東雲ういの求めていた答えが素晴らしかった ~ういたんさい2024~ | 君が好き

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8月末からそわそわしていた推しの東雲ういさんの生誕祭「ういたんさい2024」。
普段はRe:five界隈の万年二軍ヲタクとして、熱狂的な方が応援されている場所におどおどしながら混じらせてもらっている不肖・たきびだが、「推しの生誕」というこの日ばかりは、年に一回、声枯れるまで身体果てるまで張り切るイベントだ。
ただ、いざ9月になり、なぬきはなのさんのイラストに吉川りおさんデザインで発表されたフライヤーとタイムテーブルを見て、ぼくは一抹の不安を覚えた。


一言でいうと「Re:fiveの持ち時間短くね?」と感じたのだ。
タイテを見たぼくのイメージはまず、Re:fiveが15分やる。それからゲストが三組登場で、三組ともういちゃんの生誕を祝うMCをしてくれるのは楽しみだけど、そのあとのコラボステージでどれだけういちゃんが出演するのか? 最初に熊本県産カツカレーをやってそのときはういちゃんがいても、そのあとはドレスに着替えるため、ういちゃんは披露宴の花嫁のお色直しのように中座するかもしれない。そのあいだに、他のアイドルがういちゃんの話をしてくれるだろうが本人はいない。そして最後の25分間でドレスに着替えたういちゃんがソロを歌って、それからRe:fiveかもしくは全員で踊って終わり。そう考えるとういちゃんの出演時間は15分と25分の40分ぐらい。ライブ時間の半分にも満たない。年に一回のういちゃんが主役のステージにしては物足りない気がしたのだ。
たとえば、ゲストを呼ぶ生誕祭で他のグループなどでよくあるのは、ゲストは20分ぐらいの枠で歌って、最後に主役のいるグループがゲストよりも長い時間、たとえば40分ぐらいのステージをやるなんていうタイテがよくある。そういうのでいいのに、最初に出てきて、そのあとソロまでういちゃんお預けとかの展開になったら、ちょっとなあなんて考えていた。

とはいえ、ういたんさいである。
我らの推し、東雲ういさんの生誕祭である。
会場に着くなり目にしたのは、飾り付けられた「studio5」の看板と、予約特典の「しののめガチャ」の文字だった。

 

 


昨年は入場者全員にダジャレ付きのメッセージカードと入浴剤、お菓子をプレゼントしてくれたういちゃんだが、今年はそれがガチャ形式になっていた。ぼくはばっちりガルボをいただいた。ういちゃんからガルボをいただくなど、めちゃくちゃ珍しくてうれしかった。こういう事前告知のないサプライズが用意してあるだけで、ういたんさいがただの生誕祭でなく、まさにお祭りという気分になる。

そのお祭り気分のまま、ライブがスタート。
タイムテーブル通り、まずはRe:fiveが登場。衣装は三年連続のネクタイ衣装だったが、今年はスカートがチェッカー柄だった。
生誕祭のセットリストは主役のメンバーが決めるのがRe:fiveの伝統で、一曲目は「Ifの向こう側へ」だった。登場したメンバーがタオルを持っていたので、Overtureのときに「ダンデライオン」かなと思っていたため少々意外な選曲だったが、「どこまでも行こうよ♪」という歌声を耳にすると、まさにこれから二時間の夢の世界に連れてくれて行ってくれるように歌ってくれている感じで、ぼくにとって特別な日の特別なステージのオープニングにぴったりな曲だった。
二曲目は更に意外な新カバーだった。そういえば、いまやRe:fiveのライブでたまにやるカバー曲も、去年のういたんさいで初披露された曲がある。ヲタクの感覚からすると盛り上がりたいから、定番の曲をやって欲しい気持ちも正直ある。だけど、アイドルとして進化すること、チャレンジすることを忘れないために、ういちゃんは今年も自分の生誕祭という大事な場面で、新カバーを持ってきた。「だから東雲ういは推せるんだよ」と、初めて聴く曲でもともと万年二軍ヲタクなのでうまく沸けなかったぼくは、ニタニタしながらういちゃんを見ていた。
そして危惧していた通り、あっという間にRe:fiveは最後の曲になった。本当に「いま来たばっかり」の気分。最後の曲は東雲うい推しにとっては大事な曲で間奏でういちゃんにフォーカスが当たる「オトナと僕の。」だった。ういちゃんが主役の日だから、ういちゃんが主役のこの曲を聴けるのは最高。その気持ちは涙腺が緩むほど高まって、ヲタクもフルスロットル。曲のあと、柊わかばさんが「過去いちの盛り上がりだったんじゃない」と言われるほど、盛り上がった。
ういちゃんはそのMCで、その過去いち沸いたヲタクに対して「ありがとうございます」と礼を言ってくれた。こういうヲタクに対する気持ちを、ちゃんと伝えてくれるのも本当にうれしい。最強アイドルだなと感じてた。ただ、これでRe:fiveのステージは終了だった。

