグループ」という偏見を持っていたこともあり、MJKには結局感心を持たなかった。
そのままMJKはいつのまにか炭坑ガールズと変わっていった。炭坑ガールズに関しては、同時期の佐賀乙女みゅーすたーもそうだったのだか、2015年以降、アイドルブームが一段落ついたところで、ジュニアアイドルのブームが起こった時期がある。そのブームに乗ってメンバーが低年齢化したようにぼくには見えた。ぼくは、いわゆる若い少女が努力やチャレンジをしてステージを見せるアイドルが好きなので、自然の才能が生み出すその年齢にしか出せない尊さを愛するジュニアアイドルはあまり興味がない。だからこの時期は炭坑ガールズという名前は知っているけど、ぐらいの状態だった。
ただ、コロナ前ぐらいに発表された「KURO★DAIYA」はいい曲だなと思った。だけど、やっぱりメンバーが若すぎた。いまでいうなら基山のFloraの「Jump」はぼくはすごく好きなんだけど、メンバーが若すぎてライブに行こうとはなかなかなれない。そんな感じだった。

ただし、佐賀乙女みゅーすたーは2021年に活動休止してしまったが、炭坑ガールズはずっと活動していた。
HKT48やそれこそMONECCO5もそうだったけど、活動期間が長くなれば若すぎるメンバーでも着実に歳を重ね、成長する。

2022年に始まった天海でのLIKE。
このイベントに炭坑ガールズはよく出演していた。2022年はチームKINGとチームQUEENがあり、KINGとQUEENで2ステージなんてこともあった。
ぼくはこの頃になって、着実に成長している炭坑ガールズを見て、ようやく「仲良しグループ」「ジュニアアイドル」という偏見がほぐれ、なかなかいいグループではないかと感じるようになっていた。
最初に感じたのが、バック転を連発する間奏。仲良しグループでぬるくやっててはできるはずのないそのパフォーマンスは、文字通り血のにじむような努力を感じさせ、偏見に満ちていたぼくの目を覚まさせてくれた。
アイドルメンバーさんも昔は小中学生が主力に見えたのに、グループの中心として歌にダンスにアクロバットにとこれでもかと見せつけるYUIさんも、大人びた歌声でファンを魅了するしょうこさんも高校生になって、グループを引っ張っていた。
中高生メンバーが活躍すると、その背中を見て一生懸命に頑張る小学生も愛しく見えてくるから不思議なものだ。身近な目標があることで、小学生メンバーがそのときしか出せないかわいさ以外のものも出そうと努力しているのが見えるからだろう。むしろその年齢層の幅もグループの引き出しの多さという武器にもいまはなっているように感じる。

Re:fiveと共演することも多く、いいグループだなあと感じていた。

今年になり、ようやくその炭坑ガールズの主催イベントに足を運ぶ機会が出てきた。
四月の荒尾シティーモールでのメンバー卒業イベントと、七月の万田坑での運動会、そして昨日の10周年イベントである。
どのイベントもメンバーの保護者の方がお手伝いをされていて、しかもその保護者の方のお子さまがわちゃわちゃしている雰囲気で、いわゆるアイドルイベントとはちょっと空気が違う。弟さんか妹さんなのか、メンバーさんが小さな子を抱いてる姿を目にすることもある。
初めて行ったとき、ぼくは「なんてアットホームな現場なんだ」と驚いた。
だけど、10周年イベントを拝見させていただいたからこそ感じられるのは、だから10年続いたんだよなということだった。

ぼくがMJKを知ってから11年、炭坑ガールズが結成されてから10年。
ご当地アイドルといわれたローカルアイドルの環境は大きく変わった。

一言でいえば都会の方向ばかりを向いても、都会のアイドルには勝てない。それよりも目の前の現実に向かい合い、地元で小さな成功を積み重ねることのほうが大事だということだ。絵に描いた餅は食べられない。それよりも目の前のピーナッツを食べたほうがいいということだ。

