#みくり24 藤崎みくりさんの魅力を再確認 | 君が好き

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男女平等の価値観がまだまだ浸透せず、磯野家さながらに男性は外で働く、女性は家庭を守るステレオタイプが生きていた昭和の時代、カルビーの「かっぱえびせん」のCMで、こんなキャッチコピーがあった。

「かしこい母さんのかっぱえびせん」

ご存じの通り、「かっぱえびせん」はカルビーを日本最大のスナック菓子メーカーに押し上げた大ヒット商品であり、先駆者である湖池屋からポテトチップスのシェアを奪った会社である。
そのカルビーの躍進に、このコピーがどれほど効果があったかはわからないが、このコピーを見るだけで当時の男性が抱く女性への偏見が見て取れる。
すなわち、「女は褒めておけばいいだろう」という偏見である。
これは平成になってからなのだが「すてきな奥さん」という雑誌は今も発売されている。
昭和の時代には、女性を特に視聴者層にしたサスペンスには「美人弁護士」や「知的なマダム」など女性を褒める言葉をタイトルにしたものがあふれていた。それはそういう言葉が女性に支持されていた証拠になるだろう。そして推測すると、それを仕掛けていたのは「女は褒めておけばいいだろう」という偏見を持った男性だったと思う。
なぜならば、昭和の男性社会の中で生きていた男性にとってこれらの価値観は信じられないから、新鮮に映るのだ。
たとえば、逆にこれを男性に置き換えてコピーにしてみると、売れないことは想像に難くない。
「かしこい父さんのかっぱえびせん」などと宣伝されれば、買いたくなるどころか、これをレジに持っていくことでかしこい父さんを気取っていると思われるのが恥ずかしくて、買えなくなるのが男性なのだ。
「すてきな夫さん」なんて本だって恥ずかしくて読めない。
そういう男性にとって、コピーを無批判に受け入れ、「わたしってかしこい母さんなの」と思いながらかっぱえびせんを買ったり、「すてきな奥さん」という本を、「わたしってすてきな奥さん」と思いながら読める女性が男性には不思議なのである。
このような男女の違いの典型的なのは誰かに物を贈るときだ。男性は「つまらないものですが」とへりくだって渡すのに対して、女性は「これとてもおいしいんですよ」と言って渡す。
内心では「かしこい父さん」になりたいと思っていながらも、表向きではへりくだって、「おれはそんなに立派なもんじゃないダメ親父」という顔をするのが昭和の男性であり、「わたしってかしこい母さんなの」とうきうきでかっぱえびせんに手を伸ばすのが昭和の女性なのである。
そしてそのような昭和の男性にとって、昭和の女性のポジティブすぎる自己肯定感は苦手なものだった。昭和の男性の価値観からすると、「かしこい」や「すてき」というのは自分から宣言するものではなく、他人様が決めるもので、その他人様にたいしては「ぼくはバカです」とか「すてきなんてとんでもない」とへりくだるのが美学なのだ。
だからこそ、藤崎みくりなのである。

てなわけで、昨日は藤崎みくりさんの24歳の生誕祭、#みくり24に行ってきました。
今月初めに延岡のくろいわ祭りで見て二週間ぶり。
なかなかこんなに短期間でみくりさんを見られる機会もないので、この日はライブを見られる楽しさに加え、冷静にみくりさんの魅力を感じることもできました。
そこでいちばんに感じたのが、「かしこい母さんのかっぱえびせん」とは真逆のそのスタイルなのかと思ったのです。
これはソロ初期からプロデュースしていたひぃかさんの影響も強いだろうし、女性にしてはさっぱりしているみなみぶちょーの影響もあり、正直、ご本人が望んでいたスタイルではないのかもしれないとは思います。むしろご本人は、並みのアイドルと同じく、なにをやってもヲタクたちから「かわいい」と褒められる姿を望んでいたのかもしれません。しかし、周りの影響もあってそのスタイルをやらなかったからこそ、並みのアイドルではない藤崎みくりさんが出来上がったのだと感じました。
みくりさんのステージと言えば、とにかく楽曲のパワフルさが売りです。話し声からは想像もつかないほどの野太い声量で攻める歌声は、コールするヲタクの気持ちを高ぶらせ、狭いステージを所狭しと飛び跳ねるダンスの力強さも圧倒的です。
ただ、そのパワフルな楽曲の合間に見せるエッセンスもすごく効いていると感じました。アイドルはプロの歌手でもダンサーでもありません。歌を聴かせるだけが仕事ではなく、踊りを見せる事だけが仕事ではありません。むしろぼくはアイドル本人がファンの間で人気者となることが大事で、歌やダンスもそのための手段だと考えています。
そして藤崎みくりさんがステージで見せるエッセンスとは、一言でいえば「自虐」。
MCに入った瞬間に「MCは苦手」と自虐したり、「もう少し痩せます」と言ってみたり、へりくだっているのです。途中の企画で天の声をしていたみなみぶちょーが「みくりは友達がいない」と言われてるシーンもありました。
それを見ているヲタクの反応もシニカルです。
みくりさんが「MCが苦手で」と言えば、「嘘だ。めちゃくちゃ得意じゃん」とわざとハードルを上げる声が飛んだりと、なにかツッコミを入れようと構えています。
でも、ヲタクたちにとってはそれが男らしい愛のカタチなんです。
アイドルは、褒められたいアイドルと大げさに褒めるヲタクという関係が普通です。もちろんその関係性を否定する気はありませんし、それはそれで素晴らしいのですが、自虐気味にへりくだっているアイドルにシニカルにツッコミを入れるというののほうが、男性にとっては自然なコミュニケーションなのです。好きな女の子に意地悪をしてしまうという、ある意味女性が不快になる、小学生時代から続く男性のさがなのです。そしてそれをみくりさんは受け止めてくれるから素晴らしいのです。
しかもそうやってシニカルにツッコミを入れていたヲタクも、みくりさんが歌を唄いだすとその迫力に叫ばないといられなくなります。あんだけへりくだっていたのに、圧倒的に力強く、激しいパフォーマンスを見せてくれるんです。
そのギャップも最高じゃないですか。

結果的にみくりさん自身が望んた形ではないかもしれませんが、男性が苦手な「かしこい母さんのかっぱえびせん」のような女性の自己肯定を消して男性のようにへりくだってくれる。しかも、女性が嫌いな、好きな子にちょっかいを出すような男心を受け止めてくれる。そんなところが、藤崎みくりさんの魅力かなと感じました。その関係性で、ステージとフロアの間にゆるい空気が流れるからこそ、ゆるキャラ系アイドルと言われているのもあるのでしょう。

そしてこれは24歳という大人になるとさらに磨きがかかってきたと感じました。正直、普通のことではありますが、アイドル「かわいい?」ヲタク「かわいいよ」の関係は年齢を重ねるとつらくなるものです。それに比較して、みくりさんの魅力は年を重ねるごとに増していく魅力だと思います。
まだまだずっと歌い続けて欲しいです。