そのあとはゲストのステージが続いた。
なんだかんだういちゃんが見たいと思いながらも、炭坑ガールズも熊本FlavorもSunny Honeyもぼくは大好きだ。
そのグループが「ういちゃんおめでとう!」と言ってくれて、熊本のアイドル界隈でおなじみの曲をやってくれるのは普通に楽しい。
ただ、この時点では気づけなかったけど、密かにこの三組のステージでは、このあとのういたんさいを盛り上げる仕込みをしていた。

Sunny Honeyのステージが終わり、タイムテーブル的にはコラボステージの時間に入る。
そこに登場したのは生誕委員の作ったなぬきはなのさんイラストのTシャツにレザーのスカートに着替えた空豆かれんさん、ひとりだった。
例年通り、こういう場面の司会はプロ司会者の吉川りおさんが仕切るのだろうと思っていたぼくの予想が大きく裏切られた。そもそも、失礼を承知でいうと、わりとRe:fiveのステージを見ているぼくでも、物販交流会ではよくお話ししてくれるけど、ステージでMCをするかれんさんを見ることはあまりなかった。企画でも他のメンバーやアイドルさんにいじられることは多かったけど、自分からいじることはほとんどない印象だった。
そのかれんさんが「ういちゃんをみんなで呼びましょう」「声が小さいですよ」と、チケット完売で満員のフロアを煽る。かれんさんの新しい一面だった。Re:fiveの新しい引き出しが生まれた瞬間だった。
そして、かれんさんの先導で声をあげたヲタクの声に応えるように、主役のういちゃんが登場。なんと、ここですでにドレスに着替えていた。

ということはお色直しの時間はこれから必要ない。
もしかして、ういちゃん、コラボステージ全部に出るつもりなのか?
そう考えていたら、「かわいいでしょ」と言いながら、ういちゃんもかれんさんもSunny Honeyのメンバーが持つようなデコレーションされたうちわを持っていることに気づいた。
これはまさかと思うと、そのまさかの予想通り、うちわを持ったSunny Honeyのメンバーがステージに登場。
コラボってこういうことだったんだと目を丸くしていると、ギターのカッティングのイントロが流れ、Sunny Honeyに空豆かれんさんとういちゃんの5人で、前半のステージではSunny Honeyが歌わなかった「太陽的な僕の彼女」が披露されたのだ。Sunny Honeyとかれんさんが四人で脇を固めるように踊り、真ん中でういちゃんが主役になっている素敵な光景だった。終わったあと、「Sunny Honeyさんに大きな拍手をお願いします」とういちゃんは満員のフロアに向かって言った。そのういちゃんが見せたSunny Honeyへのリスペクトも気持ちよかった。
すごい仕掛けじゃないかとぼくは思った。
ういちゃんの生誕祭だから、多くの人はういちゃんを見に来ている。だけど、全員が全員ではない。ぼく自身もRe:fiveがゲストで呼ばれているからという理由で、他のアイドルグループの生誕祭を見に行くことはよくある。
それがこのコラボステージは、ういちゃんを見に来た人も、そしてほかのグループを見に来た人も楽しめる仕組みなのだ。しかも、しっかりゲストの持ち歌を踊れるういちゃんから、そのゲストへのリスペクトも感じられる。それぞれのゲストの曲を覚えなければいけないういちゃんは大変だっただろうが、おかげでういちゃんのファンも、他のグループのファンも楽しめるステージが繰り広げられているのだ。ういちゃんのその努力とアイデアに、「これぞ、東雲ういのアイドル力だ」と何度も頷いた。
Sunny Honeyとかれんさんがハケると、今度は白鳥ひなさんが登場。ういちゃんと軽く話すと、なんと白鳥ひなさんが進行をして、ういちゃんと熊本Flavorを呼び込んだ。これも珍しい場面で、Re:fiveの新たな一面だった。