炭坑ガールズは「紅白歌合戦に出場する」という目標はあるそうだが、目標はあくまで目標。いつくるかわからない将来を見るのではなく、目の前の現実を素敵なものにする。それこそが大事なのだ。昨日イベントで改めてその「紅白出場」の目標をメンバーが言ったとき、フロアには笑いが起こり、代表さんが「笑ってましたけど一応本気の目標です」と言われたほどだったが、目の前にいるファンを喜ばせてこそ、その先のたくさんの人に届くグループになるきっかけになることを、代表さんもメンバーさんも知っていることが表情からは感じられた。
つまり、遠くにある目標ばかりを見るのではなく、近くにいるファンを楽しませることが第一で、その先に目標があるというスタイルなのだ。

そしてファンのほうも、十年前は中央がローカルアイドルに近く、またアイドルを推すことにも慣れていなかったから、グループが大きくなるのを見守る、一緒に夢を叶えるという姿勢の人も多かったが、ヲタクとしていくつも挫折を経験したこともあり、いまやその日1日を特別な日にしてほしくてアイドルに会いに行くようになっている。「あまちゃん」から11年が経ち、そこを大事にするアイドルがファンに愛される時代なのだ。

炭坑ガールズはそのニーズに合わせたわけではなく、アイドル活動と共に荒尾を盛り上げる活動をしているうちに、そんないまのファンのニーズにマッチしてしまった。
なにせメンバーとファンの距離が近い。
たとえば、ぼくなんかはRe:fiveの予約で入っているんだけど、Re:fiveがステージに上がるとファンと一緒に見に来てくれたりしてうれしい。なにげに今年は、推しの生誕祭でガチ恋口上をかぶせてくれたメンバーさんもいた。
とにかく、ファンとも仲良く、他のアイドルとも仲良く、そしてなによりメンバー同士が仲がいい「仲良しグループ」なのだろう。
特にメンバーさん同士は、それぞれのメンバーたちが信頼と尊敬をしあってグルーヴを生み出しているのがステージを見れば感じる。
かつてはネガティブにとらえられていた「仲良しグループ」という言葉が、いまや最大の強みになっているのだ。それもファンが望んだから演じているのではなく、結果としていままでの10年間の活動の積み重ねでそれが最適解になっているから本物である。
そしてアイドルファンのニーズを満たすだけではなく、依然として、炭坑の歴史の伝承者として、地元を盛り上げる任務も抱えている。
そのために、保護者の方も惜しみ無く協力する。
それによってファンは最高のもてなしを受ける。
その素晴らしい好循環が炭坑ガールズの主催イベントでは感じられる。
これは10年という歳月の試行錯誤の中で培ったものだろう。
そしてその年月の積み重ねによって、10年経ってようやく、炭坑ガールズの地道な努力にファンのニーズが追い付いたと感じる。
アイドルを見に来るヲタクというのは正直な話、世間体もあって卑屈な気持ちもある。どちらかというと「アイドルを見させていただいてありがとう」という気分のほうが強く、運営さん自体も接客業という意識よりもクリエーターという意識のほうが強く、あくまでヲタクは芸術に触れさせてもらっている側という心理が強い。
そのようなヲタクたちに居心地の良さを与えるあたたかい現場というのは、ヲタクとしては本当にうれしいものである。
そしてこれからも、あたたかい現場を続け守ることは、それが当たり前のようで特殊なことであるから、いつか大きな成果につながる気がぼくはしている。
重ねていうが、炭坑ガールズは幅広い年齢層という武器と仲の良さという強みを持っている。大事におもてなしされたために、何かお返したいと思っているファンもいる。
そういえば、ライブ中に放映されていた動画で、NHKテレビに出演していたり、万田坑が世界遺産認定されたときにはくす玉の真下にいたりと、ぼくの知らないあいだにも、大きな実績を炭坑ガールズが残していることを10周年ライブで知った。
これからの10年も、ファンのために、そして地域のために、あたたかく活動することで、炭坑ガールズが栄光をつかむことを願っている。