ナチュラルにメンバーの成長の場を自分の生誕祭で提供する。このういちゃんの気配りが、グループの飛躍を考えていて心憎い。

熊本Flavorと白鳥さんが並ぶと、Sunny Honeyとかれんさんのかっこいい印象から一転、かわいい空気に満ち溢れる。その真ん中に、さっきまでかっこいいダンスをSunny Honeyとやっていたういちゃんが君臨しているのが、まさにういちゃんのアイドル性の高さを感じさせた。やる曲はFlavorの中でも特にかわいく、Junior flavor kumamotoの頃から歌われていた「シエスタ」。新衣装でこれまで以上にかわいさが強調されている熊本FlavorやRe:five NO.1のかわいいかわいいお姫様の白鳥さんを従えて、ドレス衣装も相まってふわふわしたかわいいういちゃんが輝いていた。「シエスタ」のかわいい煽り「みぎ、ひだり、くるくるぱっ」をういちゃんが言い、「もう一回」のところが「かわいすぎて昇天しそうだった」と熊本Flavorの最年少・聖ともかさんが言われるほどかわいかった。終わったあと、「ひなちゃんどうでした?」と話を振るういちゃんに、先輩の威厳とひなさんの成長を願う優しさを感じた。
熊本Flavorと白鳥さんのあとは、普段のライブでもRe:fiveのMCを支えている柊わかばさんが、「じゃんじゃじやーん」と登場。「わたしとひなちゃんの声援の差が大きすぎない?」とヲタクをいじる姿はさすがの貫禄。4月の荒尾シティーモールの炭坑ガールズのイベントで、「他のアイドルさんも一緒に踊りませんか?」と呼ばれたときに一番に走ってステージに向かったときのように、盟友・炭坑ガールズとともに「KURO★DAIYA」を披露。ここでようやくぼくは、そういえば炭坑ガールズも前半のライブでこの曲をやってなかった、このために取っていたんだと、このコラボステージへの各グループが協力した仕込みに気づけた。それこそがまさにみんなでういちゃんをお祝いしているようでうれしかった。
ういちゃんも真ん中で楽しそうに飛んでいたが、これもういちゃんの狙いだったんだろうけど、炭坑ガールズとコラボのときの柊わかばさんはやばい。めちゃくちゃ楽しそうに炭坑のメンバーと踊る姿が楽しすぎて、それに釣られて主役のういちゃんも喜ぶという不思議な展開になっていた。
それでも炭坑ガールズのリーダーYUIさんが、ハケるときにういちゃんに深々と頭を下げていた。ういちゃん本人やういちゃんのファンであるぼくたちだけでなく、コラボステージに協力したアイドルさんたちも楽しくて、その楽しさがこのYUIさんのういちゃんへの態度に現れている気がして、この空間はまさにみんなが幸せになれる空間で、その思いをYUIさんが具現化してくれたことがうれしかった。許されるならばフロアで沸いてるぼくらも「ありがとう」とういちゃんに、そして出演したゲストやRe:fiveのメンバーに頭を下げたいような気分だった。
出演ゲスト三組とういちゃん+ Re:fiveのコラボが終わった。タイムテーブルを見たときには期待よりも不安が大きかったコラボステージだが、その不安を越えた楽しさをういちゃんが提供してくれ、ういちゃんはもちろんゲストさんもこの場に来て、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれてありがとうと感謝の気持ちでいっぱいになっていた。誰もが得する素晴らしいステージだった。
ういちゃんがひとりでステージに残り、コラボの余韻で多幸感あふれるフロアに「でもまだ終わりじゃありません。まだまだ続きます」と言うと、事務所の先輩でRe:fiveのOGでもある吉川りおさんと一般人Kこと橘かえでさんが登場。これまでのRe:fiveの生誕祭といえば、吉川りおさんが進行してRe:fiveがそれについてくるという形だったのに、ういちゃんが進行して、なんと、吉川さんと橘さんもコラボで歌ってくれるという展開で進む。
一曲目はこれも新カバー曲。アイドル卒業した先輩二人に新しい曲を踊ってもらうという無茶ぶりも素晴らしいが、それにつきあい、「膝が痛い」と言いながらもやってくれる吉川さんも橘さんも素晴らしかった。
そして二曲目はMONECCO5時代からのおなじみのカバー曲で、イントロと同時に柊わかばさん、空豆かれんさんもステージに駆け付け、吉川りお+橘かえで+Re:fiveというたまらないコラボが誕生。MONECCO5時代からstudio5に通っている人にとっては、これだけでもチケット代の元が取れるほどの奇跡のコラボだったと思う。
そしてそのまま、生誕祭のクライマックスのソロステージに突入。
この時歌った曲は、以前Xでポストしていた、しかも前日にそのポストをういちゃんがわざわざリポストする用意周到な曲なので、ある意味予想通りだったが、それが安心感につながって、心行くまで楽しめた。
歌い終えセレモニーのあとは、満員のフロアに向かって「小さい子から年配の方、男性にも女性にも愛を与えられるアイドルになりたい。いままでたくさん愛をファンの方にもらったから、返していきたい」との言葉をういちゃんは語っていた。ロコドルだからそう感じられる場面も多いのだろうけど、本来愛は双方向のもの。そして与えた分だけ、返ってくるもの。それを言葉にしたところが、さすがういちゃんだった。
そのあとはRe:fiveとして「君とRESTART」、アンコールを挟んでのラストは「朝からカツカレー」。
「君とRESTART」をかっこよく決めて「やっぱりRe:fiveだよな」と感じていたら、「朝からカツカレー」は特に柊わかばさんが歌詞に「ういちゃん」を無理やり入れたりして、今日しかないプレミア感とハイテンションの沸き立つ気持ちをヲタクと同じ次元で演出してくれて「これもRe:fiveだよな」と思わせてくれる楽しさだった。
内容盛りだくさんの本当に楽しいライブだった。
そしてこの楽しいライブを実現するために、意外にも(失礼!)頑張り屋さんなういちゃんが、必死に考えてくれたんだと思うと、そのことに対し、YUIさんと同じように、ただただ感謝しかなかった。
それなのに、「しあわせだ」「楽しい」「みんなありがとう」とステージからういちゃんがファンに気持ちを伝えてくれるから、その幸せ度合いがさらに増した。誰も不幸にならない、ういちゃんの人への思いやりと努力家の一面を体感できる、本当に夢みたいな幸せな空間だった。まさにスーパーアイドル東雲ういの世界が惜しげもなく体感できた時間だった。
アイドルになるために生まれてきたような人だなとぼくはつくづく感じた。

常日頃、ぼくはういちゃんの魅力を「アイドル性の高さ」と考えているが、それがいわゆる昭和アイドルやAKB48まで続いたマスメディアが作り上げるアイドル像ではなく、それ以後の現代的なアイドル像なのだと思う。
「オトナと僕の。」の歌詞じゃないけど、メディアの作り上げるアイドルは「オトナの用意した答え」を演じるものだった。秋元康のような卓越したクリエイターが、ファンのニーズを読み取り、そのニーズに合ったものをアイドルに演じさせることでヒットを生んできた。
それが、たとえばBiSの「nerve」のダンスをメンバーが考えだしたあたりから、アイドルの意思が反映されるようになってきたと思う。地下ドルレベルではセルフプロデュースのアイドルも増えてきている。
そして、これはJ-POPの歴史から考えると当然の進化である。かつては作詞家の先生、作曲家の先生というプロが作った曲をプロの歌手が歌うという完全に「オトナの用意した答え」が良しとされていたのだが、現在は歌う人やバンドが自分で作詞作曲をする、一時期は「自作自演」と揶揄されていたシンガーソングライターが、現在のJ-POPシーンでは当たり前の時代になっている。もともと久留米の人気バンドだったチェッカーズは、80年代に上京したときにプロの作詞作曲家のアイドルみたいな曲を歌わさせられることに抵抗を覚えたが、ヒットを出せば自分たちの作った歌が歌えると耐え、90年代にはほぼ自分たちの曲ばかりを演るバンドになった。だが、いまのバンドはデビューから自分たちの作詞作曲の曲でデビューするのが普通である。そしてそのほうがリスナーも受け入れている。おっさんの汚い言い方をするならば「オトナの用意した答え」より、「未熟な若者のアイデア」のほうが魅力的なのだ。
考えてみれば当然の話である。
ビデオやCDがさらに進化して、いまやパソコン一台あれば、複製芸術がいつでも楽しめる時代。どんなに完成度が高くても、歴史上、以前に完成したものがあるものは、元祖のものを見れば十分で、そのものまねを新たに見る必要はない。
それよりも、これまで見たことのないもの、体験したことないものをファンが求めているのであり、それを生み出すのは知識で凝り固まっているオトナではなく、いつの時代も柔軟で怖いもの知らずな若者のアイデアなのである。まさに、時代を変えるのは常に青春で、老いた常識よりはるかに強いのだ。
そして、ういたんさい2024は、ういちゃんのお母さまが「東雲が練りに練ったアイデアが詰まっています」とおっしゃっていた通り、東雲ういという若いアイドルのアイデアがいかんなく発揮されたイベントだった。ういちゃんが、ひとりでも多くの人を楽しませようとした結果が、他のグループのファンでも楽しめるコラボになり、誰もが楽しめるイベントになったのだ。それを実現させるための努力は、特にういちゃんは大変だったと思う。でもそれをやり遂げた姿を見せてくれたことが、「オトナには思いつかない」、ういちゃんの「アイドル性の高さ」を再確認させてくれた。
このアイドル性の高さを武器に、16歳のういちゃんもきっとこれまで以上にぼくらを楽しませてくれるだろう。